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エンド・オブ・ワールド  作者: 高崎司
20/26

第20話 最後に見た幻

 俺達は湖の主の額に埋まっている、<トリックネックレス>を求めて主と戦っていた。

 名前を<キングフロッグ>というらしい。随分安直なネーミングだが気にしてはダメだろう。

 そのボスのレベルは31だった。第三フィールドのボスより一つ高いが、こいつを倒さないとイベントクリアにならないので、意地でも倒すしかない。

 俺は先陣をきって斬り込む。早速スキル《イニシエーション・スパイク》を放ち、ボスをノックバックさせる。

 そして次にハロルドがスキル《レイブンアックス》を放った。紫色のスキルエフェクトを纏った斧が、ボスの無防備な頭部に叩きつけられる。

 物凄いダメージエフェクトが煌めき、クリティカルヒットしたことを知らせる。

 そして最後にユイがスキル《シャイニングアロー》を放つ。

 上空から無数の矢が飛来し、ボスに雨あられと降り注ぐ。ユイの攻撃もクリティカルヒットを叩き出すと、三人分の攻撃でHPが半分程減った。

 もう俺達の連携は完璧で、このスタイルが確立されつつある。


「残りはあと半分だ。一気に押し込むぞ」

「はい!」


 ユイが後方から勢いよく返事をすると、更に追加の《シャイニングアロー》が放たれる。

 ボスの動きをユイが足止めしている間に、俺とハロルドは左右から攻撃を重ねる。

 俺は《クロスエッジ》を放ち、ハロルドは《レイブンアックス》を放つ。

 怒涛の連撃によりボスのHPも残り三割程となった。


 しかしここでボスの体に変化が起き始めた。

 今まで緑色をしていた体がどんどん赤く変色していき、ついには体のサイズも一回り大きくなっていた。

 そして口を大きく開けると、唾液のようなものを吐き出した。


 俺は咄嗟のことに反応できず、そのネバついた唾液のようなものを浴びてしまう。

 すると俺の体が突然一ミリたりとも動かなくなってしまった。

 自分のステータス画面を見ると、バッドステータスの麻痺が付与されていた。

 麻痺のバッドステータスにかかってしまうと、一定時間動きを封じされてしまう。

 とても厄介な代物だった。俺は自分で回復することもできずに、ボスの攻撃を喰らってしまう。


 ボスは勢いよく飛び上がると、そのまま地上めがけ急降下してきた。

 俺は防御することもままならず踏みつぶされてしまう。

 俺の体を物凄い衝撃が襲い、一瞬死んでしまったのではないかとさえ思えた。


「レンさん!」


 遠くでユイの悲鳴交じりの声が聞こえた。その後砂を踏む足音、ついで俺の体を光が包み込んだのがわかった。

 どうやらユイがアイテムを使ってくれたらしい。見ると俺のステータス画面から麻痺のバッドステータスが消滅していた。

 俺は自由になった体に力を入れて、一気にその場から一旦後方まで下がる。

 すると入れ替わるようにして、ハロルドがボスの目の前へと躍り出る。


「今の内にHP回復しろよ。俺だって長い時間は持たないからな」


 ハロルドの言う通り、俺はユイにHPを回復してもらい一旦仕切り直す。

 見るとハロルドがボスの攻撃を何とかやり過ごし、カウンター攻撃を仕掛けている最中だった。

 それでも一人じゃきついのか、ハロルドにしては防戦一方になっていた。

 俺はステータス画面を確認すると、再びボスへ接近していく。


 ハロルドと入れ替わるようにしてスキル《イニシエーション・スパイク》を放った。

 俺の突進攻撃がヒットすると、ハロルドは一時下がる。

 その間俺は一人でボスのターゲットを取り続けた。

 見たところボスの攻撃パターンは三通りあるみたいだった。


 まず一つ目がジャンプしてからのスタンプ攻撃。

 二つ目が口を開けてからの麻痺攻撃。これが一番やっかいだと思う。

 最後に三つ目が粘着質の高い手を使って、プレイヤーを捕まえるとそのまま口の中へ放り込む。

 口の中に入ったプレイヤーは一定時間脱出不可能となり、徐々にHPを削られていく。

 どれも恐ろしい攻撃ばかりだった。最後の攻撃はハロルドが最初の餌食となってしまい、口から出てきた時には、HPが四割も減っていた。


「俺がボスのターゲットを取ってる間に、ハロルドは側面から攻撃してくれ。ユイは後方から援護射撃を頼む」

「了解!」

「わかりました!」


 俺はオーダーすると足に力を入れ一気に加速する。ボスへと近づく前唾液攻撃が俺を襲ったが、何とかサイドステップで躱す。

 ボスに肉薄した俺は、スキル《ヘキサグラム・アブソーバ》を放った。

 現在俺が使える最強のスキルだ。六芒星の軌跡を描く剣閃がボスの体を捉える。

 柔らかい肉肌を抉り心の蔵を捉えた剣は一気にHPを削り取った。

 残りHPも二割となる。次いでハロルドの上段切りがボスの頭部を叩き潰した。

 これで残り一割。最後はユイの鋭い一矢が心臓を貫き、そしてボスの体は光に包まれて消滅した。


 その場にクエストクリアのファンファーレが鳴り響く。すると空から光る何かが落ちてきた。

 俺は手を受け皿のようにしてそれをキャッチする。やはり落ちてきたのはボスの額に埋め込まれていたネックレスだった。

 俺がネックレスに触れると、アイテム名が表示された。


 神秘の秘宝<トリックネックレス>

 死んだ者を一度だけその場で蘇生させることができる、神秘のアイテム。

 イベントクエストでしか手に入らない秘宝である。


 そう記された銀色のネックレスはまさに俺達が探し求めていたアイテムだった。


「やったな。これでイベントクリアだ。町に戻ってピエロに報告しよう」

「そうですね。それにしても綺麗なネックレスですねー」


 俺が手に持つネックレスを、横から覗きこむ様にして見てくるユイ。

 距離の近さに驚きつつも、俺達は町へと戻るべく帰路の道を辿る。


 それから町に着いた俺達は、あの路地裏に行きピエロと出会う。

 あの時同様腰に手を当て優雅に佇んでいたピエロは、顔を綻ばせるとお礼の言葉を述べてきた。


「皆さん本当にありがとうございました。このネックレスは僕が死んだ母親からもらった物なんです。見て下さい、このロケットに写真が入っているんですよ」


 そう言ってネックレスの先端に付いているロケットを開けると、中からは一枚の綺麗な写真が出てきた。

 そこには今目の前にいるピエロの若い日の写真が収められ、その横では綺麗な女性が笑みを浮かべて寄り添っていた。

 俺はいい写真だなと思った。親子で寄り添う姿に自分の子供の頃を重ねてしまう。


「でもこれはあなた達にあげます。もう僕には必要のないものですから。本当にありがとうございました」


 そう言ったピエロの体が自然と透けていく。俺は突然のことに呆けてしまった。

 見る見る内に体が透けていくと最後には跡形もなく、まるで最初から存在などしていなかったかのように消えてしまった。

 その後ネックレスの写真を見てみると、そこには何も映っていなかった。


「そういうことか。何か最後は切ない気持ちになっちゃったな」

「そうですね。私も早くお姉ちゃんに会いたくなりました」

「大丈夫さ。すぐに再会できる。そのためにもゲームクリア頑張ろうな」

「はい! レンさんがいてくれて本当に良かったなって思います」

「何だよ今更。褒めても何も出ないぞ」


 ぶっきらぼうに言って顔を逸らした俺の頬は、少し赤く染まっていた。

 それを見たユイは柔らかく微笑むと俺をからかうように言う。


「レンさん顔が赤いですよ? どうしたんですか?」


 顔を見なくてもわかる。今ユイは悪魔のような顔で俺のことを見ているだろう。

 俺は意地でも振り返るかと、その場から早足で逃げるようにして去って行った。

 後ろから聞こえる声を無視して俺は歩き続ける。


 このゲームが行き着く最後に何があるのか考えながら。

 そしてユイのお姉さんは本当に取り戻せるのか一抹の不安を抱えて歩くのだった。

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