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319.移動中アクシデント


アフダル()()アル・カーメス(五番目)の街で二日の時を過ごした後、ルシアたちは次の街へと向かっていた。

移動して、街で休憩、また移動とそればかりなのだが、それもこれもそれだけタクリードが広いということだ。


皇都自体、タクリードの国土内で若干、南側に位置しているがほとんど中心と言っても差し支えない位置にある。

しかし、そこへ向かうのに既に数日かけているものの、皇都到着までの進捗は次の街で7割といったところである。

ということはタクリードの最南に行くとしたら倍以上の時間がかかる訳で。


まぁ、道が砂漠で街も点在、馬車も基本的に使用不可ともなれば、移動にも難点が出てくるのは当たり前で途方もなく広大で遠い訳でもないのだが。

うん、タクリードの南側の街に行きたいなら、それこそアクィラの南端の街から入国すれば、割と短い時間で行ける。

船を使えばもっと早い。


要は国内での移動が大変ということなのだ。

勿論、タクリードの民たちはそれに慣れているし、ラクダ(さば)きも素晴らしいので他国の者よりよっぽど軽やかに移動するらしいが。


「よう、ルシア。まだまだ元気か?そろそろ倒れそうになってんなら言えよ。」


「あら、イバン。気遣ってくれるのは良いけど、ここまで過保護にされていて倒れるほどじゃないわよ。」


ひ弱なのは認める。

ルシアは横に並んだイバンからの声掛けに少しだけ口元を引き結んで答えた。

しかして、ルシアを基準とした休憩間隔、自覚するよりも早く差し出される水分補給、ラクダを駆るのさえも王子と他にも色々とあるけれど、ここまで過保護にされて倒れようにも倒れられないと思う。

確かに体力はないけれど、ああもあちこち駆け回ってきたのだ、普通の令嬢よりは丈夫だ。


一般平民女性くらいの強度はあるとは思うよ。

え?それにしては何かある度に無茶して最終的にはベッドに沈んでる?

ウーン、ナンノコトカナ。


「ま、今回は少し移動に時間かかるからな。気を付けろよ、カリスト。」


「ああ。」


「いや、確かに私に言うんじゃなくて周りに言った方が手っ取り早いとは言ったことあるけどね......。」


ルシアを心配しての会話だったはずがイバンが忠告を後ろの王子に向けたのに、そして当然のことのように王子が返事したのを聞いて、ルシアは半眼で呟きを溢したのだった。

確かに昔、レジェスにそう言ったのは覚えている。

けれど、端からそういう対応されると何だが釈然としないのは仕方がないとも思わないか。


ルシアはちらりと王子を見上げた。

釈然としない表情のルシアを見て、王子は少し可笑しそうに笑ってルシアの頭を撫でた。

被った外套(がいとう)ごと撫ぜくられるのはもう何度目か、ルシアは止めもしないがそのまま受け入れるのも何だという顔で王子を(にら)んだのだった。


「気分は?」


「...平気だって言ってるでしょ。」


どうせ、ルシア自身がいくら虚勢を張り、隠そうと見抜く癖にとルシアは改めて聞く王子に返事したのである。



ーーーーー

ルシアたちの向かう次の街はアフダル()()アル・アーシェル(十番目)

大きくはないが、しっかりと街としての規模を持つ街である。

まぁ、タクリードは砂漠地という立地上、小さな村といものはほとんどなく、街が大規模になる傾向にあるのでアフダル・アル・アーシェルも充分に大きいのだが。


アフダル・アル・アーシェルはルシアたちが皇都までに滞在予定のある街の残り二つのうちの一つである。

そして、今までの旅程の中で一番、一度の移動距離が長いのもこのアフダル・アル・カーメスとアル・アーシェル間であった。

その為、気候によっては天幕を張って一夜を過ごすことも視野に入れての移動だった。


どんどんと皇都は近付いているがルシアの情報収集は(かんば)しくない。

アフダル・アル・カーメスの街での二度目の情報収集も確信的な何かを掴むことは出来なかった。

このまま皇都に入っても大丈夫なのか、ルシアには判断付かぬところだった。


「ルシア様!」


「!」


移動が他人任せなのを良いことに考え事に没頭していたルシアは後方からのノックスの声と腰に回っていた腕が少し強めに締められたことで我に返ったように顔を上げた。

すると、前方で砂煙が立っているその中心に複数人の人影とラクダの姿が見えた。

意識を向けたお陰か、(にわ)かに喧騒らしきものが耳に届く。


「フォティア、オズバルド!こっちは良い、加勢しろ!」


「御意!」


ルシアがそれが前方を行っていた商隊らしきの者たちが盗賊らしきものたちに襲われているのだと理解した瞬間にすぐ近くで王子が厳しくもはっきりとした声音で指示を飛ばした。

それにルシアも表情を引き締めて背後を振り返る。


「ノックス、クストディオ...!」


「承知しました!」


ルシアのたったそれだけの呼びかけでノックスとクストディオは首肯して、手綱を引いた。

すぐにルシアの横を通り過ぎて、先に駆けていったフォティアとオズバルドに追随する。

他のメンツは呼ばれなかった意図を理解してルシアたちの周りを固めた。


「......。」


山道等で賊に出くわすのは全くない話ではない。

砂漠もまた(しか)りだ。

けれど、何だか幸先の悪さを感じて、ルシアはより一層、厳しい表情を浮かべたのであった。


今日は間に合いましたよ。

その代わり短めですがすみません。

きりが良いところを探すとどうしても長さに差が出るものですね。


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