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02 瀬野のという男

人間とは、生物、つまり数十万種の有機物の成す集合体の一系統である。


また、大脳半球の発達という哺乳類の特質を最も色濃く体現する種であり、さらにその中でも大脳皮質の発達が著しい。


そのためか、それらは時に、我ら人には他の生物には無く自身にはあるという心の存在を謳い、宗教や精神世界といったオカルトを繰り広げている。


しかし、それらは人の脳が他に比べて少しばかり複雑な機構を持つに過ぎず、解明されていないものに無理やり理由付けをしているようなものだ。


つまり、心などという存在は、人が人自身の身体構造を全て理解するに至っていない、といった自明な事実を忘れた個体の持つ、まやかしの認識に過ぎない。


あらゆる人体を隅々まで調べても、そのようなブラックボックスは出てこなかった。


前頭葉に機能障害を与えるとヒトの会話という能力を低下させ、大脳皮質への障害は知能低下、重症になると人格破壊に至る。


それ以前に幼児期のヒトは当然脳も発展途上なため、ヒトの本来持つ知能・感情・意思、一般的に精神活動と言われる機能が著しく低く、脳の成長によってそれらを獲得していく。


前例に示した脳障害はこれとは別の方向からのアプローチである。


これは、脳の発達=精神の発現の裏付けであり、よって小児は全備な脳を持たないために精神の機能も完全でない。


つまり、心や精神と言われるものは、高度な成長、複雑な発達を遂げた脳の持つ副次的な難解さ、に群衆が抱く畏敬にも似た理解不能から端緒をなすものでしかない。


これが、現代のバイオロジーを極めたと謳われる孤高の生物学者、瀬野秀誠の、人間という種、全体に対する認識だった。

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