⑧「境界線と輪廻の花 終章後篇 」
キャラクター紹介
デウス・エクス・マキナ《CV:花澤◯菜》
東京の事務所で鏡乃博士の仕事を手伝っている肌色の制服ブレザーにチェックスカートを着ている十六歳の女の子。偽名で鏡乃眞姫那を名乗る。
鏡乃博士 age 23 《CV:佐藤◯奈》
本名は鏡乃霧亜。白いコートの下に紫色のチャイナドレスと眼鏡が似合っている。小さい都会の事務所だが仕事をきちんとこなしていく。/ 六剣神拳の使い手。
イフリート 《CV:鈴◯健一》
黒髪に赤眼。ヴァルキュリアと共に行動する者。
ヴァルキュリア《CV:桑◯法子》
イフリートと共に行動する者。独立特殊部隊軍事特務機関アリア ヴラド隊第一隊長。
ー プロローグ ー
西暦二千年の四月十一日、僕はその日初めて神様と出会い天罰が下るのだろうと思って少し……どこか安心してしまったのだろう。
「少し……そうだな、話をしよう」
終幕 五
「貴方は人間を改心させたかった……でも……どう?今のこの世界を見て……変わったのは荒々しく住み難くなった世界、テロや暴動は毎日のように続く……これが貴方が望んだ世界なの?」
僕は女神様の潤んでいる目に対してこちらは重々答えた。
「いや、人間はこれまでされてまで変わろうとしなかったよ……本当に愚かなんだ、自分達は助け合いをしようともせず毎日群れる、これが結果なんだから僕はもう……人間を住めなくするのを望んだ」
僕は言い終わるともう一度景色を見渡した、空は快晴、地上は地獄。燃え盛る街、血の海。
「うん……でも人間は変われるよ。貴方が後悔をするように人間も後悔をすればまた立ち直れるし、嬉しい事があればまた悲しい事もあるけれど……また立ち直って成長していくのが人間なんだよ。私は信じたい……この世界を!」
どうやらお互い話し合いではやっぱり解決出来なかった。イフリートは再度眞姫那の方へと振り返り右腕をポケットから手を出すと腕は変化し燃え盛り筋肉も大幅に進化した炎の拳。
「「どちらがこの世界に相応しい神か!測ってみるか!」」
二人は行きを合わせるかのように答える。
「我がイフリートの名の元に力を授け給え!獄炎拳!」
イフリートの熱拳が眞姫那を狙うもそれをすぐさま反応しブーツで蹴りを入れた。
「もうビットは使えない……ッ、か!やっぱり強い……これが世界に刃向かう力……?」
眞姫那は一度距離を取るがイフリートはすぐに間合いを詰めて来た。
「見ているだけでは、逃げているだけでは世界など到底守れたもんじゃないんだよ!いつまでも目を背けていては守りたい者も……!それでも貴様は守る者があると言うのか!!極・獄炎拳!!」
眞姫那は問い返す前に左足で蹴り上げイフリートの攻撃をガードするも威力の差で呆気なくブーツが崩壊してしまう。
「怖かったら逃げたって良いよ!悪い事から目を背けるのが人間だよ!でもそれが貴方にとって辛い事だって!私は受け止めてあげるから!!」
バチーンッ!!と音を立てて全力を出した右足のブーツ・モードソードでイフリートの腹部を直接強打させた。
「けほ……っ……やるじゃないか……ん?いやもうこれでは……」
イフリートと眞姫那が異変に気付いたのか二人共距離を取ったまま微動だにしなかった。
「「…………」」
数分の沈黙から下で誰かが階段から上がって来る足音が聞こえて来た。
「イフリート様!無事ですか!?」
ヴァルキュリア?とイフリートは振り向いた。
◇
一時間前、東京スカイツリー内部にて。
ヴァルキュリアは鍔迫り合いを止めて一旦距離を置いた。
「ン?あぁ……黒城華蓮。そいつが私の実の娘だ」
ヴァルキュリアは泣き、怒りに任せて無抵抗に煙草を吸い出したチャイナドレス女の顔面に思い切り槍をぶっ刺した。と思われたが鏡乃霧亜はスレスレで回避していた。頭の隣にある槍はそのまま放置したままである。
「本当……良い女だよアンタ」
ふーっ……と煙を吐き一人天井を見上げる。
終幕 六
「大丈夫ですか?イフリート様」
ヴァルキュリアは心配そうに膝を着いた俺を呼ぶ。「別に大した事は無い」と言い再び立ち上がると……。
「ん、足元が……消えて行く……?そうか、アリア様は先に逝ってしまわれたのか……無力だな、俺も」
本当にどうしようもない人生だったけど俺はどこか悔いをしていなくて、ヴァルキュリアが隣に居るだけで俺は一人じゃなかった、それに……。
「そう言えば、覚えているかい?ヴァルキュリア(アンノウン2)が僕に手紙を書い置いてくれていた事、読んだ時に凄く安心したんだ……僕は誰かに頼りにされていると言う事の実感を得たんだ、それは君のおかげだよ、ありがとう。そうそうこれだ、もう古くなって紙の色も変化してしまっているが……紛れもなくこれは“あの時初めて手に取った手紙”だ」
ヴァルキュリア(アンノウン2)は口元を抑え涙を流しイフリート(アンノウン1)に抱き着いた。
「消えてしまう前に言いたい事があります!アンノウン1!……おかえりなさい……っ」
僕は泣きじゃくるアンノウン2の頭をそっと撫でてあげた。
「ただいま、アンノウン2」
最後にアンノウン1が言って眞姫那の目の前にいたアンノウン1とアンノウン2と呼ばれる人物は光の量子となって空に消えた。すると緋色の空から雪が降り始めた。
「春の日に降る雪。とは良く言ったモンだよ」
眞姫那の後ろからやって来たのは鏡乃霧亜だった。
「うん、本当……綺麗だね……」
私はこの時涙を流していたのかも知れない。何故だろう?嬉しいような悲しいような……不思議な痛み。
「ン?眞姫那その手に抱えてる赤ん坊はなんだい?」
煙草を捨てて眞姫那の元へと近付く鏡乃霧亜はほうほう……と頷いて烏羽折りに包まれた赤ん坊の隣には手紙が置いてあった。
『この手紙を読んでくれていると言う事はもう僕とアンノウン2はきっとこの世にはいないだろう。けどこれを読んでくれたのならば次の世代をこの子に預けてみたい、平和な世界が訪れ、皆が幸せであるように。そうだ、僕はアンノウン2とこの子の名前を考えたんだ、それは……』
神無木ステラ。と手紙の最後に書いてある。眞姫那は赤ちゃんを抱きしめてこう言う。
「平和になるよ……だから、私……」
最後まで言わずに赤ちゃんを鏡乃霧亜に託した。
「眞姫那……行くんだね。私は止めはしないよ。眞姫那がそうしたいならば」
鏡乃博士は血も涙も無いので言い終わるとまた煙草を吸い出した。
「この世界を元どおりにして、またみんなが住みやすい世界にするために私は神になる。それがみんなの願いであり希望だから……」
目を瞑り、頭には天使の輪っかみたく二重に重なった虹色の歯車の形をした聖なる輪と天使の羽を広く伸ばして私は空へと飛び立ち光の量子となって消えた……。ありがとう、鏡乃博士。
エピローグ
世界が元どおりになり十年の月日が流れた。デウス・エクス・マキナは消滅し。あの時に拾った赤ちゃんは神無木剛志浪様の家へと預けられた、まぁ……私が預けた訳だが。さて、どうだろうか……眞姫那、アンタは今どこで何をしているかわからないが世界は完全に修復されたよ、アンタのおかげでね。この事務所から見上げた青空はいつも通り綺麗で透き通った青、こちらこそありがとうと。
あとがき
こんばんは、最近虫歯また出来たんじゃね?と思いがちな作者いちごみるくです(虫歯はありませんでした)。さて今作はもうやりたいこと出来たんでもう良いかな?とか他のジャンルわからんしそろそろ小説生活も終わりを迎えるのではないか?とか色々考えた結果生まれた作品が神無木ステラ登場シリーズとなります。次回作ももちろん考えてあるのですが全三部作構成の予定であり次回作で本当に神無木ステラシリーズ三百年の歴史が終わろうとしています……なんだかんだで長かったなぁ……と渋々思います、本当はこんなに長くシリーズを続けるのは考えてはいませんでしたが別の作品に前の作品に登場した人物を入れてクロスワールドさせてみようかなと書いてみた結果がまぁ……良いんじゃないかこれ!と思いました。長くなりましたがそれではこの辺で、ごきげんよう。