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四つの島  作者: ぎあん
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第3話 ギルド

「あっ。多分ここです。着きましたよ。」

 元気そうな声でサーリャが言った。いったいどこにそんな元気が残っているのだろうか。

 あれから結局何回か道に迷い、休憩したいが市街地に行くに連れてベンチが減り、かれこれ一時間近く歩いていた。正直どこかで休みたい。

「はぁ。やっと着いた。で、その登録できる場所はどこだろう?」

「多分中だと思いますよ。」

 ギルドまでの石段を登り、入口が見えてきた。『ギルドへようこそ!』と書かれた看板がある。その扉を開けると。その中には何十人もの人がいた。おそらく冒険者か傭兵か何かなんだろう。

 中はとても広く幾つものカウンターがある。その中の新規登録者受付というカウンターに向かった。そこにいた受付嬢が声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。ようこそギルドへ。ではまずこの登録用紙に必要事項を記入してください。」

見事なマニュアル通りであろう言葉のあとに、一枚の紙とペンが渡された。チーム名、メンバーの名前などの欄がある。

「チーム名って何にする?」

慎也が聞く。ここで自分の独断で厨二病臭いネーミングをするわけにはいけない。第一、恥ずかしすぎる。

「慎也様が決めてください。私は何でもいいので。」

「いや、僕にもそんな案無いんだけど…」

慎也は頭をフル回転させる。が、どれもなんかパッとしないものばかりであった。その様子を見ていた受付嬢は苦笑いしながら

「あの、チーム名に関してはチームの代表者の方の名前だけでもよろしいですよ。」

と、もっと早く言って欲しかった言葉を口にした。サーリャにも確認を取って結局代表者、慎也の名前を記入することにした。

 次の名前も慎也が先に書いて、そのあとサーリャが書き終わって受付嬢に手渡す。受付嬢は紙を確認して30秒ほどたったあと。

「分かりました。登録完了です。」

「えっ、それだけでいいんですか?」慎也は尋ねる。いくらなんでも早すぎると思ったからだ。

「ここには素性のわからない人や身分を証明できない人なども登録されます。別に依頼は実力さえあればいいので、あんまり確認しても意味がないのですよ。しかもここで発行されるギルド登録証明書が身分証明になりますから。それ欲しさに登録する方もいらっしゃるのです。ただこちらとしても依頼も受けないのにギルド証明書だけよこせ!というのも困りますので、2年以上こちらに顔を見せないことになると失効してしまいますのでご注意ください。」

このパーフェクトな回答に慎也は分かったようにと頷く。それを見て受付嬢は話を進めた。

「で、ギルドの報酬金はギルド預かりにされます?それともそのまま受け取ります?」

 受付嬢は聞いた。もちろん慎也にはなんのこっちゃわからないので

「すいません。それらの違いってなんなのですか?」

「あ、はい。ギルド預かりというのは報酬金は全額ギルドが預からせていただいて。報酬カードというものにその額を書かせていただきます。あなたはその範囲内でギルドから金を引き下ろすことができます。一方、全額受け取りは報酬金をその場で全額お支払いさせていただきます。」

慎也は頷く。そしてサーリャに相談することにした。金銭の事なので一人で管理するのは自信がない。

「サーリャ。どっちにしたらいいと思う?」

いきなり意見を聞かれたサーリャは一瞬戸惑ったが

「全額いっぺんにもらっても嵩張るだけですので、ギルド預かりにされたらいかがでしょうか?」

と答えた。自分なりに答えられたつもりだ。

「じゃあ、ギルド預かりでお願いします。」

「かしこまりました。それではギルドのシステムについて少々説明させていただきますので、こちらへどうぞ。」

と、慎也たちは奥へと通された。受付嬢に導かれるままに進んでいくと部屋があった。部屋に通されると20代位の女性が一人座っていた。

「あとはこちらの案内係がご説明しますので、どうぞお掛けください。」

慎也たちは席に座った。案内係の人は受付嬢が退室したのを確認してから袋を取り出して慎也に手渡した。

「そちらの中に入っている冊子がギルドの案内の冊子です。また、2枚のカードが入っていますが、それはギルド登録証明書と報酬カードです。お確かめください。」

袋を開け、中を確認する。その中の冊子のなかを見てみると中は文字の列。挿絵なんて無い。普段全くと言っていいほど本を読まない慎也のとってはまさに読む気のなくなるような内容だった。

「ねえ、サーリャってこれを読んでたの?」

「はい。普段はそれくらいしかやることがなかったので。」

奴隷にどれだけ娯楽がなかったのかと思う。だからといっても、自分が奴隷だったらこれを読むことはまずないだろう…その前に自分は絶対奴隷にはなりたくないが……

「では、よろしいですか?」案内係はちょっと気まずそうに言った。

「あっ、はい。お願いします。」

慎也は少し恥ずかしい気分になった。

「まず、依頼のシステムです。主に依頼は3種類に分けられます。一つは納品。主に決められた日時までに頼まれた品を届けるという内容です。初心者向けのものが多く。駆け出しの冒険者にはお勧めです。

 二つ目は討伐。主にモンスターですが、高いランクになると盗賊団や海賊などの掃討の以来も回ってきます。

 三つ目は護衛。主に商隊や貴族の護衛を行います。これはギルドの高ランクの方に回ってくる依頼です。他にも色々とありますが、だいたいこの三つに分類されます。」

「へぇ、なるほど。」慎也は相槌をうつ。一方サーリャはもう知っていたと言わんばかりの顔をしていた。

「続きまして以来の受注等についてです。依頼は受注カウンターでお受けください。基本的に契約は何個でも掛け持ちすることができます。しかし、護衛依頼と一部の特別な依頼はそれのみの単体での受注となります。」

 慎也は頷く。実際は7割位しか理解できていないのだが。

「ここまでで何か質問はありますか?いや、ありますよね。 」

案内係は確信しているようにいう。まずい、完全に心理を読まれていたか…なんとなくそういう時って焦ってしまう。

「まず、冊子のページをちゃんとめくってください。途中から上の空になっていますよ。」

 その言葉に慎也は慌ててページをめくる。この冊子、90ページ近くあるため、どこのページかよくわからない、しかも目次がないのだ。不便なこと極まりない。

「35ページです、次から36ページに移ります。よろしいですか?」

はいと答え、慎也は36ページを開く、万が一わからなくてもサーリャがいるから安心だと思って上の空で聞いていたが、まさかバレてるとは。そういえば数学の授業でも何回かこんなことあったっけ...

「では、依頼の完了についてです。依頼が完了したら、報告カウンターに向かってください。そこで報告や納品を行なっていただきます。以来の完了が確認できたら報酬やクリアポイントの加算などを行わせていただきます。しかし、依頼の失敗の際には違約金をお支払いしていただくことになりますのでご注意ください。」

 さっきからの覚えるべき事の多さに疲れてきた。しかし、案内係はそんなことを気にすることなく説明を続ける。

「では次にクリアポイントとランクについて説明させていただきます。依頼をクリアするとクリアポイントが貯まります。クリアポイントは一定量加算されるとランクが上がるようになっています。あなたのランクは今『F-』ここから『F』『F+』『F++』『F+++』『E−』のように上がっていきます。」

「あ、そういえば武器とかはどうなるんですか?」

慎也は聞いた。途中で聞こうと思ってきたのだが完全にタイミングを逃したのだ。それに対して

「武器はお好きなのを使用していただいて結構です。しかし、非常に強い毒ガスなど一部使用禁止の例外もあります、ですので基本的には剣や槍などの近接武器、弓などの遠距離武器に分けられると思っていただければいいと思います。」

という、ほぼ完璧な回答が帰ってきた。流石にこういう質問に答えるのも慣れているのだろう。

「説明はこれくらいです。そのほかわからないことについては冊子をご覧ください。では、失礼させていただきます。」

案内係は立ち上がろうとする。しかし、突然思い出したかのように再び座り直した。

「そこの奴隷のお嬢さん。」

 えっ、といきなり指名されたサーリャは驚く。そのあと、案内係は慎也にむかって言った。

「一応ここで奴隷解放の手続きもできますがいかがなさいます?冒険者という立場上奴隷の身分では色々と不都合が多いのですよ。依頼の信頼にも関わってくる問題でもありますし。」

確かに、一般人からしてみれば高い金を払って依頼を出しているのに受注者が奴隷では信用しきれない。案内係が言うことには一理あるだろう。

 慎也が「はい、お願いします」と言おうとした瞬間サーリャが

「いいえ、結構です。」と答えた。

「えっ、なんで。別にサーリャを奴隷の身分で留めておく必要はないでしょ。」

 サーリャを買ったのはあくまで男の手から守るのが目的であってくれぐれも自分のためというわけではない。今すぐにでも解放したほうが良いだろう。それが慎也の考え方だった。

「いえいえ、奴隷のほうが宿など安いですから。ご主人様に金銭面で負担をかけるわけには行きません。」

 一方、もともと一文無しの主人に迷惑をかけられない。自分はどれだけ質素でも良いから慎也様には普通の生活を送ってもらいたい。そのためには奴隷の身分の方が多少都合が良い。そういう理由で解放を拒んでいた。

「すいません、解放手続きやっちゃってください。」

 慎也はさっきのサーリャの言葉を無視し、手続きを進めることにした。

「だめですっ!」

 サーリャは必死に止めようとする。彼女としても奴隷という立場からは正直解放されたい。しかし、自分を助けてくれた命の恩人に負担をかけたくはなかったのだ。慎也が受け取ろうとしたペンを取り上げ

「私は奴隷のままで結構ですので。ご主人様は気になさらず。」

「どうしてもダメ?」

「はい、私は奴隷のままで結構ですので。」

「じゃあ、主人としての命令。お願いだから奴隷から普通の人間に戻って。」

この言葉に、サーリャは反抗できなかった。一応奴隷としての身分上、主人の言葉には絶対服従、主人に逆らうと待っているのは『死』なのだ。

 慎也は、サーリャからペンを取り返すと奴隷解放証明書というのにサインした。これにより、サーリャは正式に奴隷から人間に戻った。

「分かりました、これで解放手続きは完了です。」

そう言うと、案内係は書類を手に退室していった。

 かれこれ1時間位説明され、1時間位で奴隷解放をしたあとの慎也は頭の中が混乱し、グチャグチャになっていた。その横で

「で、分かりました?」と聞いてくるサーリャ。

「わかると思う?この説明で?」慎也は答える。顔には疲労の色を浮かべている。説明終了の時に「やっと終わったー」と口から零れそうになったほどだ。

「と、いうことは分かってないということですね。」

サーリャは笑った。さっきまで奴隷だったとは思えない顔である。

「そういえば、これからどうする?もうすぐ日の入りだと思うんだけど。」

 慎也は言う。実際慎也の手元には金がない。だからといって野宿は流石にしたくない。24時間前は普通の生活を過ごしていたため、流石に今夜の宿は公園というわけにはいかないと思っているからだ。

「そうですね。これからどうしましょうか。慎也様。」

「うん、どうしようか、あと、様付けするのやめない?もう奴隷じゃないわけだし。」

「いいえ、奴隷から解放されても私を買っていただいて命を救っていただいたのにはかわりありませんから。」

「はぁ、でももう一文無しだしね……」

「だから私の奴隷解放には反対だったんですよ。私が奴隷だと一人半位の金で済んだのがこれから二人分かかりますからね。そんな余裕ご主人様にはあるんですか?」

 サーリャは呆れながら言う。実際、慎也は1リラも持っていないのだ。このままでは慎也が恐れていた自体になりかねない。しかし、そんな状況なのに不思議と後悔はしなかった。

「このままでは今日の宿だけじゃなくて食事も無理ですよ。」

「はぁ、困ったな。そういえば朝から何も食べてないからね。」

 慎也が深いため息をついたその時、ギルドの食堂から一台のワゴンが出てきた。ワゴンには『Fランク冒険者限定!期限切れ寸前弁当無料配布!」と書かれていた。そして、ワゴンを持ってきたおじさんが大きな声で希望の言葉を叫んだ。

「今日は限定30!1チームひとつまで!早い者勝ちだよ!」

その声に多くの冒険者が詰めかける。もちろんその中の一人に慎也もいた。

しかし、何もFランク=弱いというわけでもないようで、当然体のでかい人も押し寄せてくる。弁当のワゴンの周りで慎也もサーリャも押され続けていた。

「今日、本当にどうしよう……」

慎也が本日何度目か分からないため息をつく。 結局、弁当を確保することはできず、残ったのは疲労だけであった。二人は完全に疲れきって椅子に座り込んでいた。もうすでに日は傾いている。

「一個も取れませんでしたね…」

サーリャも、表情こそまだ多少の余裕がありそうだが、実際、かなり疲れきっている。しかも男に鞭打たれた分の疲労もあるのだ。はっきり言って慎也より遥かに疲れている。

ギルドで座っていても埒があかないのでそろそろどこか別の場所への移動を考えた時だった。突然後ろから

「あんた達、弁当撮り損ねたのかい。」

という声が聞こえてきた。振り向くとそこには50代くらいの黒い髪のおばさんが仁王立ちしていた。

「あんたたち駆け出しのFランク冒険者かい?何も食べないで依頼なんか出たら腹減って死んじまうよ。お金ないならついて来なさい。ご飯と寝るところだったらあるから。」

 いきなり親切にしてくれる人に出会った慎也たち。慎也とサーリャは顔を見合わせて緊急会議が始まった。

「どうする?」

「ついて行きませんか?お金にも今日の宿にも困っているのは事実ですし。」

困っていることは事実だし、このままでは野宿決定なので、サーリャの提案に乗りついておばさんに行くことにした。ギルドを出て大通りを歩いていく。

「あの、すいません。」慎也がおばさんに声をかける。

「ん、なに?あと私はアンナ。」

「あ、すいませんアンナさん。で、なんで声をかけてくれたんですか?」

見知らぬ人に宿と食事を提供する。なかなか見られる光景ではないだろう。慎也もTVなどにそんな手口の詐欺や恐喝があることを知っていた。信じたくても、なかなか完全には信じきれないのだ。

「私は人にお節介を焼くのが趣味でね。あ、見えてきたよ。あそこが私のやってる宿兼食事処。ここに下宿していいから。」

 見えてきた建物は3~4階建ての建物だった。しかし、宿屋を示す看板が掛けられている。また、入口には暖簾も上がっていて、居酒屋というような雰囲気になっていた。

「さあ、入っておくれ。歓迎するよ。」

アンナは暖簾をくぐってドアを開けた。二人はアンナに導かれるままそのドアの中へと入っていった。

皆さんこんにちは。ぎあんです。

いつの間にかお気に入りに登録していただいていることを知って本当に嬉しく思っております。

もう、完全にシステム説明みたいな話になってしまいました。面白くなかったらすいません。

相変わらずこんなんですが、これからもよろしくお願いします。

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