始まりはここから
いつの間にやら伝説をいくつもうんだ、上位タッグプレイヤーと呼ばれるようになっていた。
「僕としてはお姉ちゃん仲良くしてただけなのになぁ。」
そんな、ほのぼのとした姉弟のゲームライフが今幕お開ける。
ニヤニヤ
僕は今日発売のVRMMO[現実なんてぬる過ぎる]を手に取り、レジに着くまで、ずっとソワソワしていた。
会計が終わると、今までが嘘のように真顔になる。
若干の準備体操をしながら・・・
ウィーン
「ありがとうございました。」
と定員の挨拶を受け流し・・・
ダッシュ!!
耳に風切り音が聞こえてきそうな勢いで、全力疾走。
引きちぎる勢いでドアを開ける・・・
「もう、お・そ・いー!」
そこには頬を膨らませ、腰に手を当て前のめりに立つ姉が立っていた。
「はぁ、はぁ、・・・っん、これでも、はぁ、全力疾走だ!」
息を整えながら、パッケージを突き出す。
「はぁ~ん、待ってましたよ~、こ・の・日・を!」
姉が目を子供のようにキラキラさせながら、俺の手を握る。
「///ちょっ、ねぇちゃ~・・ぁぁぁあああ!!」
姉の手の感触に顔が熱くなる。
しかし、次の瞬間、体が今にも宙に浮きそうな勢いで引っ張られ、階段を駆け上がる。
僕の部屋の前まで来ると、握っていた手がいっそう強く握られる。
「じゃあ、最初の街の[ネコカフェ]に集合ね。」
とだけ言い残し自らの部屋へ入っていった。
僕は、姉の温もりが残る手に目を向け、顔を少し赤らめる。
「っと、こうしちゃいられない。」
部屋に入り、準備をし起動し、目を閉じる。
「[現実なんてぬるすぎる]へようこそ」
機械音声が流れ、設定に移る。
今のVRMMOはPCにセットする本体に、あらかじめ店に置いてあるスキャナーで全身を細かくスキャンしたデータを、入れる方式をとっているため、いちいち新たに始める度に、体を簡易スキャンする必要はない。
俺は見た目を、現実の自分のまま変えることなく、そのまま使う。
次に、装備のメインカラーを黒に決める。
このゲームでは同じ服でも色々なカラーがあり、最初の装備をメインカラーの色にしてくれる。他にも買うときに、色を変えることが出来る。
また店員さんがメインカラーの物を優先して、持って来てくれるのだ。
この機能によりファッションの幅が非常に広がり、安易になった。そのため、販売前から女性人気も非常に高いのだ。
そして、パラメータだが、HP、スタミナ、パワー、ディフェンス、スピードがあり、初期割り振りポイントが10ある。
俺は迷うことなく、スピードに全フリする。
スキルは最初はなにもなく、行いによって自動追加されるのだ。
最後に名前だ。
[タカシ]本名だ。
いよいよファンタジー世界へダイブ!
目に街の景色が映る。
余韻に浸ること無く、壁に張り付き、耳を働かせ、人々が行き交うのを盗み見る。
(ピロン)
頭の中で音が鳴る。
隠れつつウィンドウを開き確認する。
スキル:サーチ1
サーチを習得、そのまま誰にも気づかれないように目的地まで移動、途中で(ピロン)という音を聞き店の前で確かめる。
スキル:ステルス3
スキル:サーチ3
先ほどの音は新たにスキルを習得した音だ。スキルレベルにもEXPがあり、貯まると自動で上がる。
(うむ、こんなもんだろう。)
俺はウィンドウを閉じ、[ネコカフェ]に入る。
「まだ来て無いか・・・」
コーヒーを注文し、周りをわざと警戒するように、音、動き、臭いまでも意識する。
これにより、サーチスキルが上がる。日常生活を利用して上げるやつなど数える程しかいないだろう。
ファンタジー世界ではモンスターと戦うのがメインだ。もちろん、アイテム探しなどもあるが、どちらにしてもフィールドにでて行うものだ。スキルも当然、クエスト中などで手に入れると思いがちだからである。
ただし、普通にやっていてもサーチやステルスは習得しにくい。そもそも、モンスターは隠れてないし、最初なのだ、当然弱い。わざわざ隠れたりする必要性などないのだ。
俺はサーチスキルをあげると五感に補正値がついたり、ステルス値により、気づかれずに敵に近づける距離が変わることを既に実証して、知っている。
これはVRMMOならで、テレビゲームのようハッキリと現れないため、積極的に上げるやつも少ない。
俺はVRMMO経験者というだけではない。この世界でも実証済なのだ。
そう俺はベータテスターである。
「それにしても・・・・・・・・・・遅い・・・・・」
どれくらい経ったか・・・・
カランカランと鈴がなる。
キョロキョロと女性が誰かを探しながら入って来た。
見た目は、黒のブーツ、黒いショートパンツ、黒のストッキング、白いTシャツ、淡い緑色のカーディガン・・・顔は整いおっとりした雰囲気で、肌は白く、背は165くらい、白く腰まであるストレートの髪、スタイルもよく、胸はEくらいだろうか・・・。
今まで散々、どうでもいい話をくちゃべっていたカップル、クエストの話をしていた男達、男女問わず口をあけ、目を奪われいた。
目を引かれなかった奴はロリこんだろう。
「はぁ」
思わずため息をつく。
(そらぁ可愛いよ、綺麗だよ、思わず見とれたことも認める。それでもだ、それでも、ただでさえ髪や顔立ちだけでも注目を集めるというのに・・・最初からその服装で来る奴がどれほどいるのだろうか・・・これじゃ声かけにくいだろうが・・・)
声をかけるのは、決して俺がナンパ男だからでも、ここでバイト始めたわけでもない。
というか、店員さんも見とれている。
(ふぅ)
俺は覚悟を決め、意を決し声をかける。
「姉貴!・・・・・・・・・こっちだ。」
覚悟も決め、意を決したが・・・当然、声をかけた俺に注目が集まったため、言葉に詰まってしまった。
「もう!タカシ!すぐ声かけてくれなきゃ!」
「お、おう、ごめん」
「うん、ちゃんとごめんなさい出来ました。」
と俺の頭をヨシヨシしてくる。
「///っちょ、恥ずいからやめろよ!・・・・それより・・・・」
手を払い、顔が赤くなったのをごまかすように、時計を表示したウィンドウを目の前にやる。
そうドアの前で別れてから、5時間立っている。
「5時間、5時間も経ってますよ?分かります?俺がどれーーーーーーーーほど待ったか。」
「ごめんね」
と舌を出して謝る。
背中に花まで見えてきそうなほど、ふわふわした癒されるオーラが流れている。
「はい。ごめんなさい出来ましたね。ヨシヨシ・・・・・ってなるかーーー!」
しっかりヨシヨシしながら、突っ込む。
「だってぇ・・・女の子には色々あるの!」「「そうだ、そうだー」」
頬を膨らまして怒られた。
しかも、店内の女性人まで味方に付けやがった。
「はぁ、しかも初期のS全部使ったんだろう?」
「うん、よくわかったね。」
「最初からそのファッションにするためには、ちょうど500S必要だからな。」
「武器は今から見に行くんでしょう?」
「はいはい、出せばいんでしょ、出せば。」
「うぅぅ、そんな言い方しなくてもいいじゃない。ぐすん。」
顔を伏せ泣き真似をする。泣いてないことは当然、俺も分かっているが許すのが男だろう。
(・・・そのあからさまにチラチラ見るのはやめなさい!)
「時間も惜しい。行きますか。」
姉の頭に手を置き、笑いかける。
そして、椅子を少し引きエスコートする。
「///えへへ///」
姉の顔に笑顔が戻る。
(畜生可愛いじゃねぇか)
武器屋で武器を選ぶ。
俺は15センチのピックを10本買い。
残りのお金で買える、姉の武器を探す。
「まぁ、片手剣が妥当だろう。・・・ところで姉貴。」
「なに?」
「気になる武器あるか?」
「ふふふ、全部。」
「・・・よし!片手剣からね。」
「えぇぇ、また片手剣から?」
「文句は自分でお金出してから言いなさい。」
「はぁい。」
「すぐ貯まるさ。」
「そうだね。二人ならすぐだね。」
「ああ、早速狩りに行くか。」
「うん♪」
ここで、このゲームの特徴を説明しておこう。
このゲームに参加出来るのは5万人、しかし、ゲームは7万本存在する。
ここで問題が生じる、そう、2万人あぶれるのだ。
しかし、これは製作者側の手違いでわない。
このゲームは、殺されると、そのキャラクターが死ぬのだ。
死んだら1からやり直しだ。いや、0からといっても過言ではない。
何故なら、死んだら更にペナルティが3日も存在する。
つまり、溢れた人たちはそこを狙うのだ。
そのため、死に体する重みが、やり込めばやり込むほど重いのだ。
ちなみに、パラメータの初期値だが、現実の身体能力をスキャンした結果が反映される。
つまり、現実で力持ちなら、パワーが高く。足が早ければ、スピードが高いと言う理由だ。
俺は親の言われるがままに、色々な習い事してきた。勿論、格闘技もだ。
そう、俺は初期値だけでも、雑魚を寄せ付けず、攻撃系スキルの特徴である、型の強制アシストを必要としないのだ。
無論、姉も例外では無い。
「よし、今日はこんなもんか。」
「いつ見ても綺麗よね。隙もないし。」
「ん?そうか?」
「そうよ、少なくとも無手でモンスター狩る人は見たことないわよ?」
「最初だけだよ、こんなことが出来るのは、大型は姉貴にかかってるんだからな。」
「もちろん。任せといて。」
なんて、たわいの無い話をし、一度街へ戻り、ログアウトする。
ちょうど、17時になるところだ。
この家には僕と姉しか住んでおらず、姉が夕食、俺が朝食と担当を分けている。
収入はというと、姉がマンション経営をしており、そのマンションに俺たちも住んでいる。
僕はというと高校3年で、既に大学が決まっており、今は大してすることはない。
ならバイトでもしろと言いたいだろうが、既にネット関連や解析、理論構築などの仕事をしており、計24社と契約までしている。
18時を過ぎたぐらいだろうか、
「貴士~ご飯出来たわよ~。」
と姉が声をかけてくれる。
僕もちょうど、タブレットでメールを確認し、仕事終わらせたところだ。
夕食が終わり、俺は洗い物をしながら、問う。
「お姉ちゃん、この後、いつごろログインする?」
「う~ん、お風呂入って、洗濯物干してからだから、21時くらいかな。待っててくれるの?
仕事はもやっちゃたんでしょう?」
「まぁね、・・・あ、やっぱり鍛冶スキル上げとくことにするよ。武器たくさん欲しんだよね?」
「え、作ってくれるの?ありがと。」
こちらに笑顔を向けてくれる。
(くぅ~、この笑顔見るためだけで、やる気が起きるぜ!)
僕は一足先に、INして全力で取り組む。
VRMMOではスピード値と脳の処理速度+ハードの処理速度に比例して、ゲーム内で実際に動ける早さが決まる。
スピード値がいかに高かろうが、脳がついてこなければ、当然意味のある行動など出来はしない。
俺は尋常でわ無い速さで、武器を作る。
この度は読んでいただきありがとうございます。
感想、意見等、心待ちにしております