チーム完成
途中からライアン視点になります。そうした方が書きやすかったので。
「それで……チームを作るにはお前さん達以外に後3人選手が必要なわけだが、それは一体どうするつもりだ?」
酒場の椅子に腰掛けたジェスのその一言にライアンとマイティは顔を見合わせた。そういえば、ジェスの協力を得ようと思ってマーメイドスケイルまで来たのは良かったのだが、それ以降のことは忘れてた……
そんな2人を見てジェスは呆れたように溜息を吐いた。
「それなら、お前達のやるべきことは1つだ。1ヶ月以内に後3人選手を集めろ。話はそれからだ」
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「うーーーん…… 参ったな」
宿の1室、ライアンは頭を抱えた。本当のところ、エタンセルに会ってそこから選手をじっくり探すつもりだったのだ。だが、先に選手を見付けないといけなくなってしまった。これは急いで見つけ出してなんとかチームにスカウトしないといけないな…… でも、俺達みたいなフリーの選手なんているか………? 俺の知ってる選手は皆チームにいるし…… どうすれば良い?
ライアンは数時間程悩み、ひとまずこの町で有望そうな選手を探してみることにした。選手になれそうな奴の情報も掴めるかもしれない。
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……そして1ヶ月後、やっとのことで俺ことライアンはチームメンバー3人が集め、なんとかチームを形にすることに成功した。
集まった3人のチームメンバーは全員この町、マーメイドスケイルからスカウトした者達だ。もちろん彼らは選手では無かったので、新しくプリズマ・カップの選手登録をしないといけない。まぁ、別にそれは大して難しくはないし問題無いのだが、それぞれスカウトするのは本当に骨が折れた。幸い、皆魔導武闘に興味を持っていたのでなんとかチームに入ってもらった。彼らなら問題なく戦えるはずだ。それはゴールドラッシュ時代に色々な選手を見たきたこの俺が保証する。
それから、チームのスポンサーはこの町がやってくれることになった。
それについては本当に驚きだった。実はエレナはマーメイドスケイル人気回復委員会というものを運営しており、この町のかつての栄光を取り戻すために宣伝などを頑張っていたらしい。なので、スポンサーをすることに大賛成だった。寧ろライアン達が来てプリズマ・カップの選手だと分かった時点でそうする気満々だったらしい。流石に町の者をチームメンバーにするのは予想外だったと後で彼女から言われたが。そして、町の者が選手として出場することもあって町の皆も自分の店を上げて支援してくれることになったのだ。
そのことをジェスから聞いた時は胸の奥から熱いものが込み上げて来るのを感じた。出会って間もない自分達の為にこんなにも良くしてくれたと思うと、本当に感謝してもしきれなかった。町の人達に思わずお礼を言うと、「頑張って町を復活させてくれ。頼むよ」とにっこり笑いながら言われた。これは頑張らないといけないな。何がなんでも。
マイティをチラリと見ると彼も自分と同じように考えているようだった。今まで好き勝手にやってきた彼にとってもこれは予想外だったんだろう。目頭が熱くなっていた。
町の皆にも協力してもらって準備は整った。ユニフォームは町の洋裁店に作ってもらった。ゴールドラッシュの頃のユニフォームと違って、あの悪趣味な金色ではなく、淡青色に薄緑色の鱗のような模様が入ったデザインになっている。まさに人魚の鱗と言えるカラーリングだ。ユニフォームのあちこちには町の店の名前も刺繍されている。俺の他のメンバーも全員デザインは気に入っていた。
それからゼッケンナンバーについてだが、俺のゼッケンナンバーは新たに0番にすることに決めた。これは0からの再出発という意味を兼ねている。以前の番号は防御率100%という意味を込めて100にしていたがもう使えない。
マイティの方もチームをクビになっていたので新しいナンバーになっている。そして、完成したチームは以下のようになった。
マーメイドスケイル
チームカラー:淡青色/薄緑色
100→00.ライアン・シルト
361→523.マイティ・アイスバーグ
69.エド・アストロン
5.トッド・バーンズ
74.ヴィアッカ・ドッペル
チームブレイン:リオン・チェスター(ジェス・フレイムロード・エタンセル)
ジェスは何故か本名でチーム登録することを拒否した。何でなのか理由を尋ねようとしたが、怖い顔をして拒否するので渋々そうすることにした。なので、ジェスは偽名で登録することになった。
後、新たなチームメンバーの紹介を軽くしておこう。
まずはエド・アストロンだ。彼は岩石の魔法を使うのを得意とする。元々はこの町にある小学校で教師をやっている。といってもこの町には人が少ないので生徒も数える程だが。人に教えるためなのか魔法の扱いが非常に上手い。事実、魔力量や魔力制御はプロの魔導武闘選手並みだ。なので、全力でスカウトしてチームに入ってもらった。最初は「教師の仕事の方が大事だから」と断られたのだが、何度も説得してやっとのことで協力してもらえることになった。生徒達も応援してくれており、教師の仕事も両立させながら選手として練習に励んでいる。
次にトッド・バーンズ。彼は炎魔法の使い手で実はエタンセルの修理屋の従業員だ。彼は様々な色の炎を扱うことに長けている。通常の炎魔法は赤く燃やすことしか出来ない。だが、トッドは炎に付与を施すことで様々な効果を持つ炎を操ることが出来るのだ。これには本当に驚いた。ゴールドラッシュにも炎使いはいたが、威力はあっても芸には欠ける奴だった。俺の結界魔法が無ければやられてたと思う。少し気弱な所のある男だが、なんとか説得してチームに入ってもらった。ジェスも彼の能力は認めていたらしく、チームに入れることに特に驚かれなかったし反対もされなかった。
そして、最後にヴィアッカ・ドッペルについてだが、彼女は影魔法を扱うのが得意な女性だった。なんでも……元はフリーのルポライターだったらしいのだが、3年程前に書いた記事が原因で仕事を干されたそうだ。それで、マーメイドスケイルに流れ着いたらしいのだが、詳しいことはよく分からない。本人もあまり喋らないし。町の者達もよく知らないそうだ。彼女の場合は本人の方から打診してきたのだ。選手を探している時にそういう申し出は有り難いが、弱ければ意味がないので試しにマイティと戦ってもらうことにした。彼女はつい最近まで現役のプリズマ・カップの選手だったマイティと接戦になり、結果はギリギリのところでマイティに負けた。だが、これは良い逸材だと俺の方からお願いして入ってもらうことになった。
以上がマーメイドスケイルのチームメンバーだ。そして、仲間が集まった頃には丁度プリズマ・カップのシーズン最終戦も終わり、4ヶ月の休息期間に入った。休息期間……と言っても実際はトレーニングやら何やらあるのでずっと休める訳ではないのだが。
今シーズンはゴールドラッシュが優勝チームだったそうだ。俺の後釜に新人を入れたらしいが、どうやらそれは吉と出たらしい。
負けてられない。
俺は強く拳を握り締める。
若干展開が早い気がしますが、近いうちにシーズン開幕戦になります。