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310.緑の二番目の街


そうして、ルシアたちが道なき道のような砂漠の道を進み、辿り着いたのはイストリアの国境から出発すれば一番最初に訪れることとなる街、アフダル()()アル・サーニ(二番目)

緑の二番目、と呼ばれるこの街は砂漠の中に急に現れたようにルシアたちの前に姿を見せたのだった。


「着いたぞ、ルシア。」


「...ここがアフダル・アル・サーニ。」


王子に肩を軽く叩かれて、視線を下げ気味にしていたルシアはフードに手をかけながら顔を上げた。

見れば、少し前に砂の海の向こうに見えた街が目の前に広がっていた。

街が、砂漠の中にしてはしっかりとした都市が出来上がっている。

石造りの建物が並び、緑が生い茂り、建物に掛かっていたりと行き交う人々が(まと)っていたりとあちらこちらの布地が鮮やかだった。

先程まで砂漠の砂色ばかり見ていたからか、原色ばかりの色の海が目に痛いほどだ。


「凄く色鮮やかですね。」


ラクダの背から王子の手を借りて降りていると背後からラクダの手綱(たづな)を引いてきたイオンがそう感想を溢した。

ルシアはもう一度、街を見渡して(うなず)く。


「ええ、そうね。タクリードは布地でも食器でもその色鮮やかさで有名とは知っていたけれど...。」


「薄い色ではこの砂と空と緑しかない場所では味気ないと先人たちが考えた結果か。」


ルシアの言葉を引き継ぐように王子は言った。

確かに代わり映えしない光景ばかりの中でこの染色技術は発展したんだろうと思わせる。

それほどに街は純色の洪水で満ちていた。


あとは砂汚れが必須なことから原色で目立たなくしている等、色々な要因が噛み合った結果なのだろうが、やはり街を少し見ただけでもその場所の歴史や積み重なってきたものが垣間見えて面白い。


「ああでも、緑色の割合がとても多いのね。やっぱり、アフダル()だからかしら。」


「ああ、そうだろうな。」


色の海を眺めている中で気付いたことをルシアが呟けば、横で王子が頷いた。

そう、確かに色鮮やかではあるのだが、その半分くらいは見事に原色の緑色であるのが目に付いたのである。


イストリアでも結婚式のドレスや社交会デビューのドレスが白色等、王色、国色と色が何かを指していたりするが、そういった他の混ぜて扱ってはいけないような色以外の色では普段扱う色に比較的制限はない。

しかし、ここでは緑色が圧倒的比率を占めているのを見て、やはり異国文化は面白いな、とルシアは思うのだった。


「街並みもまた随分と違って...昔、シャーが言っていたことを思い出したわ。」


今度は色ではなく、形状に目を向けてルシアは言った。

昔、イストリアに来たシャーハンシャーはイストリアの街並みを見て面白いと言っていた。

確かにこうも違うのなら興味深く思うのも無理はない。


ルシアがそう思った建物の方は色こそ砂色一色なものの、一個一個の家が立ち並ぶのではなく、壁と壁が繋がっていたりと長屋のような造りが複雑に絡み合っているようだった。

中には道を挟んで向こう岸の建物と2階部分が橋の要領で繋がり、下はアーチ状になっていたりと、まるで立体の迷路のような雰囲気だ。

そして、それら全てを一段と高い壁がぐるりと取り囲んでいるのである。

...迷ったら一巻の終わり感があるなぁ。


「まるで城塞(じょうさい)都市ね。」


「そうだな、アルクスとはまた違う形状だが。」


城砦(じょうさい)と言えばアルクスだが、あそこは城が最東に南北に伸びて、それそのものが壁の役割をし、その西側に街が広がっている形状であると聞いている。

それに対してここの背の高い壁が街を囲んでいる形状はまさに城塞都市といった風体だった。

これで街の中央に城があれば完璧だが、タクリードの王都はここと同じ造りだろうか?


「まずは宿屋に行くか。」


「ああ、案内人の方を待たせているものね。」


王子の言葉にルシアは頷いた。

まずは宿屋である。

色々と荷物を置きたいし、何より案内人がそこで待っている手筈となっていた。


タクリードは広過ぎる上に砂漠地は慣れていないと道を見失いやすいというシャーハンシャーの配慮である。

勿論、このアフダル・アル・サーニの街へ来るのにも案内人が付いていた。

本来は今から行く宿屋で待つ人物が国境から案内してくれる予定だったのだが都合が合わず、代役を立て、ここでの合流となったのである。


シャーハンシャーの手紙(いわ)く、これから会うその人物はシャーハンシャーにとって信頼のおける部下らしい。

ここまでの旅程は早くも遅くもなかったものの、待たせて過ぎるのも悪い。


「では、行きましょうか。」


「ああ。」


ルシアが言えば、王子は頷いてルシアへと手を差し出した。

ルシアはそれに手を重ねながら色とりどりの中へと足を踏み入れたのであった。


さてさて、街には無事辿り着きましたね。

この街では何があるかなー。

ルシア、何か忘れてるんじゃないかなー?(すっ呆け)


それはそうと、いつの間にかちゃっかり連載開始から10ヶ月経ってましたね。

今日、気付いた作者でした。

引き続き、今後ともよろしくお願いいたします。

それでは、次回の投稿をお楽しみに!


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