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04 突入!

そんな彼女の天真爛漫な行動も世界に向けて放映されている。

それは現場の外に飛ぶ撮影ドローンの数を見れば彼女とこの事件の注目度は測り知れることだろう。

そしてそんなリサの握手にも快く答え、短い賛辞を述べるとすぐに状況やテロリストの要求を彼女に説明する部隊員。

現場はというと、国籍不明の中装武装集団10人余りが伝染病を主に研究しているコリンズ国立研究所内で職員を人質に取って篭っているということで、彼らの要求は保管されていた天然痘やエボラといった計20種にものぼる伝染病の病原体を国外へ持ち出す事であり、合わせてその為に使う車の準備と国外逃亡の為の船の入港をも求めている。

リサもバイザーに映る翻訳を見ながら、先のパンデミックが世界中の人々に与えた恐怖心を利用する腹積りもあるのだろうなどと、内心、柄にもなく瀬野のように考察しているな、と自笑していた。

状況説明を終えるとおもむろに部隊員がマイクを持ち出して、それをリサに差し出してきた。

リサの頭の中では、その場の雰囲気から実力行使の制圧をするとばかり思っていたが、当然、まず彼女の存在を知らせて出方を見るというのが定石だろう、と考えを改め、それを受け取り、犯人達の立て篭もる施設正面に向き直る。

しかし、意気込んだはいいが、こういう時の常套句を外人相手に何と言えば良いか全く頭に浮かんでこない。

数秒間頭の中で海外ドラマや映画のシーンを目まぐるしく手繰り寄せるが、その全てのシーンが吹き替えだったことに落胆し、瀬野は何でこんな時に限って通話してこないんだと無性に腹が立ち、しかしまず、後ろの部隊員達を振り返ると、彼らを含め、その後ろの警察官達、更には撮影用ドローンまでからも向けられた張り詰めた熱い視線を確認することしかできなかった。

諦めてしずしずと向き直る。

踏ん切りを付けて大音量で叫んだ。

「Give Up aud Go Home!!!」

建物内部まで響く大音量スピーカーで発せられた声が建物に跳ね返り、周囲に響き渡る。

その音が反響してしばらく反響して無意味に辺りの空気を振動させる。

それが鳴り止んでも静まり返った現場。リサは、振り返ることが出来ず、直立不動で前方を見つめている。

世界の注目する現場で、ただ悪ふざけしているとも取られかねない発言だが、リサにとっては自身の語彙力を如何なく発揮した結果だったのだ。

そんな気まずい静寂をリサの持ったマイクに繋がったラップトップの犯人から発せられた音声が破った。

「Fuck you,bitch!」

それだけ言い放って通話は切れてしまった。

リサはそれを聞くと、無言でバイザーを操作し通話を立ち上げた。

「おい瀬野、見てただろ。私も手を尽くしたが如何ともしがたい。もう突入しか手はない。」

「いや、手を尽くしたって君、大声でgive up go homeって言っただけだけでしょ。」

「・・・・・・」

「リサ、本音はどうしたいんだい?」

「今すぐ帰りたい。こんな恥ずかしい思いはいつ以来だ⁉︎ていうか今日は何か嫌な気がしてたんだよ、何十人の外人に見られながら、着陸失敗するわ、それでも舐められまいとしてデカい奴演じてたら、急に一言求められて、テンパって叫んだのがあれだよ!ていうか、そこはお前も気を利かせて耳打ちするとかないのか⁉︎英語できないの知ってんだろ⁉︎」

「いや、映像にも少しタイムラグがあるからそんなうまいこといかないよ・・・」

「はあ。そんなことはもうどうでもいい、忘れた忘れた。もう外人ばっかの国で疲れたよ、私は。帰ってあの映画の続きでも見ようぜ。んじゃ、改めて突入の許可を願うぜCEOさんよ。」

「僕はいつだって君の決定に従うよ、広報担当部長。君の能力を世界に見せてやってくれ。君は大丈夫かい?銃を持った敵は初めてだろ。」

「おいおい、私を作ったのは世界一のマッドサイエンティストだぞ?おつむは置いといて私はその最高傑作だ、信用しろよ。お互いを。」

リサは、知らぬ間に彼女に向けて車のボンネットに並べて準備されていたライフルとハンドガンに目を向け、その内のハンドガンだけをおもむろに手に取って、その姿をなにを始める気だ?と不思議そうに見つめる部隊の方を振り返り、今度ばかりは、と胸を張って叫ぶ。

「突入する(break in)!」


読んで頂きありがとうございました。

こんな小説に時間を頂けてなにより感謝です!

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