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05 過去の清算 前編

04 突入!の続きを先に書くつもりでしたが、こちらが出来てしまったので投稿させて頂きます。

この順番でも問題ありませんが、後からこの前に差し込むかもしれません。


5時間前

「君への不信任が募っている。これは全体の認識だ。」


プレゼンターを見下ろすように円状に囲われ、外縁に連れてせり上って配置された聴衆者達の座る座席群、中世の闘技場コロッセオを連想させる。

その中で話し手と向かい合う最上段に腰を置く者、ベスク・ペンネンス、一見して分かる通りこの議会の議長だ。

比較的早く科学者として成果を出すも、ここ十数年は政界、特に国防派に対してのスポークスマン的な位置付けでの活動を増やし、現在ではそちらの人脈と共に世間の悪評も十分に蓄えている人物だ。


「君が貴社の代表として、この議会に在籍して1年足らずだが、どうも貴社のこの議会での在り方が前任の者が率いていた頃とは変わったように思う。

無論、ネガティブな意味でだが。」


前回の定期議会の時と比べると多少落ち着いた口調だが、相変わらず棘がある。

恐らく今回で自分を除名にする策略でも練ってきたのだろう、などと瀬野は悠長に、一人会場の中心でぽつりと立ったまま、議長を見上げることに疲れ前方に意思の無い視線を向けている。

瀬野秀誠、二年前、其節24歳にして彼の所属する日本王手の民間研究開発法人、ゲノムインフォマティクス・ディベロップメントの主任兼最高経営責任者の地位を勝ち取るや否や、職員の多数解雇並びに研究開発活動の大幅機械化を実行した人物として知られる。

生産でなく開発を中心とした企業でありながら、初めて大幅な自動化を成し遂げたとして、その界では一時話題となるが、取引は少数の外国系企業に限られ、広報活動を行わない経営方針から、国内での認知度は高くない。

増して、瀬野の素顔を知る者は更に限られる。

年齢より更に大人気無い印象は、白色人種の混じった血と多少の低身長からくるものであろう。

髪の色素も薄いのは、血統だけではなく、長期的に服用している薬剤の影響もあるが、先述のような顔立ちのおかげで、アジア人特有の染髪時の違和感は抱きにくい。

目まで届かんとする前髪と吹けば飛びそうな体格をもって中性的な印象と比喩しずらい根暗な印象を見る者に与える。

覇気の無い目で会場を見回すと、議長周辺の顔ぶれが前回とは幾分変わったように思う。

それらの視線から察するに、議長と志を同じくする者に強引にすげ替えられたようである。

相変わらずの呆けた態度の瀬野に多少語尾を荒げつつベスクが続ける。


「事実関係は不明だが、研究成果の公表やそれ準ずる活動がここ半年ほど見られない、また公の機関に属する我々の口からこんな事を言われるのは癪かもしれんが、またしても無理な職員の大量解雇が行われたそうじゃないか。

その上、事実であれば我らを侮辱した遺憾な行為だが、民間軍事会社との癒着も囁かれている。」


薄暗い室内に天面からの照明でベスクの脂肪を蓄えたふてぶてしい顔面がその性を一層強くしている。下のホールで一人立つ瀬野に向かって嘲笑でその顔をさらに歪ませながら続ける。


「これは在籍している者ならば言わずもがなだが、この議会に所属する組織、法人企業は、連邦の実行機関として、研究資金を初めとした、必要資源、研究成果の共有、特権的地位を公平に付与されている。

にもかかわらず、社の経営すら危ぶまれている君の代表する企業は、この議会にはあるまじき存在だ。

出来の悪い人員を踏みつけて利益と地位を得るのが君の手法らしいが、この場合は立場が悪かったようだ。

潔い決断をおすすめするが、何か意見はあるかね。」


話が終わる頃にはさすがに皮肉たっぷりな口調に代わって身を乗り出しそうな勢いである。

周りの者もベスクの高揚ぶりに少し狼狽しつつも、トップの意見には賛同の姿勢を示している。それ以外の構成員は、ベスク目に余る圧制の経験と、並べられた咎め立ての間で立ち位置を掴み兼ねているようである。

対照的な二人の間でざわつく会場で瀬野が久しく口を開いた。

読んで頂きありがとうございました。

こんな文章に時間を頂けてただただ感謝です!

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