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新たな人生 リディア・クライン

あれは4才の誕生日を迎えた日の早朝だった。


“自分”という存在が誰なのか、まるで霞がかった朧げな意識がサァッと晴れていくかのように明確になっていく。

自分はリドル・ロズワルト。栄えあるリントブルム帝国の生まれにして、史上最高の大賢者と謳われた男………、のはずだった。

かつての己は程よくしなやかで生命力溢れる張りのある四肢、すべてを燃やし尽くすかのような烈火のごとき赤髪、そして無尽蔵に近い魔力保有者を示す虹色の瞳をしていた。


そして鏡に映った今現在の己の姿を見てみる。白磁のような儚げで白い肌、持ち上げると絹のようにさらさらと零れ落ちる艶のある少し紫がかった銀髪、そしてまるで宝石のサファイアを思い起こされるような美しく煌めく瞳。


完全なる乙女。昔の面影のかけらも残っていない、儚い少女のようだった。


「どうして………。」


リディア・クライン。それが今自分を指し示す名であった。

両親は一般家庭の生まれであり、人口20人にも満たない小さな村で暮らす極々普通の、なんの変哲もないそこらに転がっている平民の少女。

それが前世に基づく客観的な自分の立ち位置だった。


眩暈がした。


嘘だと叫びたかったが、朧げながらもこれまでの幼い記憶がこれを現実だと訴えてくる。


「リディー?朝よー、おりてらっしゃーい!」


「あ、はーい!」


無意識に返事をしてしまったが、この声はたしか今生の母親のものだったはずだ。


一階へ降りると焼き立てのパンがほかほかと良い香りを運んできてくれた。

半熟卵がのせられたパンと瑞々しい野菜が盛り付けられたボウルを持ちながら、母はわしに挨拶をする。


「おはよう、リディ。それとお誕生日おめでとう。今日の夕飯は豪華なものになるから、期待しててね!」


母の名前はレティシア・クレイン。こんな片田舎に住んでいるとは思えないほど美しい女性である。


「俺もはりきって今日の獲物を獲ってくるから、楽しみにしとくんだぞ?」


こちらは父、リグリス・クレイン。こっちもこっちでこんな片田舎に住んでいるとは思えないほどの美丈夫である。


ただの村人の顔面偏差値高くないか???と思い他の村人を思い浮かべるが、どれもフツメンだったところを鑑みるに、この二人が異常なだけだろう。


「うむ、楽しみにしておこう。」


そしてこのわしの尊大な物言いを微笑ましく見つめる両親。

この口調はもともとリディアもこのような口調で、理由としては狩りや仕事に両親が出かけている間、村長宅に預けられた結果村長の口調かっこいい!と小さいながらにまねし始めたのがきっかけなんだとか。

おそらくはまだ眠っているわしの記憶に無意識に引っ張られ、そのように考えたと思われるのだが………。

まぁ、使い慣れた言葉遣いが出来るのならなんでもいいだろう。

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