大軍の予兆
拙作を覗いてくださりありがとうございます。
レノクッス軍の作戦会議です。
退屈かもしれませんが、戦場の状況のアップデートです。
ご意見、ご感想を待っています。よろしくおねがいします。
少し時間を遡る。
日が暮れた頃に、レノクッス軍の上層部がスレイの本陣に集合していた。そこで魔導師部隊の長イーライから敵軍に関する情報がもたらされた。魔導師部隊が使った探査魔法は、飼いならした鳥や小動物を敵本隊付近に送り、見て戻ってきた記憶を読み込むという高度な魔法だった。
「偵察の魔導師からの報告で、およそ3日行程(歩兵が進軍して3日かかる距離)の先に敵の軍隊を見つけました。」
テントの中はざわついた。スレイは手を上げて武将を黙らせた。そのまま続きを促した。
「軍の編成は?」
「獣の目を使った魔法なので形容するのは難しいのですが、長い木材や太い木材が大量に運ばれているようです。そこから推測するに、攻城兵器を組み立てる材料が運ばれている模様です。」
「兵数は?」
「これも獣の目を通したもので、………。」
イーライは言いにくそうにして口籠った。
「結論が欲しい。イーライ、信頼しているから正直に述べよ。」
一呼吸おいてイーライは返答した。
「約2万はいるかと思われます。」
一気に場がざわついた。
「川向うの敵軍と合わせれば我が軍の十倍ではないか?」
「我らだけでは負けは必至だぞ!」
「援軍は間に合うのか?」
「いや、間に合ったところで勝てる見込みもないぞ!」
「せめて首都からの援軍が間に合えば!」
皆が否定的なことしか話せなかった。
スレイは目をつむって黙って聞いていた。武将と言えども人の子である。彼は部下の不満や不安を吐き出させていた。
ある程度言いたいことを吐かせてからスレイは目を開けた。
「皆、聞いて欲しい。」
スレイはなるべく穏やかに話しだした。すると全ての武将が彼に注目した。
「これまでの事はほとんど予定どおりだ。残念ながら、よろしくない方向へ向かっているがな。しかし、先んじて本隊の撤退準備、拠点の籠城準備、装備の徹底など素早くできた。これは相手の裏をかく優れた実行力である。まずはその努力について、皆に礼を述べたい。よくやってくれた、感謝する。」
スレイは静かに黙礼した。
「しかし我らは勝たねばならぬ。勝たねば、我らが積み上げてきた財は崩れ、家族は引き裂かれ、肉体は傷つき心は打ち砕かれる。苦しいが勝利は絶対課題である。」
シンとしたテントの中をスレイは言葉を継いだ。
「何を以て勝利とするか?この度の戦は敵勢力の排除、並びに拠点ジョヨーの守護である。本隊が撤退する準備は?」
「明日まで時間を頂ければ完了します!」
担当の武官が立ち上がって報告する。
「兵糧と水は?」
「はっ。拠点に戻れば一年は保つ計算です。」
別の武官が報告する。
「籠城の準備は?リード?」
「ジョヨーのコモン副将軍からは、あと1~2日欲しいとのことでした。」
スレイの秘書武官が報告した。
「1日で終わらせるように急がせよう。仮に敵軍が渡河してきた場合は、殿の軍を立てて時間を稼がねばな。ムステフ、行けるか?」
スレイはムステフに顔を向けた。一瞬顔を強張らせたが、ムステフが勢いよく答えた。
「はっ!ご命令のままに!」
「安心せよ、我も殿に加わる。」
それを聞くと諸将から反対意見が出た。
「何を仰る!大将が殿など、聞いたことがありません。」
「将軍、ご再考を!」
「将軍が討たれれば軍は瓦解します!」
轟々と批判が殺到した。スレイは涼しい顔で反論を受け止めて、笑顔さえ浮かべる余裕であった。
「心配無用!逆に我が立てば敵軍の思惑を乱すことができる。フフフ………。分の悪い勝負に勝つためには、己の命も的にせねばならぬものよ。諸君!戦は頭の数では決まらん!それを証明してみせようぞ!」
スレイは笑みを浮かべて長テーブルをドンと叩いた。周囲からは既に反対意見はなくなっていた。各々が死力を尽くさねば勝てないことが分かったからだ。無駄な反対意見は誰も出さなかった。
「殿の部隊編成を詳しく話しあおう。意見を出せ。」
テントの中の諸将は気持ちを切り替え、殿部隊の編成について多くの意見が出た。
こうして軍議は長く続いたのであった。
スレイの本陣での軍議は殿に関して長く続いたが、意見がまとまり散会となった。各々役割を当てられ、士気もよく上がった。
一人ムステフだけが不満タラタラであった。
「おのれ!殿に選ばれるとは!これでは大損ではないか?!」
彼は自分のテントに戻ると、悔し紛れに兜を地面に叩きつけた。
「仕方ありません。我らはスレイ将軍直属。将軍が行くとなったら、着いていくしかありません。」
彼の副官マローズは怒りを鎮めるように冷静に意見した。
「分かっとるわ!将軍直属なら生き延びられると思っていたのに!ああっ腹立つ!」
ムステフは寝具の上に寝転んだ。
「ふん!何とかして生き延びてやるぞ!生き延びてやるぞ!生き延びてやるぞ!ワシの奴隷女を呼んでこい。女を抱かなきゃ、気が収まらん!」
「スレイ将軍は女人を断つようにと軍令に定めておりますが………。」
「そんなもの、女の口に布でも噛ませればバレることなどない。早くしろ!」
そう命令する声からは、何としても生き残ろうという生命力が感じられた。
マローズは黙って頭を下げてテントから離れ、ムステフの所有する女奴隷を呼びに行った。
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戦場に緊迫感が出てきました。
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