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93.パーティー会場にて(後編)


「...どういうことですか、クリストフォルス殿下。」


いち早くに返ったテレサがクリストフォルスに振り返る。

続いてノックスがルシアに目線を向けた。


「そのままだよ。ねぇ、ルシア。」


「ええ、そうですわねクリス様。テレサさん、数日ぶりですわね。」


「...はい。」


にこりと話しかけると流麗な動きでテレサは一礼してくれた。

う~ん、やっぱり良いね女性騎士!


「あの、ルシア様。」


振り向くとノックスが説明求む、といった顔をしている。

ルシアはクリストフォルスと目を合わせた後、テレサやノックスに説明を始めた。


「私がただのイストリアの貴族令嬢を(よそお)っていたようにクリス様もまた、アルクスの伯爵子息を装っていたというだけよ。」


「...まともな王族って居ないんですか。」


「あら、失礼ね。」


確かに普通に思い浮かべる王族の行動力ではないけれど。

今にも頭を抱えそうなノックスの駄々漏れな本音にルシアもクリストフォルスも笑うだけで不敬だと咎めることはしない。

お互いに周りを振り回していることに自覚があるからである。

うん、厄介で性質(たち)が悪いなこりゃ。


「それで?どうしてテレサさんがクリス様の護衛に?」


「ああ、そうしたら面白そうだと思って。」


悪びれないクリストフォルスの言である。

彼の後ろでテレサが遠い目をしていた。


「騎士団の新体制に(せわ)しいでしょうに。」


「いえ、皆に任せてきましたのでご心配なく。令嬢...いえ王子妃殿下。」


「?なあに、テレサさん。」


全く心配ないとはっきりと宣言したテレサはとても神妙な顔でルシアに声をかけた。

ルシアは首を(かし)げながら、テレサを見上げる。


「...貴女様がアルクスを発った時はああ言いましたが、今ならこの男を連れ帰っても構いません。王宮でやっていけるとは思えませんし。」


「ちょっ、テレサ!!」


ノックスが焦った声を上げるが、テレサは聞く耳を持たない。

クリストフォルスはその様子を見ているだけだ。

ほんとに傍観者が好きな人だよね。

もしくは人間観察だろうか。


「いいえ、テレサさん。ノックスは既にわたくしの騎士です。彼が至らない場合の責任を取るはもうテレサさんの役目ではなく、わたくしの役目ですわ。」


「そこは王宮でもやっていけるって言ってくれないんですか。」


「ええ、勿論。」


ルシアの言葉にノックスが反論するがルシアは爽やかに言い切った。

あまりにもはっきりと言われてしまったのでノックスは二の句が告げなくなり項垂(うなだ)れる。


「そうですか。では、もし返品したくなった際にはいつでもどうぞ。」


「...そんなことにはならないつもりだ。」


「どうだか。」


現在、自分の至らなさを自覚しているノックスの声は小さいがテレサと普段のような会話を繰り広げていた。

それなりに気のおけない知り合いに会って良い具合に緊張が(ほぐ)れたようだ。


「ルシア。」


「あら、カリスト。」


そこへ王子が戻ってきた。

その場に居る四人の何とも言えない雰囲気に王子は首を傾げる。


「やあ、カリスト。君の大事なお嫁さん借りているよ。」


「...まあ、大して知りもしない面倒な人間たちに絡まれているよりは良いが。クリスが一緒なら誰も会話を遮ってまで声をかけに来ないだろうからな...しかし、どういう状況だ?」


「こちら、ノックスの元同僚でアルクスでお世話になった北方騎士団団長のテレサさんよ。今日はクリス様の護衛として来たのですって。」


気軽に挨拶を返すクリストフォルスに王子は気にしていないといった風に返す。

そして、彼が状況を掴む為にした質問にルシアがテレサの紹介を交えて答えた。


「ああ。それはルシアが世話になった。俺はこの国の第一王子カリストだ。」


「いえ、こちらこそ王子妃殿下には返せないほどの恩を感じております。騎士団長を任されておりますテレサと申します。」


テレサは王子の美貌(びぼう)に最初こそ目を見張ったが、しっかりと一礼してみせた。

ノックスより随分、肝が据わっているようだ。

さすが、女だてらに騎士団長してないよ!

副団長としてのキャリアも長いようだし。


そのまま、暫く五人で会話をすることにした。

ルシアがちらりと横を見上げるとノックスは最初のクールなイメージと全く違う表情を浮かべていた。

ちょっと情けないような。


でも、戦闘においては頼りになることは知っているし、他人の前では表情を作れることも知っている。

身内だけだからか、完全にポーカーフェイスの剥がれ落ちたノックスにルシアは苦笑を浮かべた。


「?何ですか、ルシア様。」


「ふふ、いいえ何でもないわ。」


ノックスが(いぶか)しげに問いかけてくるが、ルシアは笑うだけで答えない。

今回、ルシアがアルクスで行ったことは全て良い方向に繋がったとはとても言えない。


さすがに隣国へ行くのはやり過ぎたかー。

それだけの価値はあったとは思っているけれど。

けれど、このことは王妃は兎も角、国王の目には付いた気がする。

そ、れはヤバそう。

うん、ヤバいよね。


スピンのこともあるし、王妃にまで()ぎ付けられたら面倒この上ない。

けど、放置して死亡フラグ一直線は嫌なので。

うん、ノックスという作中で少し語られるのみの登場人物とも言えない頼もしい仲間が出来ただけでも収穫だよ。


「これからよろしくね、ノックス。」


「?はあ、はい。」


ルシアの唐突な言葉にノックスは疑問符を浮かべながら返事をした。

その向こうで王子がルシアに微笑みかけていた。

王子は15歳、ルシアは11歳になって、また一つ小説のスタートへ近づいている。

とりあえず一息つけたルシアはアルクス戦争のフラグが折れていたら良いなと思いながら、ちょっぴりやらかしたかもしれないことは忘れたと言い聞かせるようにしながら会話を楽しんだのだった。


これはルシア個人に仕える仲間が三人に増えた、ルシアと王子が婚姻をして約1年後の話である。


これにて第二章の終幕です。約2ヶ月で第三章までやって参りました。このペースが早いのか遅いのか。...いや、遅い気がする。

何よりまだルシアの言う元となったであろう小説のスタートに辿り着いてないという事実...。

そして、作者である私は今後の展開について、第二章で90ページを越したことに戦慄を覚えておりますこの頃です。


第三章ではやっとスタートに立っていただこうと考えておりますので、ブックマーク、評価、閲覧していただいた皆様、引き続きこの物語を読んでくださると幸いに思います。

約2ヶ月お付き合いいただきありがとうございました。

コメントをくださった方々もその都度、返信しておりますが本当に読む度に嬉しく思っております。

これからもコメントをいただけると嬉しいです。


今後も精一杯、ルシアたちの物語を紡いでいきたいと思いますので皆様、応援よろしくお願いいたします。


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