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「さむーい…」
駅から出て、私は、今日何度目かの言葉を呟く。
「寒いねー。」
あ、先輩が言った途端、何だか急に寒くなくなった。すごい! 魔法!? しかし、残念ながら剣も魔法も転生も存在しない甘くない世界線なのだった。
歩きながら先輩は話しはじめる。
「レンは、よく君の話をしていた。」
もし、他にレンがアイと呼ぶ子がいないのだとすればね、と付け足すように言う。クラスメイトとか知り合いにアイちゃんは結構いた気がする…。が
「変なやつで、損な性格をしていると。ドンくさくて、だれかの頼みを断れない性格で、」
うう、よく言われてた言葉シリーズだ…。「君の悪いところばっかり口では言っていたけれど、語るときの表情はとても優しくて、見たことないくらい楽しそうだった…」
私の悪口が…。
「私、小さい頃から嫌われていたのでしょうか。」
「いいや? むしろ逆だと思うよ。レンは、そのアイという子のことが好きなんだと、僕には思えた。他のヤツが冷やかしてそう聞いたことがあった。」懐かしそうな表情をしている。「その時はいつも、当然のように肯定していた。照れたり恥ずかしそうな感じもなく。同時に、君はどう思っているのだろうと、気にしているようだった。だれかの影響や、断れなくって、一緒にいるのではないか、と。」
それは違う、と思った。でも一因ではあるのかな、と少しだけ思った。
「それから、しばらく時間が合わなかったりして、話す機会があまりなくなった。」
お互い進学とか受験とか色々あったからね。
今までのは、小学生くらいの話だったか… 先輩の話が本当だとしたら、レンもやっぱり好きで、いてくれたのだろうか…。だとすると何でこうなっちゃったんだろう…。
「君たちが高校に入ってから、レンとだいぶ久しぶりに会った。色々話をして、君の話題にもなって、そしたら」
「そしたら!」
思わず、続きを促してしまう。ちょっと困った感じで「そしたら、レンは”振られた”と言っていた。」
「えっ」完全に立ち止まってしまった。
「嘘だ、振られたのは私だもん…だって…」 どういうこと。どういうことなんだろう。
「きらいだと、好きではないと言われたのかな。」
私は頷いて、
「確かに、お前には俺は必要ないと… あれ…」
レンにとって私が不要なのではなく、私がレンを不要だと思い込んでいるということ…? 「つまり、レンは、私がレンのことをきらいだって誤解しているってこと…?」
先輩も頷く。
「そういうことみたいだね。」
そんなこと言ったことないのに……。
「とりあえず、道路は端に寄ろうか」
ゆっくりと暖かい手に導かれる。あまり通りが少ない道路で良かったと思った。
のに! そんなタイミングで絶対に出会いたくない人には会ってしまうのだった。




