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エンド・オブ・ワールド  作者: 高崎司
4/26

4話

 ────2020年 8月12日 土曜日────


 今日は学校も休みで一日中、《EOW》に潜るつもりだった。

 ユイがログインしてるかわからないが、一先ず先にログインしとくか。

 俺はいつも通りカプセルに入ると、ゲーム世界へとダイブする。

【スノーヘブン】へと降り立った俺は、まずユイがログインしているか確認する。

 するとユイの名前が光っており、ログインしている事を示していた。

 俺はユイへと連絡を取る事にした。


 ────ユイへ────


 今どこにいるんだ?

 俺は今丁度ログインしたんだけど。

 いつもの広場で合流できるか?


 レンより


 俺はユイへとメッセージを送信する。

 するとすぐにユイから了解の返事が返ってきた。

 俺はすぐに広場へと向かい歩き出す。


 俺が広場に着くと、めずらしくユイの方が先にベンチに座って待っていた。


「早いな。いつからログインしてたんだ?」


「一時間前くらいですかね。ちょっと用事があって早めにログインしてました!」


 ユイはそわそわしており、落ち着かない様子だ。

 俺は何かあったのかと目線で問いかけると、ユイはえへへっと笑いながら、俺に装備品を見せてきた。


「実は……装備を新調したんです! 見てくださいよ! 今までのレベル上げでお金も貯まってきてたので、全部買い換えました!」


 自信満々に見せてきたユイの装備は、確かに初期装備に比べると格段にレベルアップしていた。

 俺にはまだ及ばないが、この第2フィールドの雑魚モンスターなら楽に勝てるだろう。


「すごいじゃないか。これで初心者ニュービーは卒業だなっ!」


「ハイッ! これで少しでもレンさんに近づけましたかねっ!?」


「そうだな。充分戦力になるよ。頼りにしてるぜ」


 ユイは更に嬉しそうにハニカムと、見てくださいと言ってその場でクルクル回る。

 装備が新しくなって嬉しいんだろうな……俺も最初に買った装備品はすごい大切にしてたっけ……。

 俺も自分の事のように嬉しくなり、つられるようにして笑った。

 一通りユイのファッションショーが終わると、広場が俄かに騒がしくなった。


「何かあったのか?」


「どうやらこのフィールドのボスモンスターが発見されたらしい! 今からレイドを募集するんだとさっ!」


 俺は近くにいたプレイヤーに話を聞くと、きょとんと首を傾げているユイに説明してやった。


「レイドっていうのは、大人数で組むパーティーの事だよ。ボス戦ではこのレイドを組んで攻略するんだ。一パーティー何人かで組んで、それを何個もパーティーとして作るんだ。ボスは大人数で攻略しないと倒せないからな」


「そうなんですか!? 私は知らない事ばかりなので、レンさんが居てくれて本当に助かりますっ!」


「これは常識なんだけどな……まあいい、俺達もちょっと見に行ってみるか?」


「そうですね! 私もちょっと気になります! もしかしたらお姉ちゃんを知ってる人がいるかもしれないし……」


 俺達は広場から一旦離れて、レイドの募集をする町の中心地まで戻る事にした。

 町の中心地に戻った俺達は、今まで見た事もないくらいの、プレイヤーが集結している事に気付く。

 俺がこの《EOW》をプレイした時には、もう第1フィールドのボスは討伐されており、実質レイドの募集をかけているのを見る事自体が初めてだ。

 まさかこんなに大人数が集結するとは想像もしていなかったし、俺達はその場の雰囲気にただただ圧倒されるだけだった。

 俺達が雰囲気に飲まれていると、中心に一人のプレイヤーがゆっくりと姿を現した。

 中肉中背の男で、蒼い髪を長く垂らしているそのプレイヤーこそが、今回の主役なのだろう。

 そのプレイヤーが前に出てきたとたん、場は一気に盛り上がりを見せた。

 喧噪に包まれる中、そのプレイヤーはよく通る声で話し出した。


「皆集まってくれて感謝する! 俺達【円卓騎士団テンプルナイツ】がついにこの第2フィールドのボスを発見した!!」


 その場は大いに歓声に包まれ、そのプレイヤーは誇らしげに、喧噪が落ち着くのを満足気な顔で待っていた。

 一旦静まり返ると、また話始める。


「この第2フィールドの奥深くに存在する、【古代からの訪問者】という遺跡で俺達はボスを発見した。まだボスとは邂逅していないが、厳しい戦いになる事が予測される! だから今回俺達と共に攻略に参加してくれるメンバーをここで募集したいと思う!! この後、近くの広場でメンバー登録をさせてもらうから、参加したいプレイヤーは受付をしに来て欲しい!! それでは解散っ!」


【円卓騎士団】のギルマスらしき人物が解散宣言をすると、プレイヤー同士の話し合いが始まった。


「俺は参加するぜっ! お前はどうする!?」


「ボス戦なんて滅多に参加できないからな。記念に参加するか?」


 ────などなどさまざまな声が聞こえてきた。


 俺とユイも取りあえず、この場を後にして落ち着いて話ができる場所まで移動した。

 広場は今は人で溢れ返っているだろうから、近くにあったベンチに腰掛け、今後について話し合う。


「さっきのボス戦の話なんだけど、俺は正直に言うと参加したいと思ってる。こんなチャンス滅多にないし、まずパーティー人数に満たない俺達がボス戦に参加するには、最高のシチュエーションだ。ユイはどう思う?」


「私は……レンさんに着いて行きますよ! 今までもそうしてきたし、レンさんがいなかったら私はあの森で死んでいて、もうこのゲームにログインする事もなかったかもしれないですから」


「そうか……なら俺達はボス戦に参加しよう。ボス戦に参加する人で、誰かユイのお姉さんを知ってる人がいるかもしれない。少し話を聞いてみるのも有りだと思う」


「そうですね! 本当にお姉ちゃんはどこにいるんでしょうか……お母さんとお父さんも心配してるし、早く見つけないと……」


 俺達は広場に行って、参加の申し込みをする事にした。

 受付では先程演説を行っていたプレイヤーが囲まれており、聞こえてきた話では名前をスタンと言うらしい。

 そのスタンさんに話しかけて無事に参加の申し込みを済ませると、俺達は空いた時間をレベル上げに費やす事にした。

 ボス戦は明日の正午から開始するらしく、今日は一日ゆっくりしてくれとの事だった。

 まあ各々アイテムの補充や、装備品を新調したりと準備に時間がかかる。

 それを考えて明日からのアタックとしたのだろう。

 俺達は得に準備する事がなかったので、近場のフィールドでレベル上げをした。

 雑魚モンスターをひたすら狩り続け、ユイのレベルは1上がって17に成長した。

 俺はと言うと、レベルは結局上がらなかったが、お金も貯まってきたので装備を新調する事にした。

 一旦町に戻り、俺は防具屋に行くと《ミスリルプレート》と呼ばれる銀色の胸当てを購入した。

 今まで装備していた防具に比べると、防御力と回避に補正がかかり、ボス戦もこれで何とかなるだろう。

 後はボスのレベルがどれぐらいかにもよる。

 もし俺よりレベルが高ければ正直厳しい。

 レイドメンバーも見た感じさほど俺とレベルは変わらない気がした。

 これで全滅とかになったら笑えるなと一人思案しながら、防具屋を後にした。


 俺達は今日の所は一旦レベル上げを止め、ユイのお姉さんを知る人物がレイドパーティーにいないか聞いて回る事にした。

 広場にはまだたくさんのプレイヤーがいて、片っ端から声をかけてみる。


「ちょっと聞きたいんだけど、【暁の騎士団】ってギルドを知ってる?」


「当たり前だろ! 超有名ギルドじゃん! それがどうしたんだよ?」


「実はそのギルドのギルマスなんだが、最近どこかで噂を聞いたりしてないか?」


「ああー【百花繚乱】の事か。あの人の話は……そういえば最近全然聞かなくなったな。あの人どころかギルド自体が何やってるかも聞かないな。何かあったのか?」


「いやそれを知りたくて話かけたんだけど……どうやら知らないみたいだな」


「悪いな、俺達も噂を聞かなくなってからあまり気にしてなかったよ。たぶん他の奴等も知らないんじゃないかな?」


「そうか……わかった。ありがとう」


 俺は一旦不安気に見守っていたユイの元へと戻ると、何も進展がなかったと報告した。

 ユイは悲しそうな顔を一瞬浮かべたが、気にしないでくださいと気丈に振舞っていた。

 結局その日は何の情報も得られず、失意のままログアウトする事となった。






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