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猫耳姫と不良王子  作者: 実森
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お姫様の涙と恋心

「いらねぇ!!」

「そんなこと仰らずに受け取ってくださいっ!!」

店の前で魔法リングを俺に受け取らせようとするロゼッタ。絶対に受け取らんっ!!


 そんなやり取りを店の前でしているとエミリーが荷物を抱え戻ってきた。

 「!?何をしてるんですか?何を!?」

 「「エミリー!!」」

 エミリーが言うには異様な光景だったらしい。魔法リングを押し付けようとするロゼッタと、その魔法リングを持っているロゼッタの手を掴んで意地でも受け取らない俺の姿が・・。


 事情を説明しようとするロゼッタ。

 「・・・・ロゼッタ様は和輝に魔法リングをプレゼントしたかったんですね?」

 「うんっ!」

 コクコクッと頷くロゼッタ。

 その流れに嫌な予感がする俺はゾクッと寒気がした。

 

 「・・で?なんで受け取らなかったの?和輝・・?」

 ゆっくり俺の方を振り向くエミリー。目が光っとる!?

 (ひいいいいいっ!!!)

 「まっまて!まて!俺の話は聞かねぇのかよ!!」

 キッと俺を睨みつけるエミリーに、冷や汗をかく俺。

 「問答無用!折角ロゼッタ様がプレゼントしようとした魔法リングを拒否するってどういうことっ!!??」

 「婚約指輪とか言われて素直に受け取れるかっ!!!」

 「・・婚約指輪・・?」

 じーっと俺を見るエミリーに、俺はロゼッタへ指をさす。当のロゼッタは背中を向けて無言だ。ゆっくりと俺へ向けていた視線をロゼッタへ向けるエミリー。


 「・・・ロゼッタ様?」

 エミリーに呼ばれ、ビクッと肩を震わすロゼッタ。

 「ロゼッタ様?婚約指輪ってなんですか?」

 青ざめながら振り向くロゼッタ。泣きそうになっている。

 「だっだって・・だって・・こうでもしないと和輝様本気にしてくれないと思って・・」

 ごにょごにょ口ごもるロゼッタ。

 「本気にされたら困るんですっ!!何度言えばいいんですかっ!!ロゼッタ様にはきちんとした家柄・教養を持ち合わせた王子が現れるんですからっ!!!分かりましたかっ!!??」

 エミリーの迫力にロゼッタは涙目になっている。条件反射でコクコクッと頷いているが本気で思ってるんだろうか・・?



 「で?話は戻りますけど、魔法リングのことならシルバーガーデンにいくつかありますから、条件次第によっては差し上げてもいいですけど?」

 ニヤリと笑うエミリーに俺は、ごくっと生唾を飲み込んだ。


 「・・条件ってなんだよ・・?」

 真剣なエミリーに対して俺はドキドキしながら問いかける。


 「私の仕事の手伝いでもしてもらいましょうかね。別に難しいことではないでしょう?」

 じっと俺を見るエミリー。そしてエミリーの言葉で考え込む俺。

 (・・・確かに、給仕の仕事ってそんなに難しそうじゃねぇし・・そもそもタダで居候ってのは、やっぱり悪いしな)


 「よしっ!!やるっ!!」

 意気込んで俺は両手を拳にして気合を入れた。

 「じゃあ・・」

 「んっ!!!」

 エミリーが喋ろうとした時に俺はエミリーへ手を伸ばした。きょとんとするエミリーは首を傾げ、

 「なっなによ?」

 「荷物重いんだろ?持つよ!!」

 「えっ!?」

 俺はエミリーから荷物を奪い取った。意外と買い込んだようでかなりの重さだ。

 

 (女にはこれ重いだろうに・・)


 さらりと荷物を奪われたエミリーは、かあっと赤面しフルフルと震えていた。

 「ん?どうした?顔赤いけど・・?」

 熱でもあるのだろうか・・?と心配したが、次の瞬間にはツンッとしたいつものエミリーに戻った。


 (な・・なんなんだよ)


 そして俺とエミリーのその光景を目の当たりしていたロゼッタ。

 異様にロゼッタが静かなことに気付いた俺は、ロゼッタへ視線を向けた。


 「!?ど・・どうしたんだよ・・」

 サーッと顔が青ざめていることに驚いた。


 「ロゼッタ様っ!?どうなさったんですか?」

 俺とエミリーが心配すると、大きな瞳に涙を溜めいきなり泣き出した。

 (えええっ!!??)

 俺とエミリーは絶句!!


 「うわああんっ!!ひ・・ひっく・・ぐすっ・・」

 (ちょちょっと待て!こんな街の真ん中で泣くなっ!!)

 焦る俺。そして慌ててオロオロするエミリー。


 「とりあえず泣くなっ!!つーか、なんでいきなり泣いてんだ!?」

 俺はがしっとロゼッタの両肩を掴む。

 大声で泣くのは止まったが、まだ涙が止まらずポロポロと流れている。


 「・・・・・だって・・だって・・」

 「だってなんだよ?」

 「そんなにエミリーに優しくしたらエミリーまで好きになっちゃいますッ!!だからダメーッ!!!!」

 大声で叫ぶロゼッタに、俺の耳はキーンと響いている。周りにいる人達も俺達に注目して目立ってしまっている。


 「エミリーが俺を好きになるわけねぇだろ!!俺のことを『こんな』とか言ってるんだぞ!ありえねぇだろ・・」

 ロゼッタの女のカンは、外れていると思いながら深いため息をする俺。


 「全くです!!!」

 ドンッと俺を押しのけて、ロゼッタの目の前に来たエミリー。

 「なっなにすんだよっ!!」

 「心外です!!私が和輝を好きになる!?あり得ません!!私の理想の男性はこんなヒヨッコではありません!!筋肉に溢れる男性ですからっっ!!!!」

 グッと拳を握りしめながら熱く語るエミリーに、ぽかんとするロゼッタ。

 そして俺も唖然としている。

 (つーか、ヒヨッコって!!??)


 だが、エミリーの理想像を聞いてホッとするロゼッタ。

 「・・そっか、良かったあ!エミリーと好みが違って」

 涙が止まり笑顔のロゼッタ。その笑顔を見てエミリーも安心したようだ。


 (・・というか、そういう話は俺のいない所でお願いします)



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