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堕天転生戦記  作者: 里原 健
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早朝の軍議

 拙作を選んでくださりありがとうございます。

 今回は主人公のいる戦場の状況を書きました。

 ご意見やご感想をお待ちしております。

 ガルバ達が宝探しをした日の翌早朝、スレイ将軍のいる本陣のテント内では指揮官以上の兵士が集まり軍議を開いていた。

 スレイ将軍が一番奥で椅子に座り、その前方に長テーブルが入口に向けて縦に設置されている。テーブルを挟んで二十人程の兵士が並んで座っていた。どの兵士も固い表情をしていた。

 各担当事務武官から報告が届いていた。戦闘可能な部隊と総兵数、兵糧と水の備蓄、斥候隊からのゲレノア軍の状況などだった。

「先日出した救援の返事は?リード?」

 スレイは優雅に口髭を弄りながら、彼の秘書武官であるリードに問うた。

「はっ!鳥を使った通信により、今朝までに近隣の2都市、ダイトーとナンヨーから救援応諾の返事が来ております。各都市から1000人の兵が送られます!」

 リードは立ち上がって報告した。

「いつ来る?」

「それが………、返信の内容からして、両都市共に今日から6日はかかるとありました。」

 スレイは、ふむ、と一つ頷いた。続けて更に問うた。

「首都からの返信は?」

「首都キョトーからは救援を送るとありました。しかし増援の規模と内容は伝えられていませんでした。推測を許して頂けるなら、歩兵中心の軍容だとすると、準備期間を入れて、おそらくはあと14日はかかるかと思われます。」

「ふむ。すると最低でも5〜7日間は我らで敵軍を抑える必要があるということか………。あい分かった。座れ。」

「はっ!」

 これで、ある程度報告が出揃った。

 戦況はレノクッス側にやや不利であった。

 嵐の夜襲のお陰で3倍あった兵力差から2倍程度に縮まり、敵軍は未だ川向うで進軍を止めていた。しかし相手はレノクッス国より強国のゲレノア国軍。兵力差を鑑みても、まともに平野で迎え撃つにはこちらの分が悪かった。

 幸い兵糧と水は拠点のジョヨーに豊富だったので、長期の戦線は維持できた。援軍もある程度の期待ができそうだ。

 スレイは指揮官達に今後の方針への意見を求めた。すると指揮官達の一人であるムステフが手を挙げて具申した。

「将軍、敵は我らを恐れて川を渡ってきておりません!このまま我らがここに陣を張っておれば、自ずと兵糧が尽きて撤退するでしょう!」

 彼は膠着状態の維持を主張した。夜襲の成果が非常に良かったことからか、半分くらいの指揮官達も賛同するように頷いていた。

「ふむ、それも良いな………。イーライ、貴様はどう思う?」

 スレイは入口近くに座ったローブを纏った黒人の男を指名した。

 イーライと呼ばれた彼は、眉間に皺を寄せながら返答した。

「敵の部隊編成に疑問があります。かの夜襲の前に我らはゲレノア軍とパルコ川で交戦しましたが、その時には攻城兵器や『魔導兵部隊』は少ししか見られませんでした。ほぼ歩兵と弓兵、騎馬兵で構成されておりました。もし敵軍が本気で我らがジョヨーを落とすのならば、この編成はおかしいかと。」

「ふむ、考えを述べよ。」

 スレイはイーライを促した。

「川向うの部隊は先遣隊であり、後方には攻城戦用の大軍が迫っているのではないでしょうか?目前の敵軍は足の遅い攻城部隊の露払いと警護、そして我らを牽制するために渡河を控えていると思われます。」

 イーライの意見が出ると、集まった指揮官達は静かになった。確かに的を得た意見である。

 かと言って、今すぐ籠城のために拠点へ戻れば簡単にゲレノア軍に兵を進められて、最悪、包囲を許してしまう。そしてイーライの言葉通りならば、後続の大部隊に安々と城を攻められてしまう。

 川向うの敵軍を早々に倒せば後続の軍も引き返すかもしれないが、敵軍は自軍より2倍多い兵力である。前の戦闘と逆で、敵に川を自然の堀として利用されたら苦戦は避けられない。

「まぁ、落ち着け。敵はまだ来ておらん。」

 指揮官達の不安を見かねたスレイは静かに声を発した。彼は少し考えてから今後の指示を下した。

「敵軍が渡河するまでは、ここの本隊を維持する。敵の様子から1〜2日は渡河をしないだろう。ならば、その短い間に立てられる全ての対策を実行する。まず、籠城戦は起こりうるようだ。ジョヨーにいるコモン副将軍に籠城戦の準備を急ぐよう指示の手紙を我から送る。各部隊の指揮官は、傷を負って戦えない兵をジョヨーに急ぎ帰すことにする!また、この本隊陣地も素早く離脱できるように、余計な荷はジョヨーに送ること!」

 一息ついてスレイは指示を続けた。

「敵軍が渡河してきた場合、基本、無理せず撤退を行う。しかし、渡河中に隙あらば痛めつけられるように、臨戦態勢を維持!兵は睡眠時以外の武器と防具着用を義務付ける。敵の夜襲を防ぐ為に、見張りは倍に増やすこと。警邏隊には敵の斥候を見つけたら、生きて帰すなと重ねて指示しろ。ここ数日の準備と用心が、今後の戦況に大きく影響するだろう。各々、気を入れて動くこと!他に議題は?」

 兵士達からは無言の返答が出た。ここでイーライから疑問が出た。

「敵軍の後方部隊に対しては?」

「後方部隊は来るものとして警戒しよう。イーライ、『魔導兵部隊』と『僧兵部隊』による敵の後方偵察は可能か?」

「数少ないですが、できる者を探して報告します。」

「よし、人員が揃ったらすぐに行動するように!次の軍議は今夕方、陽の落ちる時に行う。各人、行動開始!」

「「「ははっ!」」」

 スレイの指示が下り、兵達は素早く動き出した。

 本陣からは人がいなくなり、秘書武官リードと飼い犬のヴィンデルだけが残った。ヴィンデルはスレイの足元に大きい躯体をうずめていた。

 スレイはリードに拠点ジョヨーと首都キョトーへの手紙の準備をさせてからポツリと呟いた。

「我らは勝てるかな?ヴィンデル?」

「ワンっ!ワンっ!ワンっ!」

 ヴィンデルは顔を上げて小さく鋭く鳴いた。

「そうだな。我らには『名将ケイシン』の加護があったな、フフフ………。」

 まるで会話しているようなやり取りであった。可愛い愛犬の頭を撫でながら、スレイはふと、怯え切っていた六本指の奴隷を思い出しては低く笑っていた。

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