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327.紅を隠した青年は意味ありげな笑みを浮かべる(後編)


「...そう。どうせ、貴方のことだからその別件について尋ねても答えてはくれないのでしょう。」


「さてな。」


ルシアは丁度、話の切れ目を狙ったかのように運ばれてきたお茶を口に運んでからそう言った。

ちらり、と意味を込めて視線を送れば、シャーハンシャーは案の定、是とも否とも言わない返事を可笑しげに笑いながら発したのだった。


「なら、話を変えるわ。貴方はハサンをご存知?」


「ああ、俺の部下だからな。彼奴(あやつ)は案内人として役に立っているか。」


「ええ、とても優秀な人ね、彼。」


ルシアは即座に切り替えた様子でそう言った。

視界の端で何、当たり前のことを...という顔をしたノックスが見える。

しかし、尋ねられた当のシャーハンシャーは驚きも呆れも浮かべずに、先程のルシアと同じようにカップを口元に運びながらその問いに答えたのだった。


まぁ、言葉だけを聞いていたらノックスの反応の方が正しい。

だけど、これで確実にハサンは本来の案内人に成り代わったのではなく、シャーハンシャーの寄越(よこ)した人材ということが証明された訳だ。


「ああ、そうだろう?ルシアのところのイオンのように何でもこなす奴だ、重宝している。」


「ええ、貴方が気に入りそうな人だと思ってたわ。」


ハサンは事務的、ビジネスライク、通常であれば少しはやってしまいそうな過干渉もなく、それ以外では素っ気ないようにも思えるが、少なくともこの数日間で行動を共にした彼はそつがない人物と言えた。

気配りをするタイプではないものの、足りないことはなく、確かにオールラウンダーの気質をしており、シャーハンシャーがイオンのようにと言ったのもルシアには(うなず)けた。


「そんな優秀な人を私たちに寄越してくれたのは嬉しいけれど、本当に良いのかしら?別件としてわざわざ商人に扮する貴方には彼の能力が必要ではなくて?」


率直な疑問を尋ねるようにルシアは言った。

元よりアフダル()()アル・サーニ(二番目)の街で疑念を持ち、ずっとその理由を考えてきたのだから一番尋ねたい質問には変わりなかったが。

しかし、シャーハンシャーはそのルシアの質問にルシアたちの視線の集中砲火に居心地悪そうな顔一つ浮かべることなく、むしろ意味ありげに嫣然(えんぜん)と笑うのみだった。

やはり、その別件ということに関わることは何一つ教えてくれないらしい。


しかし、その別件というのは十中八九、今起きているであろうタクリード編(もど)きだとルシアはほとんど確信していた。

それをここで言って問い詰めるのも一つの手でハサンの時はそうしたものの、今回、ルシアはそれをしなかった。

どうにも明確に問い(ただ)してもはぐらかされる未来しか想像出来ないんだよね。

ルシアはふぅ、と息を吐く。


「...ところで、アフダル・アル・サーニで一緒に行動されていた方は?今は別行動を?」


「ああ、彼奴ならそう待たずともすぐに合流しよう。」


仕方なし、というか、無駄と分かってというか、いつもの合理主義の元、また話題を変えたルシアに今度は弧を描いていただけのシャーハンシャーが口を開いた。

そう、それも気になってたんだよね。

ルシアはアフダル・アル・サーニの宿屋で見た目深にフードを被り、特徴が一つとして掴めなかった青年の姿を思い出していた。


ハサンは置いていくのにこの逃亡にシャーハンシャーが連れているその謎の青年。

勿論、ハサンを私たちに付けたのにシャーハンシャーの企みがあったのかもしれないし、裏切り者であれば、それを警戒して切り離したのかもしれないけれど、それを加味してもわざわざシャーハンシャーが連れ歩く青年だ、優秀なのは勿論のこと何かしらあると思う。

気になって当然だよね。


事もなげに言ったシャーハンシャーにルシアは首を(かし)げた。

今回、ルシアたちがシャーハンシャーと再会出来たのは偶然だ。

シャーハンシャーがルシアたちの旅程を読んで、待ち伏せていたのでなければ。

そうして急遽、この食堂へ移動したのだから、少なくともすぐに合流するのは難しいんじゃないかな。

そう、ルシアが思ったその瞬間だった。


「シャー、どういうこと。こんな状況になっているとは聞いていない。」


「!?」


ルシアたちの背後からぬうっと現れた外套(がいとう)のシルエットが涼やかな声でそう告げたのだった。

ルシアたちは音もなく急に出現したかのように思えたその青年を表情いっぱいに驚きに満ちた様子で目を見開いて振り返った。

そこには真っ黒な外套に全身を包み切った青年が憮然(ぶぜん)とした様子でシャーハンシャーに視線を向けていた。


「ああ、スズ。ルシアたちとはそこで偶然、再会してな。なに、少し話をしていただけだ。そう

怒るな。」


その中で一人、唯一驚かなかったシャーハンシャーだけが不機嫌そうな雰囲気を(まと)うフードの青年に場違いなほどのんびりとした口調でそう言ったのであった。


ほんとに申し訳ございません...(泣)

何度も何度も重ね重ねですが、1時投稿ばかりですね。

出来るだけ0時には投稿したいのですが...上手くいっておりませんすみません。

あと、今回は短めです前後編に分ける必要なかったかな?

場合によってはまとめるかもしれません。


暫くはこういった状況が続くかと思いますが、お付き合いくださると大変嬉しいです。

こんな作者ですが、応援してください、お願いします。

それでは、次の投稿をお楽しみに!

感想等々、いつでも待っております励みになります気軽にどうぞ!


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