転生
「…雄也だっけ?お前結構ヤバイな…。」
(いや、お前ほどじゃねぇし…。)
呆れてものも言えない俺。何だこいつ怖。
「いや、それ俺のセリフだし…」
神が疲れたように言う。なんかムカツクなぁ。
でもこの存在は正真正銘神なのだ。
俺がずっと求めていた存在なのだから、ここで機嫌を損ねるわけにはいかない。
「もう遅いけど。」
神がなにか言っている。キコエナイキコエナイ。
「ていうか、俺がさっきヤバイって言ったのは、お前のルックスに対してだぞ?」
えっ?
「えっ?」
今なんて言ったこの神。
「いや、だからぁ!お前のルックス!めっちゃくっちゃかっこいいじゃん!!」
何だこの神、喧嘩売ってんのかよ。
おれば不細工でおっさん体型だけど喧嘩はそれなりだぞ?
「なんでいきなり喧嘩売ってきてんの?」
僕はキレ顔でそういった。
「え?」
「え?」
話が噛み合ってない。誰か通訳紹介してよ…。
(私が説明しますね。)
突然、可愛らしい声が脳に直接響いてくる。思わず後ずさってしまった。
(うわっ!なんか聴こえた!)
(私は神の下僕のルカです。今は念話で、あなたに話しかけてます。あなたが心で思ったことが私には聞こえるのであなたは変な意識はしなくて結構ですよ。)
(へぇ…念話ねぇ…。まぁ神がいるんだしそういうこともあるんだろうな。続けてどうぞ。)
(話が早くて助かります!実はですね…うちの神様…人と比べて美的センスがちょこ〜っとあれなんですよね〜)
(あれって?)
(なんといいますか…常識の正反対の感性といいますか…。)
(えっ!あ〜だから俺のことを…。って俺って宇宙レベルの、ブスってことかよ!)
(あはは…)
(まぁわかってることだしいいや。ところで神はその…自分の美的センスがおかしいこと、知ってるの?)
(それが…誰も言えないんですよねぇ…まぁ神ですし、当然と言えば当然ですけど。)
(へぇ。じゃあ、この会話聞かれてたらやばくないか?)
(その点はこちらが手をうっておいたので大丈夫です。では、用事がすんだので私はこれで。)
(あぁ、ありがとう。)
…ふぅ。会話を終えてホッと1息。敬語でしゃべるべきだったかな。
まぁあっちは気にしてなさそうだったしいいか。
ルカちゃん。なんか便利な存在だったな(小並感
(ところでさっきルカちゃん、神に手をうっておいたって言ってたけど…なにをしたんだ?)
気になって神の、ほうをみてみる。
(あれ……?)
先ほどと何も変わっていない。
(まぁ、俺がきにすることでもないか。)
「神様。先ほどの話の続きなのですが…」
じつは、さっきの、ルカの話を聞いて思いついたことがあった。
神は、この体をかっこいいと思っている。この不細工の体をだ。
神の感性が逆ならば、神にとって不細工な体。つまり俺の望むかっこいい体にこの体を交換してもらう。これは悪い取引ではないのではないだろうか。
むしろ悪いものといい物を取り替えてもらう。これはいい取引。
まさに発想の勝利。まさにwin-winの関係。
ゆとりの国の王子様もこれには満面の笑みだ。多分。
「私のこのルックスを不細工なものに変えてもらえませんでしょうか!」
にやり。
「それは、どういうことだ?」
確かにお前にとっては言ってる意味がわからないかもな。
ここからは…俺のターンだ。
「僕は…もてすぎて辛いっ!行く先々で女の子から声をかけられ、行く先々で男からは妬みの視線を受ける。こんな生活はもう嫌なんです。おねがいです!ぼくを不細工にしてください。神様!あなたならできるでしょう?お願いします!これはあなたにとっても悪い取引じゃあないはずだ。」
これでもか、というくらいに演劇部の本気を出し切った俺はふぅ。と1息。
(さぁ神…どうでる…?)
「いいだろう。」
驚くほどあっさり了承された。
(意外に軽いな…)
ただし、と神は付け加える
「やるなら今すぐだ。それ以外ならこの話はなかったことにする。」
それはこちらとしても願ったりかなったりだな。
「大丈夫です。お願いします!」
俺は二つ返事で了承する。
直後、世界が暗転した。