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167.これから起きること


「...アクィラは商人が(つど)う港街の国。」


「?はい、その通りです。それがどうかしましたか?」


唐突なルシアの言葉にエドゥアルドは今更何を?と首を(かし)げながら答える。


「当然、他国との交流も盛んで他大陸との交易もあると(うかが)っておりますわ。」


「?ええ。」


怪訝な顔をしながらもエドゥアルドはルシアの言葉に相槌を打つ。


アクィラは最も多くの国と交流を持つ国だ。

だからこそ、街には様々な国の者が行き交う。

それこそ今日、ルシアがほんの少しの間目を通した中にも他大陸の人間も居たことだろう。


「他大陸、といえば、ヘアンでしょうか。」


「ああ丁度、アクィラから南方に位置する海岸の国ですね。はい、彼の国とは古くから交易を行っておりますよ。ご興味が?」


ルシアが幾つかの候補の中から思い付いた国名をただ口にしたように言えば、エドゥアルドは微笑んで彼の国について語った。


「彼の国は真珠の名産地ですからね、カリストが到着すればご一緒にご覧なられるようにヘアン産の真珠を扱う店へご案内致しますよ。」


ルシアたちの居る大陸からそのまま南方へ海を越えた先にある大陸。

その大陸の北に位置し、一番大きい国がヘアンだ。

エドゥアルドの言う通り、彼の国の真珠は兎に角美しく、大陸外からも求められる一品だという。

かく言う私もあの王妃が身に付けていたことがあるので素晴らしい品だと知っている。


「...エディ様、見知った相手に愛想笑いは逆効果でしてよ。」


「......。」


ルシアは目を(すが)めてエドゥアルドを見据えた。

すん、となけなしの表情さえ削り落とせば、人形めいた雰囲気がルシアを包む。

ただ美しい無表情というのは生気を感じさせぬが故に、時に恐ろしささえ人に与える。

そして、ルシアが今、浮かべている表情はそういった(たぐ)いのものだった。

それを受けて、一国の王子であるが故にポーカーフェイスが身に付いているはずのエドゥアルドが珍しく表情を作れずに押し黙った。


「その様子では何か、は掴んでいると受け取りますわよ。」


「貴女がどうしてそれを......?」


既に取り(つくろ)えないと判断したのか、エドゥアルドは真剣な表情でルシアに問うた。

ルシアは一瞬、困ったように顔を(ゆが)ませたが、すぐに真剣な表情を浮かべてエドゥアルドに対峙する。


「わたくしはわたくしの伝手でこのことを知りましたわ。現在も国際問題に繋がりかねないと承知の上で勝手ながらわたくしの手の者に探らせております。」


今回、ルシアは自分の護衛三名を連れてアクィラへと訪れているのだが、実は出立時に王子からニキティウスを借り受けていた。

理由は一人は別行動で調査に専念させる予定だったから。


クストディオもイオンも密偵の仕事が出来るが、護衛込みだと大変な部分がどうしてもある。

ノックスだけにずっと張り付いてもらう訳にはいかないし。

となれば、クストディオに調査をイオンには護衛メインでクストディオの補助という形に納まるのだが。

しかし、他国の王宮の敷地内とはいえ、可能性は低いが王妃が暗殺者を差し向けないとは限らない。


そんな状況で護衛を一人でも離すことに王子からも護衛たちからも許可が下りる訳がなく。

結果として、王子の密偵であるニキティウスを借りることで落ち着いた訳だ。


南方大陸最大の海岸の国ヘアン。

何もルシアは彼の国の真珠が欲しくて話題にしたのではない。

ルシアが彼の国の名を出したのは(ひとえ)に。


「現在、アクィラにヘアンの工作員が侵入しており、近々何かを起こすつもりである。」


「!!」


何処の国だってスパイは(まぎ)れているものだ。

最早、それは暗黙の了解のようなもの。

それはアクィラも同じだが、アクィラには多くの他国人が居る。

紛れるのはより容易(たやす)いだろう。


だからこそ、アクィラはより注意を払っているはずだし、火種の早期発見も処理も手慣れているはずだ。

けれど、今回は。


「......今回のことはいつもの小さな火種とは違いますわ。」


「何故、そう言い切るのですか。」


ルシアがそう告げてエドゥアルドを見やれば、彼は真剣な表情でルシアの持つ情報と知識を催促する。

その様子にルシアはエドゥアルドも今件にいつもと違う違和感を覚えているのだと気付いた。

ルシアの言葉を笑い飛ばさず、一向の余地ありということはそういうことだ。


「...まだ、裏を取ってもらっている最中ですので多くはお伝え出来ませんが、確信持って言えるのは早々に片を付けねば必ず、この地が戦場となるということですわ。」


「......。」


とうとうエドゥアルドは眉を(ひそ)めた。

現在、違和感はあれど戦争になるほどの緊迫した状況ではない。

多少、大事になれど、まさかそうそう戦争という規模にはならないとエドゥアルドは認識している。

だから、はっきりと言い切るルシアが何を決定打にそう告げるのか、エドゥアルドは掴み損ねた。


「...現状からは全く予想の付かぬ大袈裟なことだとお思いでしょう。けれど、わたくしたちは最悪を想定し考えを巡らせねばならぬ立場ですわ。そして、わたくしの思い浮かべる最悪とはヘアンが宣戦布告し、アクィラが戦場となること。」


ルシアは言葉を紡ぐ。

強き意志を持って。


「エディ様、わたくしはそれを阻止する為にこの地へ参ったのです。」


ルシアは真っ直ぐに一時たりともエドゥアルドから目を逸らさずに告げた。

ルシアの本気がエドゥアルドを射貫いたのだった。


うーん、暫くずっとルシアとエドゥアルドの二人だけが話す会話回でしたね。

つ、次は護衛たち他のキャラクターの出番があるはず...



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