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第一話 ガムチチとの出会い

 ゲディスはさっそく紹介された家に行く。家は高台にあり港を見渡せる位置にあった。

 だが道中は人っ子一人いない。猫一匹が道を横切り、カモメが遠くで鳴く程度である。

 年寄りしかいない町。なぜここまで放置されたのか。理由は簡単、町長がマヨゾリ・サマドゾ辺境伯に訴えなかったからだ。

 実は辺境伯はゴマウン帝国の皇帝、ラボンクと仲が悪い。辺境伯は三〇歳で、皇帝は二六歳だ。

 二人とも六年前にそれぞれの地位に就いたが、天と地の差があった。


 辺境伯は町に私塾を作り、子供たちに文字の読み書きと計算を教えていた。そして兵士を募集し戦力を強化している。モンスターが多いため畑を作るのに困難だが、モンスターを狩ることで肉や皮、骨などの素材を使って食料を輸入していた。

 さらに皇帝の姉、バガニルを嫁に迎えており、双子の男女の後継ぎが生まれている。公私ともに充実しているのだ。


 一方でラボンクはぼんくらだった。皇帝になれたのは父親が亡くなったおかげであり、これといった考えもなかった。美しさだけが売りのヨバリク侯爵の娘、バヤカロと結婚するも今だ子供は生まれていない。そのため子供がいるサマドゾ辺境伯に嫉妬しているそうだ。

 政策も気まぐれで畑を広げようとしたら失敗し、ダムを作ろうとしたら雨で波瀾するなど散々であった。

 花級フラワークラスと花びらペドルクラスの冒険者は主にサマドゾ辺境伯領に赴いている。定住はしないが、辺境伯とは顔見知りであり、世界各国から珍しい品物を置いていくのだ。

 特に遥か東方にある島国、志熊荷しぐまに王国からは珍しい布や細工物、米で作られた酒などがあり、高値で売れていた。


 周囲の人間はサマドゾ辺境伯は偉大で、皇帝はぼんくらだと馬鹿にしていた。下々の噂話は皇帝の耳に届いており、彼をいら立たせているのだ。

 そのため辺境伯は無理難題を言いつけられていた。辺境伯が失敗することを望むようなことばかり命じるのだ。そのため辺境伯は疲れており、タコイメの町長は自分たちの問題を押し殺していた。

 それが先日ばれてしまい、バガニル夫人のアイディアで今に至るのである。


「まったく人には人それぞれの役割があるというのに……」


 ゲディスはつぶやきながら目的の家に着いた。二階建ての壁が白い家だ。長年住んでいないので所々傷んでいるようである。

 ゲディスはドアをノックした。受付嬢の話では先客がいることを聞いたからだ。


「もしもし、よろしいでしょうか」


「おう、入れ」


 中から野太い声がした。どうやら中にいるらしい。ゲディスはドアを開いた。


 そこには一人の男が立っていた。筋肉もりもりで日焼けしている。白い髪を刈り上げており、身に着けているのは黒いブーメランパンツとサンダルだけだ。

 ゲディスはそれを見て心を奪われた。こんな均整の取れた男性を見たのは初めて出会った。


「ん? お前さん、何をぼーっとしてるんだい?」


「ああ、申し訳ありません。あなたの筋肉があまりにも美しいので見惚れてしまいました」


「そうか、褒められるのは嬉しいねぇ。俺はガムチチ。蕾級バドクラスでアマゾオ族の戦士さ」


「すみません、自己紹介が遅れました。僕はゲディス、帝国はカホンワ男爵領から来ました。階級は同じく蕾級です」


「俺は外国から来たから、帝国の事はよくわからねぇ。だが帝都は居心地が悪くてね、こっちに来たんだよ」


 帝国は外国人を嫌う人間が多い。帝都は豊さゆえに人種のるつぼだが、人種差別が目立ち、外国人がまともに働けるとしたら冒険者以外に存在しないほどだ。


「そうでしたか。先代の皇帝なら外国人をある程度受け入れていましたが、今はだめです。サマドゾ辺境伯に対抗して外国人を差別することが面白いと思っているのですよ」


「なんだそりゃ、最悪だな。ところでお前さんは冒険者なんだろう? これからちょっくら狩りに行かないか、もちろん依頼だよ。ここは働かざる者食うべからずだからな」


「いいですね、行きましょう。僕は休むより働く方が好きなんです」


 こうしてゲディスとガムチチは手を組むことになった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは! あらすじが気になったので拝読させて頂きました。 兎に角、ネーミングセンスが秀逸ですね。 このふざけた感じの世界観も好きです。 それとガムチチ、この名前にも吹きました♪
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