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14.第三王子


あー、一回のみで済んでいるなんて考えなければ良かった。

あれは完全にフラグになるやつだ、気付かなかった私は馬鹿だ。

そう、ルシアは数日前の自分に悪態を吐いた。


そんなルシアは今、絶賛、図書館にて令嬢たちから嫌がらせパート2を受けているところである。

残念ながら、イオンも居なければ王子も彼の仲間も居ない状況で、であった。

パート1以降、実は王子が遅れる時は必ず誰かが先に来て、ルシアに付いていてくれていたのだが、今日付いていたフォティアは途中で呼び出しを喰らってしまったのだ。


それでも離れるのを忌避(きひ)して、行けないとフォティアは断った。

それを図書館から一歩も出ないからと言って、追い出したのは他でもないルシアであった。

しくじった、今日に限って彼女たちが仕事で図書館に本を取りに来ているなんて。

しかし、この事態を引き起こしたのは私で全面的に悪いので甘んじて雑談に付き合うかー。

ルシアは令嬢たちを(あお)ってしまわないように内心でため息を吐いたのだった。


「君たち、図書館は静かにするところだよ」


「...!?申し訳ありません!」


そう考えて、ルシアが反撃せずにいると背後から愛らしい子供の声で注意が飛んできた。

ルシアが誰の声かと振り向く前に令嬢たちはあからさまに焦りを含んだ表情をして駆け去っていく。

その際、ルシアにぶつかるのを忘れない辺り、徐々に彼女たちは貴族社会の闇に染まっていっているようである。

ルシアがよろめいた体を立て直していると先程の声がまた響いた。


「大丈夫ですか」


「ええ、大丈夫で...」


覗き込んできた顔を見て、ルシアは驚きに言葉を途切れさせた。

そこに居たのは金髪に水色の瞳の男の子。


「...怪我一つありませんからご心配ございませんわ。気にかけていただき、ありがとうございますレジェス殿下」


そう、その男の子はこの国の第三王子レジェスだった。

レジェス・ガラニス。

ルシアの一つ年下であの王妃の実の息子。

つまり相手方の旗頭であり、王子の異母弟である。

といっても、彼自身が敵かといえば否だ。

作中でも現実でも二人の王子たちは仲が良いのである。


現在、イストリアには二人の王子と一人の王女が居る。

第一王子である王子ともレジェス王子とも異腹の第二王子は幼児の時に死亡しており、王妃の実子であるレジェス王子の同母姉ガブリエラ王女は王子たちとは距離があった。

その結果なのか、元より気の合う兄弟だったのか、それがどちらか分からないがレジェス王子と王子は仲が良かった。

そりゃあ、令嬢たちをああも簡単に退散させられる幼い男の子なんて彼しか居ないじゃない。

何で気付かないよ、私!


「大丈夫なら良かった。ねぇ、貴女は兄上の婚約者のルシア嬢でしょう?僕も話を聞いていて会ってみたかったんだ」


レジェス王子は(まぶ)しいくらいの無垢な笑顔をルシアに向けたのだった。



ーーーーー


「...どういう状況だ、これは」


「あら、殿下。いつも以上に時間がおかかりになりましたわね」


王子が図書館に着いて、最初に見たのは笑顔を振りまく弟殿下と彼の向かいで微笑む婚約者、その背後で申し訳なさそうな顔で立つ自分の従者だった。


「先程、レジェス殿下とお会い致しまして。お話をしていたのですわ」


「ルシア姉上は兄上と一緒で、何でも知っていてお話し上手です!」


「っ、そうか...」


あー、可愛い。

普段、周りに居るメンツは全員、実年齢よりマセているのでこの無邪気さが(いや)しだ。


「申し訳ありません、私が離れていた間にお会いになられたようでして」


「いや、良い」


王子は本当に申し訳なさそうに告げるフォティアに首を振ってからルシアたちの方へと距離を詰めた。


「兄上も来たので僕は戻りますね。ルシア姉上、またお話ししてくれますか?」


「ええ。」


席を立つレジェス王子ににこやかに手を振る。

そうして図書館を出ていくまで見送ると、空いたばかりの向かいの席へ王子が難しそうな顔で座った。


「とても可愛いらしいお方ですわね」


「...ああ、(した)ってくれる良い弟だ」


即答する王子に口角を上げながら、ルシアは普段のように本を取り出さずに、先程までレジェス王子から聞いていた王子のエピソードについて聞くのだった。


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