108.再会したのは
「集落へ入る手前に小屋がある。今も息災なら知り合いがそこに居る。彼に話を通してから集落へ入ろう。」
「...まあ突然、知らない人間が入っていくより良いでしょうね。けれど、そのお知り合いは協力してくれるのかしら?」
イオンたちと合流した後にフィデールは自身がゲリールの民だということを含めて幾つかの話をしてくれた。
そして、集落の正確な位置を知っていると言って歩き始めたのだった。
現在、フィデールの後に続いて一刻ほど。
フィデール曰くもう目と鼻の先だそう。
「協力、はしてくれないかもしれないが追い出しはしない人だ。」
「...まあ元々、協力を求めてはいないけれど。」
それこそ、最初はルシアたちだけで目指してたんだし。
ルシアはフィデールの表情を斜め後ろから見上げた。
その表情は仏頂面といえば仏頂面で、今までとそう違いがないように見える。
しかし、とても真剣なのは見てとれた。
「ああ、あれだ。あれが小屋だ。」
フィデールが立ち止まった。
ルシアはその背から前を覗くように横へ身体を逸らした。
ルシアの視線の先にも一つの小屋が見えた。
それはボロボロという訳ではないが、年季の入ったというのが正しい、然程大きくない小屋だった。
集落の手前ということもあって見張り小屋のような役目のものなのかな?
ということは、もうそのすぐ向こうにゲリールの民の集落があるのか。
「...居ると良いが。」
「その方はどんな方なの?」
フィデールが息災ならばと言い回すのであれば、それなりに歳を重ねた人だろうか?
「皆は翁と呼んでいた老年の爺さんだ。私の直接の祖父ではないがよくしてもらった。まあ、集落の子供は皆、実の祖父のように慕っていた人だよ。」
「そうなのね。」
フィデールの瞳が少し柔らかくなったのを見て、ルシアはとても良い人なのだろうと感じた。
ルシアの相槌を受けたフィデールはそのまま小屋に近付き、扉を叩いた。
「はいはーい、誰......。」
「...!」
フィデールのノックを受けて小屋から出てきたのはフィデールの言う翁ではなく、20代前半のうら若い美女だった。
豊かなオレンジ色のロングヘアーは波うち、そのうちの一房が肩からすべり落ちていた。
そして、若葉のような黄緑色の瞳が驚いたように見開かれていた。
ああ、美女の瞳の色を少し濃くすればフィデールと色彩はそっくりだ。
ゲリールの民の特徴だったりするんだろうか。
ちら、と先程と同じようにフィデールの横から彼の表情を窺うと美女と同じく、驚きが顔に出ていた。
あ、知り合い?
「ちょ。」
「ちょ?」
最初に口を開いたのは美女だった。
しかし、そこから発せられたのは音として出ただけで単語にもなっておらず要領を得なかった。
なので、ルシアは美女と同じ音を発して首を傾げた。
それにも気が回らないといった風の美女はぷるぷると震えていたかと思えば、次の瞬間バッと効果音が付きそうなほど勢いよく振り向いた。
あ、美女の髪がフィデールの顔にダイレクトアタックしたんだけど。
フィデールはまともに目を直撃されたようで叫びはしないが顔を押さえて悶絶している。
大丈夫か...?とルシアがフィデールに声をかけようと顔を押さえているフィデールの腕に手をかけたところで美女が息を吸った音を聞いた。
え、なに。
なんか大きな声出そうとしてる?
侵入者扱いされると不味い、とルシアが美女に声をかけようと口を開いたがそこから何か音が発せられることはなかった。
何故なら、それより速く美女が大きな声で放ったのである。
「ちょ、ちょっと翁!翁ってば、フィーちゃんが、フィーちゃんがお嫁さん連れて帰ってきたよ!!!!」
え!?
ちょっと待って。
フィーちゃんっていうのは何か?
ここに居る美女の髪ダイレクトアタックに未だ涙目のフィデールのこと?
お、お嫁さんって...?
え゛、ここに居る美女以外の女性は私だけだよね。
私?私なのか...!?
「......ティーヌ姉さん、落ち着いてくれ。彼女とはそういう関係ではない。」
盛大に思考がバグりかけたルシアを余所に、やっと復帰したフィデールが美女の肩を掴まえて頭の痛そうな表情で告げたのだった。
※まず最初に、更新がいつもより一時間遅れまして申し訳ありませんでした!!
いつも0時に読んでくださる方にはしっかりと連絡もなく、大変迷惑おかけしました。
じ、実はですね......
今日は忘年会兼同窓会でして。
予定より思いの外、飲んで食べて帰宅時間が0時の10分前という。
そうなることも踏まえて昼過ぎに書き始めてはいたのですが、こんな時に限っていつもより筆がのらないという状況に陥り、気が付けば家を出る時間という結果でございました。
という訳でして、遅れましたがなんとか出せた今話です。
最後に、もう一回遅れまして申し訳ありませんでした。
いつも読んでくださる皆さんありがとうございます。
引き続き読んで、応援していただけると幸いです。
もしかしたら、年末年始は同じようなことがあるかもしれませんが出来るだけないように、もしくは事前に報告するように致しますので、もしあったとしたら、「ああ、作者また飲んでんな。」と思って流していただけると嬉しいです。
では、また次話の投稿をお楽しみに!
皆さんも飲みすぎには注意してくださいね。




