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 ……ヒソヒソ、と闇の中で誰かが話している。


 これは、おれ――下帯絆には聞こえることのない会話だった。


「こんばんは。遅かったな」

「お晩です。きみとは立場の違う人間にとり憑いているからね。怪しまれないように忙しいのさ」

「そうかい。順調そうならよかった」


 挨拶を交わすと、闇は笑う。


「こっちはいいとして、きみのほうはどうなんだ?」


「順調さ。といっても、なにもしない内に事態が好転しそうなだけだけどね」


「ほお。それはどんな具合に?」


「伊誘波黄泉を守るふたりの内、男のほうが弱ってきている」


「その様子は、こちらも見かけたな。たったあれしきであそこまで疲労するとは、やはり人間は脆い」


「ということで、アタシは長期戦を提案するよ」


「短期決戦を狙ったアラクネやイッタンモメンとは違ってか。してどのような?」


「あいつらはアホだったんだよ。ほとんど思考能力のないアラクネ、机上の空論だけで正確な状況判断をせずに自分が回復したからってすぐに単独で突っ込んだイッタンモメン……アタシはあいつらとは違う。いつ襲ってくるのか分からない恐怖や焦燥で心と体をじっくり削っていって、あいつらがろくに手足も出せない状況になったところでトドメをさす。柄の間の安心さえ与えないように、ほどよく使い魔を送ってね」


「素晴らしい作戦だ」


「守護者の内、男のほうは勝手に潰れていく。対魔巫女のほうはさすがに使い魔程度じゃ息の根を止められないだろうが、それでも弱ったところをアタシとアンタのふたりで襲いかかれば確実にいける」


「あの程度の女、ひとりでも充分だが?」


「確かにアンタは、アタシが知ってる中でも最強格の魔物さ。指一本でも触れたら、どんな魔物でも一瞬で死ぬ呪手(じゅしゅ)があるからね。しかも、しょせんフィジカル頼りのイッタンモメンと違って、優れた戦闘技術もある……だけど、やる時はふたり。油断は禁物、こちらが有利な状況で全戦力をぶつけて、リベンジの機会を与えないほどに根こそぎ敵は殺す」


「承知した」


 闇から去っていく足音。


 中になにもかもなくなった闇は、依然として闇であり続けた。


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