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120.その文字は


「......予想よりずっと人が集まっているのではない?」


「そりゃあ、ゲリールの民にとって石碑の内容ほど興味を惹かれるものはないからね。」


周りを見渡したルシアが思わず溢した言葉に横に並んでいたグウェナエルが応えた。

現在、時間は昼を過ぎた頃。

(おさ)はルシアが提示した協力か、解読かに対して解読を取った。


そうして、ルシアたちは協力してもらう代わりに解読することになったのだった。

とはいえ、嫌がる人間まで連れてはいけない。

ルシアは全員を連れていくとは言ったが、それは人手が欲しいということなので無理強いをするつもりはなかった。

戦場はそれ相応の覚悟が要る場所。

そこへ不安感を(あお)る可能性のある人間をいくら特殊な力があるといっても連れてはいけないしね。


そのあたりの条件を詰める為にあの後話し合いをし、協力の件もあるので解読をすることを集落の人間全てに告知した。

結果、条件を理解し渋々でも協力してくれる人間を20人以上出してもらうことで交渉成立となった。


そしてルシアは今、多くのゲリールの民に囲まれた状態で石碑の前に立っていた。

隣にはイオンとグウェナエル。

少し離れた位置にフィデールと共にノックスとノーチェ、クストディオが居る。


護衛メンツには渋られたけど余所者が、それも見た目から武術に()けていそうな者たちがまとまっているのは集落の人たちに圧迫感を与えかねないのでルシアが指示を出して離れてもらった。


ルシアはもう一度、周りを見渡す。

交渉をして回った為、集落に住む人たちの顔は分かる。

あれ、これは子供から大人、老人までもしかしなくとも全員居るんじゃなかろうか。

元より不正なんてする予定はないけれど、ここまで人に囲まれて興味津々な顔されると背筋が伸びるな。

多くの人に囲まれることと見られていることには然程頓着していないルシアである。


「お嬢さんや、読めそうかの?」


「ええ、勿論。あれはよく知っているもの。」


横合いからかけられた声にルシアは振り向く。

人壁を割って現れたのは前の長である。

うん、前に来た時に文字の損傷がないことは確認している。


「...では、御客人。解読を頼むぞ。」


石碑の横に立っていた長が促した。

ルシアは軽やかに(うなず)いて一歩だけ石碑へ近付いた。

そこは手を伸ばしても急に動いたとしてもグウェナエルがルシアが石碑へ触れる前に止めることが出来る絶妙な位置である。


「......もっと前でも良いけど。」


「いいえ、大丈夫よ。ここからでも充分読めるわ。...では、読んでいくわね。」


グウェナエルが促すがルシアは首を横に振った。

確かにルシアが何かしたところで石碑に傷はつかないだろう。

うん、野宿は出来るし弓を引いたこともあるけど基本的にひ弱なんだよなぁ私。

ルシアは様々な事を引き起こすイメージをよく持たれるが、現実は道具や協力者が居なければ結構出来ることは少ないのである。


さてと、解読だ。

とはいっても、本当に読むだけなんだけどね。

ルシアはさらっと石碑の全体を見た。

そこに書かれた文字をまじまじと見てふ、と笑う。

懐かしい。

それがルシアの感じた一番の感想だった。


ルシアは長たちの前で(そらん)じてみせたこれは間違いなく英語。

前世で共通語とされるほどの言語である。

つまりは初祖が作り出したこちらの世界の古語でも何でもなく。

前世で英語圏に住んでいたであろう人物がこちらへ転生したのがゲリールの初祖だったという訳だ。


いやー良かったよ。

私が海外旅行が趣味だったから英語は分かる。

日本じゃ義務教育期間に教える割には英語が出来る人間は多いとは言えないからね。

まあ、それも国内で日本語のみで充分生きていけるからなんだけど。


うん、大きな(わざわ)いなんてやっぱり転生者だから知ってた訳だ。

ということはゲリールの民の治癒魔法は地球の知識との融合かな?

......それにしても。


「せめて、活字体で書けよ。」


「お嬢?」


「ああ、何でもないのよ。」


イオンとグウェナエルに(いぶか)しげに覗き込まれてルシアは誤魔化した。

危ない、やっぱり口から出ちゃう時があるな。

でもさ。

ルシアはふい、ともう一度目線を戻す。


目の前にある石碑に刻まれている文字は確かに英語だ。

ただし筆記体である。

読めない訳じゃないから良いけど、何でわざわざ筆記体かなー。

どう考えても紙とペンじゃないんだから石に掘り込むなら活字体のがずっと楽だろうに。

そりゃあ、模様と言われる訳である。


「お待たせしてごめんなさいね。ええと、まずは『治す為に生きた人』。......。」


今は初祖たる人物が何を考えていたのかを想像する時間ではなく、この石碑を読む時間だ。

ようやく思考を追いやって石碑に意識をしっかりと向けたルシアはそれを語り出した。


最初の投稿から3ヶ月経ちました。

早いものですね。

お陰さまで120話です。

それでもまだまだ終わりは遠い...。

かなりの長編になるのでは?と前にも書きましたがほんとに長編だこれ(焦)。


ブックマーク340件‼

そんなに多くの人に読んでいただけるとは嬉しいやら恐ろしいやら。

これからも楽しく書いていきますので、皆様お付き合い下さると幸いです。

それではまた明日の投稿をお楽しみに!


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