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猫耳姫と不良王子  作者: 実森
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魔法リング

キラキラした目で俺を見るロゼッタ。

 理由は簡単。結局ロゼッタが選んだ服を俺は着ることにした。

 色々着せられたが、ロゼッタが最初に選んだ服が無難だったのだ。しっかし、益々RPGみたいになったな・・。

 黒と青のジャケットに黒のインナー、茶色のズボンに黒のブーツで全体的に黒っぽい。だがジャケットには金細工のボタンなどがちりばめられている。着てみると伸びたりする素材で動きやすい。

 「似合ってます!かっこいいです和輝様!!」

 ニヤニヤしているロゼッタに俺は「はいはい・・」と適当に相槌を打った。

 「信じてませんねっ!!もうっ!!」

ぷうっと頬を膨らませるロゼッタだったが、

「・・・でも流石私の王子様です!!」

えへっと笑い、ポッと頬を染めるロゼッタに対し、

 「はいはい、寝言は寝て言え!!」

 「!?」

 俺のそっけない言葉に口が閉まらないロゼッタ。

 着替え終わった俺にエミリーが鞘に入った短剣を託した。

 「・・・・なんだよ?これ・・?」

 いきなり渡され俺はきょとんと目を丸くして尋ねた。

 「護身用!あんたがいた世界ってのがどんなのか知らないけど、一応ね」

 (心配してくれてんのか・・?)

 確かにRPGだったら剣の1つや2つは持っていて当たり前だよな・・。

 「・・・分かった」

 素直に受け取った俺は、短剣を入れるポケットがついているベルトを身につけ、とりあえず当面の服は確保できた。


 エミリーは食材の買い出しがあるからと言って、しばし別行動となった。

 2人きりになれるとロゼッタは喜んでいたが、エミリーは心配そうにして俺に、

「ロゼッタ様に変な真似したら殺すっ!!」とまで言われました。

(安心しろ!!しねぇよっ!!)

それにしても、道沿いにずっと店が立ち並んでいる。剣や鎧を売っているおっさんは鎧や剣を持っている男たちに勧めたりしているし、アクセサリーや宝石などの店は女性たちに勧めたりしている。

商売人ってあんまりどの世界も変わらないんだなあっとしみじみ思った。その中で今俺が気になったのは・・・指輪。アクセサリーとは違う?ようで剣などと一緒に売られていた。

ジーッと指輪をまじまじと見ている俺に気付きロゼッタが、

「どうされましたぁ?」

 ぽけーっとした能天気な声が聞こえてきた。だが指輪の正体を知りたかった俺は、

「いや・・これって指輪だよな?」

指輪を指差す俺にロゼッタは「!?ああ!これはですね」と説明し始めた。


「これは、魔法リングですよ!」

ニコニコとしながら指輪を手に取るロゼッタ。

「・・・魔法リング・・?」

しかめっ面をしながら俺は聞き返した。

 (つーか、魔法!?魔法使えんのっ!?)

 「はい!・・って、もしかして和輝様の世界には魔法ってないんですか?」

 不思議そうに聞き返してくるロゼッタに俺は、コクッと頷いた。

 「ねぇよ、そんなん・・」

 (魔法なんて漫画やゲームの中だけの話だったのに・・・)

 フルフルと震える俺を心配そうにのぞき込むロゼッタを尻目に、俺はガッツポーズをとった。

 そのいきなりの行動にビクッとするロゼッタ。

 「うおおおおおおおっ!!!!魔法キタァーーーッ!!流石RPGっ!!!」

 大声で俺は歓喜の声を上げた。

 小さいころから漫画やゲームをして魔法に憧れを少なからず持っていた俺は、此処にきて良かったと今初めて思った。だって、魔法だよ?攻撃魔法や回復魔法があるんだろ?

 「!?・・・・和輝様?」

 ロゼッタの声で俺はハッと我に返った。

隣にいるロゼッタのことなんて、すっかり忘れてしまっていた。


「・・・いや・・これは・・」

我に返って自分の行動を思い返すとちょっと恥ずかしくなった。

「RPGってなんですか??」

俺の発言に疑問を持ったロゼッタが聞いてくる。

どう説明をしたらいいのやら・・。もちろんこの世界にはテレビなんてないし漫画もなさそうだ。じーっと興味津々でロゼッタが見つめてくる。

はあーっとため息をついた俺は、

「俺の世界の娯楽だよ。その娯楽に魔法とかの用語があるんだけど・・とはいっても所詮娯楽だから本当に魔法使えるわけじゃないし・・。でもこの世界じゃ魔法使えるんだな!?」

ウキウキしながらロゼッタに問いかける。


「あっはいっ!でも魔法アイテムないと使えませんよ?」

さらりと言い放ち、俺のRPG像が消えた。

(えっ!?普通呪文とか唱えたら魔法使えたりしねぇの??)

意外とショックだった。アイテムがないと魔法つかえねぇのかよ・・。しかも話を聞くと、ほとんどの魔法が日常生活で使われている。戦いでの魔法はあまり使われていないようだ。


なんじゃそりゃあっ!!!


「アイテムなしで魔法が使えるのは魔力を持つ魔人と呼ばれる方たちだけなんです!ちなみに私はまだ魔人さんには会ったことないです!」

(・・んっ?)

俺はロゼッタの言葉で1つ引っかかった。

「ロゼッタ、魔力をもつ魔人は毛嫌いされてないのか?普通の人と違うなら遠ざけそうだけど・・?」

目を丸くして首を傾げるロゼッタ。

 「魔人の方達は見た目では普通の人と変わらないそうなんです。胸元に魔石が埋め込まれているらしいんですど・・会ったことないからよく分かんないです」

 てへっと顔の横に流れている金髪をくるくる回しながら笑っている。

 「魔人ねぇ・・・」

 (魔族とは違うのか・・?でも人と見た目変わらないなら人ごみに混じっていても誰も気づかねぇんじゃ・・・)

 魔法リングを見ながら俺は思いにふけっていた。


 「欲しいですかっ!?」

 俺の左腕にがばっと抱きつくロゼッタ。キラキラと青い目を輝かせている。


 俺の直感が欲しいと言ったらダメと警告していた。でも魔法が使えるリング・・実際は欲しいっ!でもロゼッタのことだから、ろくでもないこと考えているような気がする。


 「いらね」

 「ええええええっ!!?ここは欲しいって言ってくださいよ!!」

 (いやっ!本当は欲しいよ!!)

 抱きついている俺の左腕を引っ張るロゼッタ。

痛いからっ!!離せよ!


 「~~~~っ」

 引っ張るロゼッタを見るとフルフルと震え、何故か泣きそうになっていた。

 「なっなんだよ!泣くことねぇだろうが!!」

 まさか泣くとは思わず、流石に焦った。


 「だって・・だって・・」

 もしかしてロゼッタは普通に魔法リングをプレセントしてくれるつもりだったのかもしれない。それを考えると要らないっと言った俺は最低野郎だ。


 チクッと罪悪感を感じる俺は、白い帽子越しにロゼッタの頭を撫でた。

 

 「和輝様・・・?」

 「ごめん・・悪かったよ」

 撫でる行為がちょっと照れ臭かったが、それで泣き止んでくれるなら・・。

グスッと鼻をすするロゼッタは泣き止んだ。そして笑顔で、


「じゃあ、魔法リング受け取ってくれますか?」

「・・でも、タダでもらえねぇよ。高けぇんだろ?」

 指輪にくっついている金額が読めないが、恐らく高価なものだ。高くて買えないってさっき店にいた客は言ってたし。

 

「大丈夫です!お金のことはお気になさらず!それにこの指輪はそれ以上に価値があるものになりますから・・」

 ポッと頬を染めるロゼッタを見た瞬間、嫌な予感がよぎった。

 うんざりした表情の俺は、恐る恐る尋ねた。


「・・・・ちなみにそれ以上の価値ってなんだよ?」

「決まってるじゃないですか!婚約指輪です!!」

 

笑顔で言い切ったロゼッタに俺は突っ込む気力も失せました。

もうこの暴走姫、誰か止めてください。



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