第九六話 ローション魔法
「修行をすると言っても、何をするんだ?」
ガムチチが尋ねる。
「あなたには、ローション魔法を、習って、もらう」
ゴロスリが言った。ローション魔法とは何だろうか?
「ローション……、人間の持つ、脂肪分を、液体に、変える……。とても、ぬるぬるで、ウナギのように、掴めなく、なる」
「ウナギのようにか。想像がつかないな。それで何の役に立つんだよ」
「うん、まずは、実際に、見てね。ベータス、君が、やる……」
師匠に言われてベータスは前に出た。
「やるのはいいけど、この衣装じゃ難しいぜ。それに外でやった方がいいぞ」
「わかった……。じゃあ、着替えさせる……」
ゴロスリがベータスの身体を包むと、着ていたバニーボーイの衣装は脱がされた。そして赤いパンツ一枚になる。身体はそこそこ鍛えられているが、女性のようなしなやかさを持っていた。
「ほう、裸で見るとなかなかうまそうな身体をしているな。どうだ、今夜俺とベッドでギシアンしないか?」
「人の家で、それは、だめ……。やるなら、他国で、やって……」
ゴロスリは自宅で性交をするのは勘弁だが、他所でやる分には構わないようだ。
さてガムチチたちは家を出た。周りは霧の海である。外はそれなりに広いが、試合をするには狭い気がした。
「ドスケベデス……。お願い」
「承知いたしました」
半透明の身体を持つ大魔王ドスケベデスが首を垂れる。すると小島の周囲に霧が集まった。そして水晶のような床が生まれる。
ガムチチは床を踏んでみるがびくともしない。それに透明な壁もできている。これなら床から落ちてしまう危険はない。
「じゃあ、ベータスと、ガムチチさん、お願い、ね。一度、経験すると、ローションの良さが、わかる……」
ガムチチはベータスを向き合う。その身体はトナコツ王国のナサガキでたっぷり楽しんだ。あの時のベータスは男の姿をした純白の少女であった。
しかし、目の前に立つ彼は密林に住む夜行性の肉食獣だ。油断をすれば喉元を噛みちぎられる気がした。
「へへっ、行くぜ!!」
ベータスは気合を入れると、両手で体をぺちぺちと叩き始めた。すると身体中にどろっとした液体があふれ出てくる。どうやらローションを出しているようだ。
ベータスは走ってくる。それも足の裏を床に付けて、滑るように走っていた。
ガムチチはベータスをつかみ取ろうとした。しかし身体がぬるっとしており、掴めない。
さらにベータスはガムチチの身体に絡みついた。しかも身体を蛇のように柔らかくして、ガムチチの身体にまとわりついた。
腕や足だけではなく、乳首や股間もこすり合わせる。身体が熱くなってきた。
「どうだい、俺のローションは? ぬるぬるして気持ちいいだろう!?」
明らかに人間の動きには見えない。恐らくローション魔法の他に別の魔法も併用しているのだろう。
ベータスはガムチチの背後に回り込んだ。そして両腕を回し力を入れる。ガムチチは剥がそうとしたがぬるぬるして掴めない。
腕の力は強くなる。するとガムチチの身体がいきなり宙に浮かんだ。ベータスの力とローションによってすぽんと抜け出たのである。
ガムチチの身体が軽くなった。天高く飛ばされた彼は、ゆったりと風景を見ていた。霧の海の他に地平線も見える。ああ、世界はこんなに広いのか。森の中で暮らしていた頃では考えもしなかった。
空自体はゲディスと共に黄金魂に目覚めた時、共に空を飛んだことがある。だが大魔獣を倒すことに夢中だったので、風景を楽しむ余裕はなかった。
それは数秒も満たなかった。すぐにふわっとした感覚になる。ガムチチの身体が重力に囚われたのだ。
地上にはベータスが待機している。両腕を組んでおり、身動きしない。なぜだろう。
ガムチチが地面に叩き付けられると思った瞬間、ベータスはガムチチの身体を輪っかのように回し始めたのである。
あまりの回転にガムチチは吐きそうになった。そしてガムチチを放り出すと、ガムチチはうつぶせにされた。地面にこすられても熱くはない。ローションのおかげでつるつるだ。
ガムチチの背中にベータスが乗った。勢いのついたガムチチの身体を乗りこなしている。そして透明の壁に叩き付けられた。ガムチチの顔に衝撃が走る。
そしてガムチチはぐったりとなった。
☆
「なかなかいい技だな。ぜひ教えてくれ」
気を失って数分後、ガムチチは目を覚ました。すぐにゴロスリに魔法の教えを乞う。
実際に経験したが、ローション魔法は防御が優れている。もちろん火などの魔法は苦手だろうが、武器を持つ相手には利用できそうだ。
ガムチチは力任せの技が多い。太くて黒光りする棍棒を振り回すだけだ。
刃物でも捌き方を習えば、怖くなくなる。相手の体勢を崩すのにも使えると思った。
「まかせて……。ではベータス。ガムチチさんを、お風呂に、連れて行って……。次にガムチチさんに、あなたの身体を、洗わせるように」
体を洗わせる。ゴロスリは何を言っているのだろうか。
ベータスが説明する。
「あんたが自分の身体で俺を洗うんだよ。手は一切使わないで、胸で俺の身体をこすってもらう。ああ、下は脱がなくていいからな」
よくわからない説明を聞いてベータスは風呂場に案内された。かなり広く、陶器のタイルで組み合わせたものだ。アマゾオはもちろんの事ゴマウン帝国でも見たことがない。
「キャコタ王国製の風呂だよ。まずはこいつを塗ってくれ」
ベータスは小さな壺からぬるっとしたものを取り出した。半透明で無臭である。
「こいつを身体中に塗ったくるんだ。そいつは俺の身体から取れたローションだ。ローションがどういうものか肌で感じさせるんだよ」
そう言ってベータスはガムチチの身体にくまなくローションを塗る。風呂場にはマットが敷かれてあった。ベータスはあおむけで寝る。ガムチチは膝を屈し、ベータスにかぶさるように手をついた。
ベータスの顔が近い。こうしてみると愛しいゲディスの顔そっくりだ。なんとなく照れる。
「じゃあ、俺の身体を胸で洗うんだ」
「わかった」
ガムチチの分厚い胸がベータスの薄い胸に触れる。ガムチチの体格はベータスより大きい。下手をすればベータスを潰しかねない。ガムチチは彼を傷つけないように胸で丁寧にこする。ぬるぬるした感触であった。
「ほら上下だけでなく、左右にも動かすんだよ」
「ん、こうか?」
ガムチチは胸を左右に動かす。乳首と乳首がこすれ合った。乳首が固くなる。
心なしかベータスの頬が紅くなっていた。
その後姿をギメチカが眺めていた。
「ふむ、ガムチチ様のお尻がリズミカルに動いておりますね。なんとも素晴らしい絵ですな」
「……あなた、本当は、女で、しょう? 性転換魔法で、男に、なっている、みたいな?」
「はい、そうです。私もローション魔法を会得したいのですが、よろしいでしょうか?」
「あなたは、合わないから、やめといた方が、いい……。あなたは、完成、されてる。下手に、いじらない方が、いい……」
「なるほど、残念です」
ゴロスリの言葉にギメチカが残念そうに答えた。もっとも本気で残念がっていない。新しい魔法が覚えられたら、幸運だと思っているくらいだ。それに魔法を沢山覚えていればなんでもできるわけではない。それくらいは知っている。
「代わりに、いいものを、あげる。私が、作った、衣装がある……」
ゴロスリの言葉に、ギメチカの顔が明るくなった。
さてガムチチはベータスの体を洗っていた。今度はベータスがうつぶせになり、背中を洗っている。
ガムチチの股間がベータスの背中に触れている。ベータスもガムチチの膨らんだお宝に頬を染めていた。
「どうだ、俺の胸は? 気持ちいいか?」
「きっ、気持ちよくねぇよ! 身体は重たいし、岩みたいでごつごつしてるし……」
ベータスの股間も熱くなる。腰を浮かせるとガムチチの股間が触れた。まるで自分が求めているようで真っ赤になる。
「なんだ、尻を浮かせて。そんなに俺のが欲しいのか?」
「ほっ、欲しいわけないだろ!! 勘違いするなよ!!」
「ふふっ、可愛い奴だな。ゲディスとは別に愛しいと思うよ」
「なっ、俺とゲディスで楽しむつもりかよ!! このケダモノめ!!」
ガムチチの言葉にベータスは言い訳をしている。もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。別にガムチチは好きではないが、身体は反応している。
「じゃあ、なんでそんなに熱くなっているんだ?」
ガムチチがふっとベータスの耳に息を吹きかけた。体中に電撃が走る。さらに汗が噴き出て、歯を食いしばった。
「やっ、息を、吹きかけるなよぉ……」
ベータスはぐったりしている。最初は自分がリードしていたのに、いつの間にかガムチチに主導権を取られていた。このまま続けたら自分はどうなるのか。不安で仕方がなかった。
「そういえば、ゴロスリ様はベータス様に魔法を教えた時、どうしたのですか?」
「普通に、自分の身体で、やったよ? 教えたのは、三歳の時だったし」
「……ガムチチ様の年齢で習得できるのですか?」
「できる。ベータスの時は、子供の時に、やった方がいいと、思っただけ……。大人になって、からだと、難しい、から」
「マットプレイさせるのはいいのですか」
どこかゴロスリはずれていると思った。だが王族としての教育は受けており、国を運営できても、子育てなどは苦手なのだろう。
ガムチチとベータスは盛り上がっていた。
男同士のマットプレイならセーフかな?
なんでも女性の胸を触るだけでNGになるけど、男ならギャグにされるのだろうか。




