開幕戦終了!
〈残り1時間を切り、残っている選手の数も既に12人となっています。トップはゼッケン96、ゴールドラッシュのラム・サンダース選手、2位は数ポイント差でゼッケン0、マーメイドスケイルのライアン・シルト選手となっています〉
〈今までの3時間がどうであろうとこの1時間でいくらでも逆転が可能になります。さぁ、もうひと頑張りだ!〉
マクミラーとラヴァレインがマイクに向かって叫んでいる間、ライアンはまた新たに別の選手を見つけた。明るいショッキングピンクのユニフォームを着た選手、クレイグカーペットのリード・ストラグズだ。現状で3位に位置付けている選手である。彼は無属性魔法という珍しい魔法を使う選手だ。無属性魔法はその名の通り特定の属性を持たずあらゆる属性の魔法に対して有利に戦える魔法だ。そして、ストラグズはその無属性魔法を身体に纏って格闘術を用いて戦う。
「……厄介な選手だな」
思わずライアンが呟くとストラグズは不敵に笑った。
「それはこっちのセリフさ。では……さらばだ!」
ストラグズは素早く無属性魔法で出来た球体を両手で作ると、それをライアンに放つ。ライアンは瞬時に結界で防ぎつつ魔力を加えて強力にして跳ね返した。さっきのカンマセ同様に身動きの制限も忘れない。ストラグズはそれに一瞬目を見開くが、不敵な笑みは崩れない。
「なるほどね…… 君が2位に君臨するのは納得だ。だが………」
ストラグズは瞬時にさっきと同じ魔法を今度は地面に向かって放ち、爆発を起こす。すると、ストラグズは飛び、ライアンが返した魔法攻撃を見事に躱した。その勢いを利用してストラグズはライアンに攻撃を仕掛ける。
腕に魔法を纏い、勢いよく突っ込んできたのだ。この場合、ライアンがプロテクターを展開すればストラグズは即座に無属性魔法を放ってしまい、リフレクターを展開すれば物理攻撃を防げず攻撃を受けてしまう。避けようとしても意味はないだろう。まさに八方塞がりな状態だ。………以前のライアンなら。
ライアンはトレーニングの過程でもう1つ新たに習得した技があった。それを使うべくライアンは即座にプロテクターを展開した。ストラグズはそれを見ると、腕に纏った魔力を渦状にしていく。プロテクターで防がれたと同時に全力で無属性魔法を勢いよく放つつもりだ。リフレクターを新たに展開し直す前に。だが、その目論見は外れた。ライアンが展開したプロテクターがライアンの手を離れ、ストラグズの元に突っ込んで来たからだ。ライアンが新たに覚えた技「シールドブラスト」は自分の飛ばした結界を相手に向かって飛ばす。その隙に自身は別の攻撃に入る。あのシーラス達のトレーニングで身に付けた技だ。
ストラグズは早くに顔からプロテクターに衝突し、放つはずだった攻撃は明後日の方向に飛んで行った。その攻撃は遥か遠くにいる別の選手に当たり、戦闘不能になってしまい、ストラグズのポイントに、そして当のストラグズは運悪く地面にあった岩に頭から衝突して気絶してしまった。まともな受け身が取れなかったらしい。ドクドクと血が出ているが、大丈夫……と信じたい。
〈おおっと、ゼッケン510番クレイグカーペットのリード・ストラグズ選手がここで戦闘不能! 彼の持っていたポイントは全てシルト選手のポイントになります!〉
観客席から驚きの声が上がる。無理もない。ストラグズはプリズマ・カップの花形選手の1人だ。それを結界使いが倒したとなったら誰もが驚くだろう。
その時、雷が鳴り響いた。こんな砂漠に雷の鳴る雨雲なんてない。そもそもここは屋内だ。……ということは……… 周りがピカッと光ると、そこには金色のユニフォームを着た選手が立っていた。サンダースだ。
サンダースはライアンを見るや馬鹿にした表情を浮かべる。
「あら、負け犬のライアンちゃんじゃない。あなたまだこんなとこにいたのね。まぁ良いわ。さっさと倒しちゃうか」
そう言うと、サンダースは数万ボルトはあるだろう雷魔法をライアンに向かって放った。相変わらずまともな戦略を考えない奴だ。素質はあるが、これじゃあな。ライアンは無言で結界で防いだ。サンダースは悔しげな表情に変わると今度は球状の電撃を放とうとする。
その時ーーーー
ジャジャジャジャジャアーーーン!!
突然ファンファーレがドーム内に鳴り響いた。すると、ライアン達は地面に現れた魔法陣によって退場させられた。
〈時間となりました!! 今大会で残った選手は全部で9名! 順位はこのようになりました!!〉
マクミラーの声と共にドーム内に選手の名前とチーム名、ゼッケンナンバーが順位の順番に表示された。
ライアンの名は2位の所にあった。
悔しくも1位はサンダースだった。数ポイント差とは言え2位の結果になった。恐らくストラグズを倒した時点で彼女は何人か別の選手を倒していたのだろう。
ライアンは強く拳を握り締めた。ドームからは勝利を祝う鮮やかな花火が打ち上がったが、ライアンの心は暗かった。
ーーーーーーーーーー
町の皆のいるスポンサー席に向かう途中、ライアンは巨大なスクリーンでサンダースがインタビューを受けているのを目にした。
「ラム・サンダース選手、今回の大会はいかがでしたか?」
「あんなヘナチョコ共アタシの敵じゃないわよ。今回の大会は言うなればアタシの勝利は確実だったってことかしらね?」
「ライアン・シルト選手のことはどう思われましたか?確か彼はあなたと同じ……」
「さぁね。彼なんてアタシの……いや、アタシ達の敵じゃないわよ。今回もそれからこれからもね」
ライアンは小さく溜息を吐いた。
スポンサー席には町の皆だけでなく、チームブレインのジェスもいた。
「ごめん、ジェス、皆。2位だった」
ライアンは目を伏せながら言った。
「何を謝ってるんだ。2位でも良いじゃないか。勝ち抜き戦は今回で初めてだったんだ。それに、今回で終わりじゃない。始まりだ。ここから巻き返していけばいい。まだ絶望的な差でもないしな」
ジェスがそう言うと、ライアンは思わず顔を上げた。マーメイドスケイルの皆も笑顔でライアンを見ている。
「ああ……うん、そうだよな。ありがとう皆」
ライアンがお礼を言った時、騒がしい声が後ろから聞こえてきた。
「いたぞ! あそこだ!」
「ライアン・シルト選手! 今大会の感想を一言!」
「新たなチームを立ち上げたと聞きましたが、どのような経緯で!?」
「今回2位という高順位ですが、どのような理由で今まで勝ち抜き戦に出場しなかったのですか!?」
「写真を1枚お願いします!」
騒がしいマスコミ達によってあっという間にライアンは取り囲まれた。ライアンは目を白黒させながらもインタビューに答えている。町の面々はそんなライアンを微笑ましそうに見ていた。
そして、そんなライアンの様子を不愉快そうに見ている者がスポンサー席に1人いた。
申し訳ありませんが、土日はお休みさせてもらいます。月曜から更新再開します。




