おかしい流れ
和男とミクの家は時間にすると車で一時間。しかも、高速+有料道路を使った。
和男とは何度か電話で話していたけど、人見知りの和男はただミクの話に頷くだけ。だからミクのわがままで和男はミクの地元まで来る事になった。
和男はミクの家があまりに遠いので疲れきってしまった。しかも、人混みも嫌い、あてもなく移動するのも嫌い、そんな和男をどこに連れていくかも思いつかず、結局ドライブスルーして、公園で二人で食べた。
ミクは自分から呼び出しておいてさすがに申し訳ない気持ちになり、頑張って喋った。和男は本当にただ微笑んでいるだけなので、ミクは盛り上げようと必死。しかし、人見知りしないミクは。次第に和男に慣れていった。
自分の事を話たがらない和男もミクが話してくれると楽でいいと言ったので、その雰囲気がミクには心地いい物に感じた。
しばらく車で話しているうちにミクは和男に慣れて来た。
この頃のミクは、どこかいつも寂しくて、とにかく自分を甘やかしてくれる相手を探していたのかもしれない。そうでなければ密室に二人でいるせいなのか、ミクは和男に対して安心感を感じ始めた。
そして夜も更けてしまい、公園には誰もいなくなった。軽く雨も降って来て車のガラスが白く曇って来た。
外には時々車が通ったけど、二人に気づく人はいなかったと思う。
何だか勝手に安心してうとうとし始めたミクのお腹を和男が触っていた。
それからどちらともなく車の後部座席に移った。
和男の車は大きいので後部座席を倒すと二人でも寝そべる事ができた。
何となく和男の腕が当たったので頭を乗せていたら和男はそのままミクの頭を引き寄せた。
それからしばらく二人は黙ってそのままくっついていた。ただ、何故だか嫌な気が全くせず、その人肌にミクは安心感を抱いていた。和男だからなのかたまたまそういう気分だったのか…
そしてそのままキスをした。それから静かに二人は体を重ねた。
どちらとも拒否するわけでも、言葉を交わすでもない。それどころかこの展開…あえて言葉は出せなかったのかもしれない。
もちろん二人はお互いに好きなわけがない。それは解っていたから、何もきかなかった。
そして和男とミクのろくでもない関係が幕を開けた…。
もちろんこの時点では軽い気持ちだったのだが。