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猫耳姫と不良王子  作者: 実森
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街へ行きましょう!

ヒリヒリとした左頬に痛みながら、エミリーが用意してくれた朝食をとった。クロワッサンのようなパンとハムにスクランブルエッグ、そしてスープにサラダ。全部完食し俺は腹を満たした。つーか、美味かった!エミリーって料理上手なんだな・・。


 そして俺の隣で食事をとっているのがロゼッタ。服は水色と白のリボンやフリルのドレスに着替え、スープを飲んでいるが、猫耳のせいなのか分からないが猫舌のようで、熱がりながら飲んでいる。

 「熱いなら冷めるまで待てよ」

 ついつい話しかけてしまう。だって猫だもん。熱いとビクッて耳をとんがらせて・・涙目になりながもスープをすする姿に、不本意ながら癒された。・・って少しだけな!!


 俺からの話しかけにピクッと耳を動かすロゼッタ。

「!?和輝様から『あーん』してもらったら熱くても我慢します!」

 ニコニコと嬉しそうな顔をしているロゼッタは待て状態だ。その姿に俺は幻を見た!あるはずのない尻尾が見えた!ロゼッタに尻尾!?目をこする俺は再度確認した。尻尾はない。つーか、なぜ俺は幻を・・。俺の欲求かっ!?猫には尻尾だろっていう欲求なのかっ!?


 ガックリとテーブルに肘をつく俺。そんな俺を心配するロゼッタはオロオロしている。

 「和輝様?どうされました?」

 「・・・いや・・自分の能天気加減に呆れてるだけ・・」

 (そうだよ!今は猫とか尻尾とかの問題じゃねぇだろ!ここは異世界で、俺は元いた日本へ戻るっていう問題があるだろ!!!・・・それなのに、どんだけ猫好きなんだよっ!俺っ!!!!)

 俺は頭を抱えながら上下向いたり左右向いたりで、その動作に驚いてビクビクしているロゼッタ。

 頭を抱えている俺に向かってエミリーがあろうことか俺の頭にドシッとバスケットを乗せやがった。

 「重いっつーの!」

 バスケットの重みで俺は顔を下に向けている。

 「和輝の挙動不審でロゼッタ様が驚いてるでしょうがっ!」

 エミリーの言葉で俺は隣にいるロゼッタへ目を向ける。確かにオロオロキョロキョロとしていた。だが俺以上に挙動不審になっているように感じたのは俺だけか・・?


 

 「今日は街へ行きましょう!」

 朝食を取り終えた俺とロゼッタにエミリーから今日の予定を聞いた。どうも俺のブレザーの制服はこの世界では目立つようなので、今日は街へ出て俺の服などを買いに行く気のようだ。俺はこの世界の通貨は持っていないことを説明すると、それくらいなら出してくれるそうだ。ありがたや。

 「・・そういやロゼッタも街に行って大丈夫なのか?猫耳は嫌われてるんだろ?」

 俺は不思議に思って口に出した。

 「大丈夫です!ロゼッタ様は猫耳以外は普通の方と変わりないので帽子で隠せば万事OKです!ねっ!ロゼッタ様!」

 ウインクしながら右手の親指を立てるエミリー。

 「うん!大丈夫です!和輝様と街でデート出来るなんて・・幸せ」

 ポワーンと頬を赤らめ妄想にふけっているように感じ、俺はロゼッタへデコピンをした。


 ビシッ!!

 「いたっ!なっなにするんですか!?」

 おでこを押さえるロゼッタに俺はフルフルと震えながら、

 「言っとくがデートじゃないからな!ただの買い出しで、しかもエミリーも一緒だからデートにはならないっ!!」

 ぷうっと頬を膨らますロゼッタは思いついたように目を輝かせ、

 「じゃあ!途中から2人で抜け出しません?」

 俺はあきれたような顔をしながら、

 「・・・抜け出してどうすんだよ?デートはしねぇからなっ!!」

 (こいつの王子様よ・・早く引き取ってください。)


 


 エミリーとロゼッタは街へ行く準備をするからと言って、俺は別に用意もなにもなかったため、庭に白く丸いアンティーク調のテーブルとイスがありそこへ腰を掛けて待っていた。その間にふと思い出しブレザーのポケットから携帯電話を取り出した。なんとなく予想はしていたが圏外だった。

 (・・・親父とお袋は海外だし、いなくなったからってすぐに分からないだろうしな。よく家留守にしてたし・・)

 はあっと深いため息をつく和輝。


 (・・自業自得か。こんなことになるなら大人しく学校行ってればよかった・・)

 携帯を閉じて再度ポケットへ仕舞った瞬間、タタッと向かってくる足音に気付いた。

 

 「和輝様ぁ~~~っ!!!」

 手を振って近づいてくるのはロゼッタだった。

 って、ロゼッタ!?

 長い金髪をお下げにして。しかもドレスではく白と藍色のワンピースを着て、白い鍔の大きな帽子をかぶっている。

 髪型が違うだけでイメージが少し変わった。大人し目に見えて、ちょっとドキッとする自分がいた。

 「和輝様!お待たせしました!!似合ってますか?」

 もじもじとしながら聞いてくるロゼッタに、俺は照れ隠しでつい・・、

 「・・まともに見える」

 ガンっと頭に石がのしかかった様な衝撃でショックを受けるロゼッタ。

 「私はいつでもマトモです!!」

 がばっと抱き着こうとするロゼッタの頭を俺は掴み、ぐぐっと力を入れ近づけさせない。

 「まともな奴はいきなり出会った人間に「王子様」とは言わねぇから!」

 俺の言葉に真っ白になるロゼッタ。固まって動かない。

 結局エミリーが現れるまで微動だにしなかった。



 エミリーが馬車を用意してくれていたようで、俺達は馬車を乗り込む。

 乗り込んでからすぐにロゼッタは窓から外ばっか見て、あからさまに落ち込んでいる。

 どよ~んと音が聞こえてきそうだ。え

 正論を言ったはずなのに、暗く縮こまってしまったロゼッタを見ると罪悪感。

 しかも・・エミリーには睨まれるし・・。最悪だ。

 

 しばらくすると街へ到着した。これぞ異世界!?わけ分からない言葉が看板で書いてあるし、剣やら鎧などが売られている。知らない食べ物も数多く!しかも空を飛んでいる鳥がデカい!!RPGの中にいるようだ!

 キョロキョロと探索しようとする俺のブレザーをグイッと引っ張るエミリー。

 「観光は後から!先に買い出し済ませますよ!!」

 じとっと睨むエミリーに俺は何も言えませんでした。

 そんな中、知らない言葉の看板を見たときに俺は思った。


 (そういえば、どうして俺こっちの言葉が分かるんだ・・?)



 いまだにどよ~んと落ち込んでいるロゼッタ。流石に言い過ぎたか・・?

 俺の後ろにいるエミリーが小声で、

 「あんたのせいなんだからなんとかしなさいっ!!じゃないと許さんっ!!!!!」

 ギラッとエミリーの両目が光る。

 目が光ったことに俺はビクッと両肩を上下に動かした。

 

 「分かってるよ・・」

 それ以上は言葉がつまり出てこなかった。

 チラッと隣で歩くロゼッタを見る。顔を俺とは反対方向を向けている。朝とは別人のように静かだ。なんか気持ち悪い。

 出会ってまだ2日だけど、よく喋りよく笑いよく懐くロゼッタしか見てないため、こんなにしんみりしているとなんか違和感。


 「ロゼッタ!」

 名前を呼んだのに返事がない。その態度に俺は少しムスッとした。

 (なんだよ!いつも・・ってわけじゃねぇけど、無駄に騒がしいくせに!・・・・こんにゃろう!絶対喋らせてやるっっ!!)

 自分の中でなにか変な対抗心が芽生えた。

 まず、俺は名前を連呼してみた。


 「ロゼッタ、ロゼッタ、ロゼッタ、ロゼッタ、ロゼッタ!」

 反応なしでピクリとも動かねぇ!

 ・・・・こんちくしょう!!


 ちょっと恥ずかしいが・・

 今度は可愛いを付け足そう!


 「ロゼッタ、可愛い!」

 どうだっ!!俺自身居たたまれないくらい恥ずかしいんですけどっ!!

 ロゼッタの反応を見ると猫耳が少しピクピクしたのを確認した。


(こいつ・・聞いてはいるんだな!つーかいい加減振り向けよ!!)

 そして悪戦苦闘している和輝とは別の意味で苦戦しているロゼッタ。


 (ううっ・・和輝様が可愛いって言ってくれてるのに~~!だってだってマトモじゃないって思われてるなんて・・さすがに落ち込む。こんなんじゃ好きになってもらうなんて夢のまた夢になっちゃう~~)

 ガクッと肩を落とし下を向くロゼッタの目には涙が・・。


 (ダメ!ここで泣いちゃ余計に和輝様に嫌われちゃう!!)

 

 涙をぐっとこらえようとした時だった。

 ギュッ


 (・・・えっ?)

 ロゼッタは自分の右手に注目した。手を繋いでいる・・?誰と・・?

 相手の手を辿って目線を上にしていくと、

 

 「和輝様・・・?」

 手を繋いでくれていたのは和輝だった。ギュッと握られた手は熱い。

 「!?ようやくこっち向いたな!つーか、・・その・・」

 手を繋いだとこによって照れがあり、口ごもる和輝。

 「悪かったよ!まともじゃないなんて言って・・。あれ嘘だから、俺の動揺で口が勝手に言っただけだから!」

 かあっと赤面をする和輝。手に汗がじんわりと滲む。

 

 「動揺・・?」

 どうして動揺していたのか分からず首を傾げるロゼッタ。

 「~~~っ、俺のことはいいんだよっ!!ともかく悪かったし、それによく喋る奴が喋らないのってやっぱモヤモヤするっ!!だからもうなしなっ!?」

 大きな声でロゼッタに分からせようとする和輝に条件反射で、

 「はっはいっっ!!!」

 話は終わったはずなのに、和輝とロゼッタは手を離さず繋いだまま・・、その姿を後ろから見ているエミリーはクスッと笑った。


 

 「おい・・」

 「和輝様!これも似合うんじゃないですか?ああっ!なんでも似合うから困ります~」

 「おい・・」

 「いえ、ここはロゼッタ様こういう服のほうが良いのではないでしょうか?」

 「おいってば!!俺の話を聞けッ!!」

 和輝たちがあれから訪れたのは、衣装屋で和輝はロゼッタが選んだ服を片っ端から着させられていた。和輝の服を選ぶという名目でテンションを上げるロゼッタ。それに対して、着せ替え人形状態にさせられている和輝は疲れでヘトヘトになりそうになっていた。

 「和輝様、どうされました?」

 和輝の声にキョトンと目を丸くするロゼッタ。

 「どうしたもこうしたもねぇよ!後はお前らで選んでくれ・・俺はもう疲れた・・」

 店を出ようとする俺のブレザーの後襟をグイッと引っ張るエミリー。

 ニコッと笑う姿が怖く感じるのは何故だろうか・・。

 「な・・なんだよ・・」

 「もう少しで終わるから付き合いなさいっ!!」

 エミリーには逆らわないほうがいいと感じた俺は、そのまま引き続き着せ替え人形になった。


 終わるころには俺はぐったりしていた。

 女子ってすげぇ・・こんな買い物しててなんで疲れねぇんだ?

 ふうっとベンチに座ってため息をつく俺に、

 「和輝様!はいっ!!」

 「つめてぇっっ!!!」

 俺の左頬に冷たい飲み物を押し付けたのは、ロゼッタだった。クスクス笑うロゼッタから飲み物を手渡され、喉が渇いていたから正直ありがたかった。

 「あ・・ありがとう・・」

 俺が喉渇いているのに気付いたのか・・?だとしたらすげぇな。

 飲み物にはストローがついていたのでストローで中身を吸い上げた。中身は冷たくて炭酸のようなパチパチした柑橘系だった。

(なんか・・オレンジのファンタに似てる・・?)

飲み物を名前を聞くとファンテいうらしい。名前も似てんな・・。

 「美味しいですか?私このファンテ好きなんですよ!」

 

 (お前がただ飲みたかっただけかいっっ!!!)

 ファンテを飲みながら心の中で俺は突っ込みを入れた。

 

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