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273.加勢、向かうは青


アクィラ、ポルタ・ポルトの港。

その丁度、海との境界線ギリギリに。

一つの影が落下した。

少し重たい音が響く。

そうして、着地したそれは少女を(かか)える青年だった。


(しば)しの間、足の(しび)れを逃がすようにしゃがみ込んだ態勢だった青年がゆっくりと立ち上がる。


「ノックス、ありがとう。助かったわ。」


「...いえ、ルシア様がご無事で良かったです、けど。」



少女――ルシアは横抱きにされたまま、いつもより近い位置にある己れの護衛へ礼を告げる。

礼を告げられた青年――ノックスは咄嗟に掴んだことでバランスの悪いルシアを抱え直しながら、元気な様子のルシアに視線を向けてほっとしたような息を吐いた。


ノックスはルシアをゆっくりと地面へと降ろしつつ、返答に続けて言葉を紡ごうとした。

その声音や表情は心無しか、困り顔。


「俺が――。」


「お嬢!!あんた、勢いで飛び降りるの、そろそろいい加減にしましょ!?」


一度切って再度、紡ごうとしたノックスの言葉は頭上からの大きな声に掻き消された。

二人して見上げれば、甲板の手摺りを越えてしまいそうなほど乗り出して、珍しく余裕綽々の顔がほんの少しだけ崩れかかったイオンの姿が目に入った。


「......そうですよ、俺が間に合わなかったらどうするつもりだったんですか。」


「あら、間に合ったでしょ?」


ついつい、ルシアとノックスは目を見合わせる。

間を置いて、ノックスが仕切り直したようにイオンに同意した。

しかし、ルシアはのほほんとわざとらしく首を(かし)げてみせたのだった。

すると、上から横から長いため息が落ちた。


「そうですけども!」


「ノックスなら間に合うと思ったから飛び降りたのだし、そうでなくとも誰かがどうにかしてくれたでしょ?私の護衛は優秀だもの、ねぇ?」


ルシアは少しからかうようにそう言った。

空中で抱えてくれたノックスは勿論、見上げればイオンは今にも飛び出しても可笑しくない態勢だったし、クストディオは鎖付きの武器を手に持っていた。

きっと、ロープ代わりに使うつもりだったのだろう。


「......分かりましたよ、後で殿下にご報告させていただきますので。」


「う...分かったわ。イオン、クスト。」


「はいはい。」


「ん。」


全てを見透かした上で言うルシアに何を言っても無駄だと早々にイオンは肩を落とした。

しかし到底、このまま流して堪るか、とでも言うように余計な一言を追加してくれた。

若干、日頃から振り回されていることへの恨みというか、私怨のようなものが混じっているようにも思うのは気のせいだと思う、うん。


ルシアは自覚がある分、少し嫌そうに顔を(ひそ)めながらも受け入れて(うなず)いた。

結局、いつもの説教コースは避けては通れないらしい。

いやね、今回、既に確定だっただろうからここで無茶せずとも確定コースだったんんだけども。


そんなことを心境で巡らせながらもルシアは上に居る二人に声をかけた。

元より飛び降りたのは時間を()いたから。

要はここで長く言い訳も小言も聞く時間も惜しい。

心境すらも二の次でルシアは次の行動に移ろうとしていた。


その意図をしっかりとイオンとクストディオは汲み取った。

イオンは(わず)かに項垂(うなだ)れたように、クストディオはいつもの表情であっさりと手摺りを乗り越えた。

二つの影がルシアの両脇で大きくなって、着地する。


「おい......っ!?」


上から焦ったようなマーレの声とドタドタという大股の足音が聞こえた。

しかし、ルシアは既に視線を別に映していた。


「港の入口から少し右前。――分かる?」


「ああ、はい。じゃ、行きますんでお嬢、しっかり掴まっててくださいよ。」


ルシアは一ヵ所だけに焦点を当てて、簡潔に述べた。

それぞれ色味が全く違う三対の瞳が追随するように伸ばされる。

見えたのは幾つかの色の中で一際輝いているような青。


イオンが代表するかのように口を開いて、ルシアにすっと歩み寄り、いとも容易(たやす)く抱え上げた。

ここまで来て、誰もルシアをここに置いて行こうと言い出す者は居なかった。

自然にルシアの存在を組み込んで次の動きを脳内に叩き込んでいく。


ノックスが腰に()いた(さや)から剣を抜く。

クストディオはいつものナイフの持ち替えていた。


「――行け!」


三人の用意が整ったのを見てルシアは鋭く言った。

それを合図に素早く三つの影が混戦する最中へ飛び込んでいったのだった。


はい、休載明けですね。

完全に私情での休載が長らく短いペースで続いていますこと、読者の皆様におかれましてはお付き合いくださりありがとうございます。


どうでしたでしょうか?

と言っても、全く場面は動いていないんですけどね!(泣)


それにしても、ルシア。

ほんと、よく落下だの飛び降りるだのやりますね。

どっかの某ゲームの主人公かよ。

作者としても、ほぼほぼ無意識でこうなってるんですけど、やっぱり何処かで影響受けてたり...?


あと、少しご報告を日があるかはまだ決まっていないのですが、場合によっては近日と同じように休載の可能性がありますのでご了承ください。


そして、来月の頭ですね。

7月1日から5日まではラストスパートということでお休みさせていただきたいと考えております。

長期休載はしないと言った手前、あまり連日の休載は避けたいのですが、今回におきましてはご理解いただけると幸いです。


それさえ抜ければ、また通常通りの投稿に戻れると思いますので、今後も応援いただけると嬉しいです。


いつも、コメント等ありがとうございます。

作品についてだけでなく、私の体調や勉強に関しても温かいお言葉をくださり、感謝でいっぱいです。

こんな作者ですが、今後もどうぞ、よろしくお願い致します。


では、これにて。

次回の投稿をお楽しみに!


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