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猫耳姫と不良王子  作者: 実森
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目覚めたお姫様

俺は東京にいたはずで、珍しい金色の猫を追いかけて公園に入ってから辺りが変わってしまった。


 緑豊かな風景と中世ヨーロッパのような城や建物。

 どう考えても東京じゃない!


 そして俺の目の前にいるのは、ピンクと白のドレスを着た猫耳の女の子!?


 誤って眠っていた少女へキスをしてしまった和輝。

 そのキスによって目を覚ました少女。

 しかも第一声は「王子様」って・・。



 ニコッとしながら和輝を見つめる少女は、白い肌に頬はピンクに染められていて、金色の髪に青い瞳をしている。そして金髪によく合うピンクと白のドレス。

 年齢はおそらく和輝と同じかその下くらい・・?


 「王子様!初めまして、私の名前はロゼッタ・ファンティシアと申します!よければ王子様のお名前をお聞かせください!」

 床に座っている和輝へグイグイ迫るロゼッタという少女。慌てる和輝は後ずさりをする。

 「なっ!?なに言ってんだ?俺は王子様じゃない!!」

 左手を前にロゼッタとの距離を取る和輝。

 「・・王子様じゃない・・?」

 コクッと頷く和輝。

 (冗談じゃない!めんどくさいことに巻き込まれてたまるかッ!)

 元いた東京へ戻る!和輝にはそれしか頭になかった。だが、


 「でも!私を起こしてくれたのは貴方ですよね??だったらやっぱり王子様です!お姫様を起こすのは王子様って決まってますから!」

 照れながらも、和輝へがばっと抱きつくロゼッタ。


 「~~~~~っ、なっ!?だ、だ、だから俺は王子様なんかじゃないって!あ~~いいから離れろよっ!!・・ん?」

 はたっと、我に返る和輝は不思議に思った。

 (お姫様・・?)

 「え~~?じゃあ王子様のお名前を教えてください!教えてくれたら離れますから!」

 抱き着いた状態でニコニコしながら名前を聞くロゼッタ。

 観念したようにガクッと肩を落とす和輝だった。


 「いいか!俺は王子様じゃないからな!俺は和輝。瀬戸和輝!ただの高校生だ!」

 「高校生・・?」

 高校生という単語にきょとんとするロゼッタ。

 目をまん丸にするロゼッタに和輝が問いかける。

 「?高校生って知らねぇのか?」

 「なにかの役職ですか?騎士見習いのこととか??」

 首を傾げるロゼッタ。

 

 (・・やっぱりここは東京じゃないんだな・・しかも世界すら違うんじゃ・・海外だって高校生はいるし、なにより騎士ってなんだ・・?)

 またしてもガックリと肩を落とす和輝。



 「でも、お名前がわかって良かった!和輝様!これからよろしくお願いします!」

 にこっと笑顔でよろしくをするロゼッタに、

 

 「嫌だ!!」


 ぴしゃりと壁を作る和輝。その表情はクールで冷たい。

 「えっ!?なっなんでですかっ??お姫様と王子様は仲睦まじく暮らすんですよ?」

 わたわたと慌てるロゼッタ。

 「お前・・嫌に決まってんだろ!誰が好き好んでこんな場所で暮らすかよ!しかも王子様とか言ってる奴と・・」

 ぷいっとロゼッタに顔を背ける和輝。


 

 そんな時だった。

 バタンッ!

 「ロゼッタ様~~?只今帰りましたよ~って、ロゼッタ様は眠り続けてるんだった・・あはははっ」

 

 家へ入ってきたのは、メイド姿している女性。黒髪をポニーテールにして結んでいる。

 そのメイドがキッチンへ荷物を置いたあと、ロゼッタの部屋へ向かい、ドアを開けた。

 「あっ!?エミリー!」

 「んっ!?」

 メイドは目を疑った。目の前にいるのはロゼッタと見知らぬ男!?


 「ロゼッタ様!!目覚めたんですか!?って誰ですかっ!?これ!」

 嬉しそうにしてロゼッタを抱きしめたメイドは、ロゼッタと共にいた和輝をギラリと睨む。

 (・・俺はいったいどうなるんだろうか・・?)

 不審がるメイド・エミリーが和輝を睨み続けていると、ロゼッタが能天気に、

 「和輝様だよ!私をキスで起こしてくれた王子様ですっ!!」

 「・・・王子様・・?えっ?いやいや、こんなんが王子な訳ないじゃないですかっ!!目を覚ましてください!ロゼッタ様!!」

 (こんなんって・・)

 和輝はトホホっと肩を落とす。

 ポーッと夢うつつのロゼッタに、青ざめて指摘するエミリーは再度和輝を睨む。

 

 「あなた!どういうつもりですか!?純情無垢なロゼッタ様にキスをするなんて!ロゼッタ様にはきちんとした王子が近いうちに現れる予定だったんです!!」

 ガルルッと牙を向けるエミリーに対して、和輝は、

 「キスしちまったのは事故だ!!俺はそいつの王子になる気なんてないから!!」

 慌てて一連の事情をエミリーに話すことにした和輝だった。


 

 

 「ふむ・・事情は分かりました!違う世界からきた人間だと・・?」

 場所は変わりリビングで向かい合わせに座る和輝とエミリー。そしてロゼッタはお風呂へ。和輝と一緒に入るとロゼッタは言っていたが、断固拒否をする和輝と「絶対ダメッ」と説得するエミリーに言われ、「私が一緒に入りますから!」とエミリーが言っていたが、俺との話があるのでロゼッタは1人で入ってくると渋々風呂へ入りに行った。

 

 「そう!だから俺は元の世界に戻れればそれでいい!で?方法とか知らないか?」

 ゴクッと息を飲む俺はすがる思いで向かい合うエミリーに聞いてみた。

 「・・そんな話信じられません!・・でももし本当だとしても帰る方法なんて私は存じませんし・・」

 考えるように目線を斜め下にするエミリー。

 そしてエミリーの言葉にガクッと頭を下げる和輝。

 ジッと、不機嫌そうに俺を見るエミリー。

 「なっ・・なに?」

 「いえ・・あなたはロゼッタ様を見てどう思いました?」

 いきなりの質問で目が点になる俺。だってどうって猫耳金髪としか・・?そして思い込みが激しそうだ・・。


 「どうって・・猫耳金髪?」

 俺が口を開くとエミリーは何故か目を見開いて驚いていた。

 「えっ・・?なっなに??」

 ビクビクっと俺は問いかける。

 「いえ・・そうです。ロゼッタ様は猫耳でいらっしゃいます・・気味悪くないんですか?」

 エミリーの言っている意味が俺にはよく分からなかった。猫耳なんてコスプレでよくいるし、別段珍しいものでもない。まあ本当に生えているのは流石にいないが・・。


 「猫耳で気味悪くなったりはしねぇよ!つーか、なんでそんなこと聞くの?」

 「・・あなたは本当にこの世界の住人じゃないんですね。」

 俺の話が本当だと気付いたエミリーは、驚きながらも続けた。

 「この世界では猫は不吉の生き物と言われています。不幸を呼ぶと・・。猫耳をしているロゼッタ様は猫の呪いにより不吉と言われ、このシルバーガーデンに隔離されています。」

 (猫の呪い・・?猫が不吉の生き物・・?)

 猫好きの俺にはあり得ない話だった。

(猫に癒されることはあっても不幸になったことなんてないぞ?)


 ムーッと顔をしかめながら話を聞いていると、ロゼッタが風呂から上がってきた。

 「エミリー?お話終わった??」

 長い金髪が濡れている。乾かすのが大変そうだ。だが風呂上がりのロゼッタは頬がピンク色に染まりさっきよりも可愛く見えた。見ていた俺はロゼッタと目が合ってしまい、

 「和輝様!」

 ニコーッとしながら俺に近づいてくるロゼッタ。頭に生えている猫耳をピクピクさせながら嬉しそうだ。

 近づいてきて俺の右側に座り、俺の右腕を引っ張り組んできた。

 

 「なっ!?」

 焦る俺は、湯上りのロゼッタにドキドキしてしまった。

 そのロゼッタの行動にポカンと口を開けているエミリー。

 「和輝様と一緒にお風呂入りたかったです~」

 ニコニコしながら俺の右腕をしがみついているロゼッタ。俺はそして気付いた!


 (胸が・・胸が当たってる!!)

 口を開けてフルフル震える俺に対して、自分の行動に違和感を感じてないロゼッタ。

 俺は自分が赤面しているのが分かった。だって生まれてことのかた女子にしがみつかれたことはないし、ましてや胸が当たったことなんてない。

 ドキドキしすぎて俺はバッとロゼッタから自分の腕をはぎ取った。


「やめろっ!!俺はお前の王子じゃないし!一緒に風呂なんて入らない!!」

 俺の言葉にショックを受けたようで、ロゼッタは真っ白になった。

「そうです!ロゼッタ様の王子は別にいますから!こんな男ではないです!!」

 ビシッと俺を指さすエミリー。

 (いや・・その通りだけど、こんな男って・・言い方ひどくねぇ?)


 キョトンとするロゼッタはクスッと笑いだし、

 「だって和輝様は私の猫耳の怯えたりしなかったのよ!これって運命じゃない?」

 嬉しそうに笑うロゼッタに俺はそれ以上強気なことは言えなかった。

 (実際・・猫耳ってことで疎まれてきたのかも・・)

 俺の中で少し同情心が沸いてきた。

 (いや・・でも俺王子じゃないし!!)

 そんなことよりも、自分の世界に帰る方法だ!この訳分からん世界にずっと居るわけにいかない!とは言ってもなにをどうしたらいいのか分からず悩んでいると、隣のロゼッタが、

 「和輝様!もし良かったらここで一緒に暮らしません?」

 「えっ・・?」

 ニコッと笑いかけるロゼッタ。

 そんなロゼッタの言葉に俺は考えた。とりあえずの住む家が必要だ。いつ帰れるか分からない状況で俺はこの家で居候になること考え、散々のロゼッタの説得にエミリーも帰るまでならと納得してくれた。

 異世界に迷いこんだ俺を受け入れてくれたロゼッタとエミリーに感謝した。そして俺はこの世界でとりあえず生きようと思ったのだった。ホッとして脱力した俺にロゼッタが、

 「一緒に暮らしていつか夫婦になりましょうね!」

 「絶対嫌だ!!」



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