装備の装着
拙作を覗いてくださりありがとうございます。
やっと主人公の身を守る防具が配られます。それと鬼教官からの手荒い指導が待っています。
登場人物達の装備を想像しながら読んでください。
ムステフ隊の駐屯地で武器防具の配布が行われた。
先日の『宝探し』のお陰で戦場に残された死人の装備を回収でき、加えて敵方のものも多く獲得した。敵方の装備は青色から赤色に塗り替えられていた。生き残ったムステフ隊には、しっかりとした装備が廻ってくるはずだった。
兵士はより良い武器防具を求め、奴隷兵は早いもの勝ちで装備を受け取り身を固めた。
兵士と奴隷兵は装備の質で区分されていた。兵士は革鎧に板金を重ねたもの。あるいは純金属製のものが中心だった。盾は円形で統一されていた。
対して奴隷兵の装備は基本、革製が主流だった。革の鎧、革の兜。籠手や脚甲も見られた。奴隷の片手盾は円形だったり方形だったりとまちまちだった。
長かった列は少しずつ前に進み、ガルバが自分の番になった。先に武器が配られた。
渡されたものは槍だった。少し重たく自分の背丈より少し長かった。
そのまま前に進むと、防具が渡された。
大きくて金属で補強された方形の木の盾と、革の兜、幾つかの革片だけであった。
「鎧はないんですか?」
係に声をかけると、
「もう先の人に取られてないよ。それでやり繰りするんだな。」
「そんな………。」
すげなく言い渡されたガルバは絶句した。
「おい、さっさと前に進めよ!」
後ろでつかえた男達に文句を言われてしまい、スゴスゴと配布場所から出ていった。
配給場所から少し離れたところで、ガルバは腰を下ろした。
配られた装備を確認した。兜は運良く頭の大きさに合っていて、簡単に頭にスッポリと被ることができた。兜には首筋を守るヒダがあり、鼻筋を守る突起もあった。
与えられた盾は丈夫な木製で、前にかざせば上半身を覆うくらいの大きさの長方形の盾だった。表面は金属で補強されており、ちょっと位の打撃は耐えられそうだった。
渡された残りの革片は、脛と足をを守る脚甲と右手のみの手甲だった。装備の付け方は知らなかったが、周りの男達の様子と構造を見ながら何とかはめることができた。
改めて立ち上がって己を見てみる。
鎧がないので上体への不安は尽きないが、籠手のない左手で盾を持てば身体と左手は守れる。最低限の装備が手に入った。一人の兵隊として頑張れそうだった。
装備を身に着けたガルバは、ムステフ隊の陣地でジゾー達を探した。
「おーい!ジゾー!」
すぐにジゾー達は見つかった。彼らはムステフ隊の陣地にある焚き火のすぐそばにいた。
「おぉっ!ガルバか。………、鎧はナシか。並ぶのが遅かったんだな。仕方ない。」
ジゾーはガルバの装備に目を配った。
「まぁ上出来だろ。戦場に出られるギリギリの装備だな。おい、そこの紐の締め方が雑だぞ。見てやるから、こっちに来い。」
ガルバは言われるがままにジゾーの元へ行き、装備の締め方を教えてもらった。
「ありがとう、ジゾー。いつも恩にきるよ。」
心からジゾーに礼を述べると、彼は笑った。
「戦場で簡単に死なれても困るからな。ホラ、そこを強く縛れ。」
ジゾーに指摘された不具合を直し、ガルバの装備はしっかりまとまった。
「これなら簡単には死なないな!」
ジゾーはガルバの装備を見て満足気に頷いた。
「まあ、手に入るもので凌ぐのが奴隷兵の生き方だからな。皆で何とかして生き延びようぜ。」
そう言ってジゾーは仲間達に目をやった。
ジゾーは革兜と革鎧をつけ、片手槍、片手盾を装備していた。
ドルトンもジゾーとほぼ同じ装備をしていたが、攻撃を躱しやすくするために、盾は前腕を覆う程度の小さめを選んでいた。
チェーザは身体が大きくて合う鎧がなく、代わりに両肩に肩当てがあった。彼は腕力が強く両手で扱う槍を片手で使うことができ、脚甲と鉄兜と片手盾を持っていた。
ノバスコは革兜、片手槍、片手盾は手に入ったが、背が高くて身体に合う鎧がなかった。代わりに、長い足を持つ下半身を守るため、スカート状の防具や直接太腿に巻きつける革防具、脚甲を身に着けていた。
この戦場に立つ者は、皆それぞれ得られた状況で生き残ることを一生懸命考えていたのだ。ガルバはそれを見て気合いが入った。
(生き残るんだ!負けてたまるか!)
ガルバはやる気と意気が高まったところで、ふと赤毛のビーラーがいないことに気づいた。
「ジゾー、ビーラーは何処にいるんだ?」
ジゾーは問われると顎をしゃくって居場所を示した。
「ビーラーはアッチだ。クソ真面目に手が槍に馴染むまで自主練だとよ。」
指された方向を見ると、数人の人垣ができている広場があった。ガルバは、何となくその方向へと歩いていった。
人垣の真ん中にはビーラーがいた。彼は一心不乱に槍を振り回していた。彼の装備は革鎧と脚甲、片手槍と片手盾を持っており、兜はなかった。
突き、払い、叩きつけ、あらゆる技を駆使していた。また、盾も武器として使っており、攻守織り交ぜて槍と盾を振り回していた。
(凄い!かっこいい!)
ガルバは驚いていた。片手用の槍や盾でもそこそこ重いはずなのに、小柄なビーラーは身体全体を使って槍と盾を駆使して空間を切り裂き、見えない空白を突き刺していた。
ガルバは暫く、ビーラーの演舞に見惚れていた。
ビュッ!
最後の一突きを繰り出してビーラーは止まった。パラパラと拍手が起きる。誰もが関心して彼に注目を集めていた。
ビーラーは構えを解くと、突然ガルバの方に目を向けてズカズカと近づいた。
「お前、ちょっと来い。」
「えっ!?」
「いいから、来い。」
ガルバはビーラーに手を取られ、ビーラーが舞っていた広場に連れて行かれた。槍と盾を手離すように言われて、ビーラーから円い小さな盾を渡された。
「躱せ。」
「はっ?」
シュッ!
どうこう言う前に、ビーラーはガルバの腹に槍を突き出した。
ガキンッ!
ガルバは咄嗟に盾をぶつけて躱した。
「良い反射だ。次はどうする?」
ビーラーはガルバの目線に槍の穂先を見せながら、石突でガルバの左脛を狙った。
「あ痛っ!」
不意打ちで脛に軽い打撃が入ったので、ガルバは思わずしゃがみ込んだ。
「そこは痛いだろ?打たれたくなければ、目と感覚を使って攻撃を躱せ!…ほら、次はどうする?」
ビーラーは上方から槍を突いてきた。ガルバは全身をひねって攻撃を避けて逃げ切り距離を取った。
「反射も悪くない、目も悪くない。でもいいか?戦闘の基本は相手の目を見ろ。己の弱点を守り、姿勢を低く保て。同時に相手の弱点を見つけて攻撃しろ!ホラ、行くぞ!」
ビーラーは無造作に槍を突き出した。
ビュッ!
ガルバは言われた通りに腰を低くしながら槍の攻撃を躱した。再度ビーラーが槍を突いてガルバが躱す。そうして暫くはビーラーの攻撃とガルバの回避が連続で続き、まるで本当の戦闘のように繰り返された。
そのうちガルバは身体中から汗が止まらず、息も絶え絶えになった。不意に足を滑らせてしまい腹を仰向けにして倒れ込んだ。倒れた時に、「殺される!」と思い、無意識に頭と腹を庇った。
身体を丸めて身構えていると、兜をコンコンと軽く叩く音がした。見上げるとビーラーの顔が見えた。
「大凡、筋は悪くないな。今日はこれで終いだ。次はもっと実戦的な稽古をするか。ホラ、立てよ。」
ビーラーは息を荒らさず平然としていた。ガルバは手を借りながら、自分は訓練をされていたことを初めて認識した。
(もうちょっと丁寧に教えてくれてもいいのに!死ぬかと思ったぜ。)
ガルバは殺意と恨みを込めた目線を送るが、ビーラーは素知らぬ風でジゾー達のところまで戻ったのだった
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