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堕天転生戦記  作者: 里原 健
17/80

オレの名は2

 この作品を選んでいただきありがとうございます。

 どうやら主人公は自分の名前に馴染めなくて困っているようです。

 ご意見やご感想がありましたら是非とも教えてください。

 宜しくお願いします。

 男、もといガルバはテントで手の治療をしてもらった。顔を洗った後に記憶がない事を告げると、かの治療係の女はガルバの頭を両手で掴んではあちこち触りだした。

「痛ッ!」

 触られて頭の右側に鋭く痛むところがあった。

「こんくらいで痛がるんじゃないよ!………、小っちゃいタンコブが一つあるけど、大したことないね。たまにアンタみたいに記憶が飛ぶ男達はいるけど、頭にもっと酷い傷を負っているからね。それよりも、………。」

 と、話を止めて手をガルバの首に当てた。

「こりゃ酷い痣だ。強く締められたみたいだよ。よく縊り殺されなかったねぇ。」

 ガルバには見えないが大きな線状の青黒い痣の跡があった。丁度男の両手できつく締め付けられたような痕で、指の形すらハッキリと残っていた。傍らで見ていたジゾーもしげしげと眺めながら無言で頷いていた。

「ここじゃ分かるのは、これくらいだよ。頭がおかしくなったのは、アレじゃないかい?戦場にでっかい雷が落ちたんだろ?もし、その近くにいたんなら、それが原因なんじゃないかね?何人も死んじまうくらい凄かったんだから、きっとそれだねェ。」

 と、治療係の女は結論づけた。

 ジゾーも、「きっとそうだ、そうだ。」と追従した。

「そうだよな、きっと………。」

 ガルバは納得したように何度も頷いた。本心は納得などしていないが、嘘の記憶喪失の根拠があればそれで好都合だった。

「じゃ、アタシは他に行くけど、時間が経つと元に戻ることもあるらしいから深く考えないことだね。暫くは大人しくしていた方が無難さね。」

「ありがとうございます、治療してくれて。」

 ガルバは深く礼を述べると、女は少し笑顔になってからガルバの右手をチラリと見て、別の怪我人の方へと向かった。

「よし、次は部隊に戻ろうぜ。ついて来い。」

 ジゾーはそう言ってテントの出口へ足を向けた。ガルバは慌てて立ち上がると後を追って行った。


「ガルバ、ガルバ、ガルバ。オレの名はガルバ………。」

 二人は治療用の白いテントを出たが、ガルバはジゾーの後ろを歩きながら自分の名を何度も呟いていた。ちっとも親しみが湧かなかったし、前世でも聞いたことがない名前だった。

 身体にも違和感があった。耳たぶが欠けているのはともかく、右手の六本目の指は奇妙な感触があった。何度も右手を握って開いたり、左手で触ってみた。動きには問題ないし触覚神経は正常に反応していたが、自分の知らない生き物がくっついた様で違和感が大きかった。

 ジゾーの後ろを歩く背丈は周りの男達より頭半分から一つくらい高く、前世より視界が広かった。しかし肉付きは貧相に薄かった。歩く感触は軽いが所々痛みがあった。痛む箇所を見れば、治りかけの切り傷や打ち傷があった。それにだいぶ昔に負ったと見える傷跡も身体のあちこちに残っていた。

(どうしてこんなに傷が多いのか?)

 そんなことを考えながら本隊の中を歩いていると、ジゾーが振り返ってガルバに話しかけた。

「いいか?これから兵士様と話すが、お前は黙っていろよ。色んなことを忘れているみたいだから、俺のやる通りを真似て後ろに居ればいい。」

 ジゾーは平均的な体格だったが、少し猫背で動きは素早かった。茶色の髪は肩口くらいまであり、表情や喋り方も如才なく機転が利く男のようだった。

「分かった。ありがとう、ジゾー。頼りになるよ。」

「ハハッ、同じ奴隷部隊の縁だ。これも、まとめ役の仕事だしな。」

(奴隷部隊?まとめ役?)

 ガルバにとって初めて聞く言葉だったが、ジゾーは両手の指を組んで腰を低くし、鎧を纏った兵士の一人に近づいた。ガルバも痩せた背を丸めてジゾーの作法に合わせた。

「もし兵士様、あっしらはモリデブ隊の奴隷兵でございます。部隊に戻りたいのですが、どちらへ向かえば宜しいでしょうか?」

 話しかけられた兵士は兜の奥から胡乱げな目をジゾーとガルバに向けたが、少し間を置いてから答えた。

「モリデブ隊とは先行した歩兵部隊の一つのことか?………、生憎、その隊が戻ったとは聞いておらんな。敵方の魔法で大きな落雷があっただろう?あの魔法のせいで前線の話が混乱しておる。暫く溜まり場で待っておれ!そのうち沙汰が下るだろうよ。」

「へへっ!畏まりました。」

 ジゾーは組んだ両手を上に掲げて頭を下げた。ガルバもそれを真似て頭を深く下げると、歩き出したジゾーの後ろを追ってその場を離れた。

 その後も、数人の兵士から情報を集めたが、誰もがモリデブ隊が戻ったという話は知らなかった。

「やれやれ、コイツは少し面倒なことになったな。溜まり場で休みながら命令を待つか?」

「溜まり場って、さっきいたところか?」

「あぁ、そうだよ。奴隷の溜まり場。命令のない奴隷達や傷を負った奴隷達が集まる場所だ。しかし腹が減ったなぁ。」

 腹を撫でながらジゾーがボヤいた。

「………食べ物は何処かで手に入るのかな?」

「食べ物?上品な言い回しをするなよな?メシは部隊毎で配られる。ところが俺らの部隊は戻っていない。部隊がなければメシもない。それに他の部隊には分けねぇのが決まりだ。」

「それは困ったなぁ………。」

「まっ、物事には抜け道ってのが幾らでもあるんだけどな!メシが食えねぇなら、溜まり場へ行こうや。」

 ガルバとジゾーは溜まり場と言われる場へ戻った。先程と変わらず、赤い服を着た男達が屯していた。

 ジゾーはもう少し情報を集めると言って人混みの中に入って行った。ガルバは手頃な石を見つけてそこに腰を降ろした。ジゾーの言う通り嵐の中を歩いてきたので疲労が溜まっていた。

「ふぅ~〜〜………。」

 ガルバは一つため息をつくと、少しの間無言で周囲を見た。彼は己に起きたことを纏めようと『記憶』を辿った。

 ーーーーーー

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