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if√if  作者: 北口
【IF世界編】Fork Of The One
19/21

手を伸ばせーーーただ走れ


(じん)(じん)(おもい)(おもい)がぶつかった次の瞬間…彼、白くない仁の武器は真っ二つにされた。

切れた先から徐々に投影が姿形を抑えららなくなり、霧のように消えていく。


「おいおい、死ぬか?」


後方へ跳ぶ。

白い仁は追撃はしてこなかった。

投影を響き合わせた…壊した感触を噛み締めているらしい。

白い仁…(以降は灰と呼ぶ)は、最高速度には全く至っていない。

加減しているというよりも、そういう気分じゃない、という感じらしい。


強化を全開に。投影は壊されることを前提に、精製速度を重視。


再び迫り、剣と剣…投影同士がぶつかる。

アッパーカットのような仁の斬り上げは、上から振り下ろされた剣で叩きのめされる。

しかし…まるで壊されなどしなかったかのように、腕の速度を落とさずに、新たに投影した剣を灰の顔面へ。


…それが届くよりも速く、憤怒の剣が仁の腹へ突き刺さった。

仁の投影(想い)はその瞬間に立ち止まり、灰へは届かなかった。

灰は剣を引き抜きながらに仁に鋭い蹴りを見舞い、彼を吹き飛ばした。


それに付いた赤い血を…眺めても何か感じ入た様子は無い。

ただその、自分であって自分でない紅を見て、その奥にある何かを、彼は知ろうとしたが…そこへはまだ、届かない。


吹き飛ばされ、草原の上に倒れる。

腹に空いた穴は焼けるように熱く、そこから流れる血は、世界の緑を赤く染めた。


「…どう、して…視えないんだ」


…そう、『視えても反応ができなかった』わけじゃなく、見ることすら叶わなかったのだ。


「さぁな。そもそも『俺が来る』という事象が起きる世界は、ここの世界一個だけなんだろ。だから隣のifを見ようと、戦闘がそもそも起きていない」


…まぁたこの能力で解らないことが出てきた。


溜息をつく暇は無い。

杖を“何処か”から取り出し、起動させる。

天使を召喚。光が傷を包みこんだ。


その間にも立ち上がり、剣を投げつける。

灰の真紅の剣にそれがぶつかった瞬間に…それは光へ融けた。


「なっ…」


「投影は想いの力だ。そんな塵が触れたなら、その瞬間に負けて消えるのは当たり前だろ」


さも当然、と告げた灰は雷を足に宿す。


そして…傷の治りも悪かった。本来は瞬時に治るはずなのだが…1連の間で、漸く痛みが失せたぐらいだ。


「ちぃっ…!なら、俺の…今の最大の投影だ…!」


想いを溜める。

魔力を全開に、時間を掛けて、最大限の、ありったけを…!


…今までの思い出、貰ったもの。

…辛かった記憶、失ったもの。


色で言うなら銀。そして紺というより黒。現れたのは…フィーリアが使うようなナイフ一本。


「…。」


3度目の衝突。風が影と影を中心に巻き上がり、白と黒の髪を揺らす。

今度はなんとか壊れることはなかったが…筋力では灰の方が格段に上だ。


「なめっるなよ…!」


競り合い…やがて僅かにナイフにヒビが入る。

そして灰は力任せにナイフを押し返し、電光石火の速さで追い打ちへ。

剣を振るうと同時に背後に回り込み、仁の胴を真っ二つにするようになぎ払う。

その三つの動作は、ただの人間には同時に起こったかのようにさえ見える程の速さだった。


…避けれるはずがない。

仁の灰身滅智は弱まっている。そのくせ、相手を視れないときた。

正面に放たれた斬撃。それは奇跡的にナイフで防ぐことができた。しかしてヒビは深くなり、その“欠け”の数も増え…地面に落としただけで壊れるほどまでに。


そして背への一撃。

X字を描く真紅はまた、彼から紅を奪う。

その音速で振るわれた真紅の剣は軌跡を空間に残す。

…まるで、自分がここにいるということを主張するかのように。


斬られ、振り向くこともできず、そのまま地面に崩れ落ちる。

剣戟の最中も傍で棒立ちだった天使は、余程先ほどの治療に魔力を使ったのか、少しの治療を施して杖に帰ってしまった。


「…手ェ抜いてんのか。…なり変わるつもりはねぇが、ここまで雑魚なお前が…むかつく」


「っ…視れもしねぇ、灰身滅智も大して無い。どうしろっ…つうんだよ…」


右手に力を込め、体をなんとか起こす。

溜息をつきながら、仁は前に立つ灰に目線を上げた。

その瞬間になって漸く…迫る拳の存在に。

そしてそれとの距離が0になっていたことにも…もう遅いが、気がついた。


大きく振りかぶられた右ストレート、左腕を盾にするが、大きく後ろに吹き飛ばされ…それでもなんとか、体が浮かないように踏ん張り堪えた。


「…1度死ぬか?いくら殴ろうが灰に覚醒しないなら…殺した後に覚醒するか試してみてやる」


「冗談、きつい…な」


「…うぜぇよ、お前」


怒りの気が空気に触れ、仁に届く。

…思わず鳥肌が立った。

嫌な汗が背中を伝い、傷に染みる。

紅のオーラと雷が溢れ出て…何処からか、剣の持ち手から刀身へ、血が流れ伝っていた。


「いいぜ、来いよ。…俺はここに、命を賭けよう」


灰に向けて、鋭い目付きで彼は言い放つ。

そしてナイフを修繕…刃を伸ばし、手慣れたサイズへ。


決める…!


初めて、彼と彼の心の声が重なった。


今再び、投影(想い)投影(想い)がぶつかり合う。


金属に良く似た音が幾度もそこに響き渡る。

上。下。脇腹、ガード。腕を軽く掠った。斬り上げろ。蹴り。右脇腹を抉り取られた。剣を腕で受け流せ。


防戦一方にならないように全力で。

脳はその真紅の武器に対してのみ働く。


徐々に付けられていく傷から血が零れる。


…対して灰へ、仁の投影は届かない。


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