出逢い
真っ暗な闇の中、ある大国の城の中で事は起こった。
ある寝室で幼い少女の叫び声が鳴り響いていた。
「ああああ~~~っ!!!」
ベッドに横たわる少女は金の髪をし、その頭を押さえながら涙を浮かべ苦しそうに枕をつかんでいる。
少女の叫び声に慌てて、廊下を走る同じ髪色をもつ女性が走って寝室へ向かった。
バンッとドアを開けて少女へ近づく女性は、
「ロゼッタ!!」
慌てながら少女の名を呼び、少女の体を起こそうとした。
その瞬間、女性は目を疑った。
少女の姿に女性は言葉を失い、愕然としている。
「・・・・・ママ・・?」
青い瞳に涙をためて、ゆっくりと起き上がった少女。頭から手を放す少女の頭には・・。
高層ビルが立ち並ぶ都会で、朝のさわやかな日差しを浴びながら、ここに学校をさぼろうとしている男子高生がいた。
学校へ行こうと河川敷を歩いていたが気が変わったようだ。
「めんどくせぇ!よし!さぼるかっ!」
くるっとまわれ右をしたこの高校生は、ダークブラウンの髪をし右耳にピアスを3つ、そして左耳に4つのピアスをしている。ブレザーの制服は適当に着ているようで着崩れしている不良学生だ。
「こらっ!待ちなさい!」
学校から遠ざかろうとしている彼を呼び止める女の子の声。
声を方へ顔を向ける彼の前に現れたのは、肩までの切りそろえられた髪をし、ヘアピンを左耳の上で止めている。その女の子の表情は見るからに不機嫌そうだ。
「げっ!?綾崎!?」
嫌そうな顔で綾崎という女の子を見る不良学生。よりによってこいつに会っちまった・・とガックリしている。
「瀬戸!あんたまたさぼる気っ!?いい加減にしなさいよっ!そんなんだから先生達にろくでなしって言われるのよ!高校生になったばかりでしょうがっ!」
キイッとむきになって不良学生改め瀬戸に、食ってかかる綾崎。
聞きたくないと言わんばかりに、両耳を両手で塞ぐ瀬戸。
その仕草に余計にイライラ感を募らせる綾崎は、右手を振り
バシッと瀬戸へ平手打ち!
(!!??)
一瞬なにが起こったのか分からなかったが、すぐさま、
「いってぇ!!なにすんだよ!綾崎!!?」
平手された左頬をさする瀬戸は抗議する。
「うるさいっ!あんたなんか・・あんたなんか・・留年すればいいんだからああああ~~!!」
泣きそうな声で駆けていく綾崎の姿をぽかんとしながら1人佇む瀬戸だった。
「な・・なんだったんだ?あいつ・・??」
不思議に思いながらも、綾崎の忠告を無視し瀬戸は学校とは反対方向へ歩き出した。
学校には行かず、ゲーセンやバッティングセンターなどで遊び歩く瀬戸。
そんな中、ゲーセンで遊んでいると、
「あれ~?和輝?お前学校は?」
「ん?」
振り返ると、茶髪で私服姿の少年。瀬戸と同じ年くらいだ。
「筒井?学校ってお前こそ・・っていうか、制服すら着てねぇじゃねぇか・・」
「サボってみました!」
キラッと瞳を輝かせながらピースをする筒井。
(いや・・キラキラしながら言うセリフじゃねぇから・・)
うんざりという顔をする瀬戸。
「サボってんなら俺と遊ばねぇ?」
にこやかに誘う筒井だったが、瀬戸は今回は遠慮すると言ってゲーセンを後にした。
(つーか・・今日はあんまり人と関わりたくないんだよなぁ~)
これ以上何かする気が起きず、瀬戸は自宅へ足を向けた。
その最中だった。
住宅街を歩く瀬戸の目の前に猫!しかもその猫は珍しく金の毛並をしていた。
猫を目視した途端、瀬戸の目は輝いた。
そう、瀬戸和輝は無類の猫好きだ。白猫、黒猫、三毛猫なんでも大好きなのだ。
大きな目に愛らしく「ニャー」と鳴かれる姿は、和輝の癒しだった。
(しかも金色の猫?珍しいっていうか初めて見た!)
ドキドキと胸打ちながらも、ゆっくりとゆっくりと猫へ近づく和輝。
「ニャー」
鳴いたと思ったら、和輝といる方向と反対に走って行ってしまった。
(一回でいいから触ってみたい・・!)
触りたいが故、金色の猫を追いかける和輝。
金色の猫は何故か止まりながら、和輝が近づいていくと走り出すといったような挙動不審な行動をしていた。
だが、おかげで和輝は猫を見失わずに追いかけていた。
すると、猫は木の多い公園へと入っていった。そして追いかけるように和輝も公園へ入っていく。
公園へ入ってしばらくして思った。風景が変わっているような気がすることに・・。
木が多い公園というか森の中に入ってしまったような感じで、公園なのに遊具やベンチなどはまったく見当たらない。
(どういうことだ・・?)
そのまま金色の猫を追いかけて、和輝の目の前に開けた場所と、そしてそこからは光が零れていた。
森の中を突っ切って、光が差し込む場所へ出た和輝。
その風景を見て目を疑った。
「な・・なんだよ・・これ・・?」
和輝の目の前に広がる風景は、公園の中とは思えないような植物園かっと言わんばかりの花や植物で、ガーデンのようだ。しかもその中心に小さな白と基調とした家も建っている。その家だがまるでイギリスかフランスかといった感じの家だ。
しかも遠くの方を見てみると、都会にはないような山や川などもある。ダメ押しで遠くには城っぽいものさえ見える。
和輝は口をパクパク開けながら、顔色は青ざめている。
(ちょっとまて!俺は猫を追いかけて公園へ入った!・・んで、なんで俺はこんなイギリスっぽい所へいるんだ??)
頭をグルグルさせながらうずくまり考え込む和輝。
「・・とりあえず考えてもしょうがない・・人に聞いた方が早いよな・・」
むくっと起き上がり、小さな白い家に近づく和輝はチャイムがないことに気付いた。
「どうやって・・呼べと?」
仕方ないのでドアをドンドンし、中の住人へ問いかける。
「あの、すみません!尋ねたいことがあるのですが・・」
返答なし。
黙って入るわけにもいかんだろうと思ったが、何度ドアをドンドンしても返答なし。
(おいおい・・どうしろと・・)
悩んだすえ、和輝はドアノブへ手をやった。するとドアは開いた。
「不用心だな・・」
そろっと中へ入る和輝。中も日本とは思えないほど外国っぽいというか、なんか童話の中の家みたいだなと一瞬思った。
玄関はなかったので、そのまま土足で中へ入った。
(完璧、俺不法侵入だな・・捕まっても文句いえねぇかも・・)
恐る恐る中へ入った和輝は、人の気配を感じた。
(うっ!?やっぱ誰かいた?やっべぇ、俺警察行きかも・・)
人の気配がするようへドキドキしながら足を向ける和輝。
その気配がする部屋の前でゴクッと息を飲んだ後、勢いよく
バンッ
「すみません!勝手に入って!警察へ引き渡す前に教えてほしいんです!!」
目をぐっと閉じたまま、自分の主張を伝える和輝だったが、主張を言った後もシーンとしていたため、ビクビクしながらも目を開けた。
目を開けて、和輝はしばし見とれていた。目を見開きながら。
和輝は開けた部屋は寝室で、ベッドには少女が横たわっていた。
金色の長い髪をした少女で、体格は小柄。ピンクと白のドレスを身に纏っている。レースやらフリルやらで、中世ヨーロッパのドレスのようだ。なにより驚いたのは、少女の頭には猫の耳がついていた。
少女が寝ているベッドには花がたくさん飾ってある。
まるで、亡くなったかのように・・。
近づく和輝は、少女の顔を確認した。
亡くなってはいないようだ。頬には赤みがあった。
ホッとして顔を上げる和輝だったが、
(寝てるだけか・・?あんだけドンドンしてまだ寝れんのかよ・・・それにしても、なんだ?この猫耳?コスプレか??)
起きる気配がない少女は後回しに、他に人がいないか調べようとした時だった。
足元にあったビンで足を滑らせる和輝。
「!?うおっ!??」
そのまま足を滑らせた和輝は、ベッドに寝ていた少女の上へ。
ちゅっ
「!!??」
少女に覆いかぶさってしまった和輝は、なんとそのまま少女へ口づけてしまった。
「~~~~~っ/////」
ばっと体を起こす和輝は赤面。
「~~~/////・・・いやいや、これは事故だ!ただの事故だっ!!だあーー!!赤くなるなっ俺!!」
ベッドへ背を向けて、自問自答で心臓の鼓動を抑えようとする和輝。
自問自答でわあわあしていると、後ろのベッドの軋む音が聞こえた。
ギシッ
後ろを振り返ると、少女が起き上がっていた。
あれだけ大きな音をしても起きなかった少女が・・・。
そして少女は和輝を見つめた。
その少女の瞳は、吸い込まれそうな青い瞳だった。その瞳にドキドキする和輝。
ニコッと笑った少女は、いきなりベッドから立ち上がり和輝の手を取った。
「ありがとう!王子様!」
にこにこしながら少女は、和輝に王子様と言ってきた。
なにが起きたのかよく分からない和輝は思わず、
「はいっ!!??」
そう言わずにはいれなかった。
金髪の青い瞳の少女。そして現代の男子高生及び不良。いきなりキスをしてしまい、いきなり王子様っ!!??
どういうことですかっ!?