終わりの始まり
和男とのいけない関係をミクは楽しんでいた。
まだやっぱり和男を好きなわけではなかった。
どちらかと言えば元カレ大樹を引きずっていると認識していたくらいだ。
だけど、大樹とはうまくいっていなかった。何だかんだ友人関係が長かったから、お互い別れた後も時々連絡を取っていたけど、大樹のそっけない態度にミクは限界を感じ始めていた。
ミクはその頃ある商社の営業所で働いていた。
環境を変えたい一心で転職したその会社は、運悪く性格の悪い営業マンとたったの二人きり…同じビルの中でも年の近い人は居ず、営業マンはだいたい1日留守か居ても嫌味を言ったり、客と喧嘩したり。
話し相手は遠く離れた顔も知らない人ばっかりで、ミクはだんだんと孤独な気持ちになって行った…だけど仕事が辞めれるわけでもなく、だからと言ってできるようにもならず、毎日ミスをしては怒鳴られていて、営業マンの顔を見るのも嫌になっていった。
すごく疲れていたし、心の支えがなかった…。
毎日友達を誘ってはご飯を食べに行くものの気は晴れずに、通っていたジムも体がだるくなってやめた。
何もしたくない、誰とも話たくない、それでも何故か仕事をやめられなくて、ミクは病院に行くようになった。
そんな2月のある日、ずっとミクをシカトしていた大樹と久々に電話をした。
バレンタインデーにチョコを作ったので大樹にあげようと思ったから。
だけど大樹は冗談ぽく言った。
「チョコ作ったの!?お前俺の事大好きじゃん♪時間もガソリン代すらないから取りにいけんけどね☆」
…。
いつもの悪ふざけのセリフだったと思う。
だけど、何かが音を立てて崩れてく、大樹と出会って、色んな場面で助けてもらってずっと友達で、前の彼がいた時から、もうずっと前から特別だった彼が…
とても子供じみて見えた。
あー死んでくれ!!
心からそう思った。