004 - 戦う意味
「で、ここは軟弱な貴様の深層意識。まあ、心の奥だと言うことだのぉ……うむむ?」
「やっぱりそうかよ! 分かっていたんだよ、オレは! ってどうしたの?」
「魔物の気配がする……しかも大軍だ。ブリタニアも落とされるな」
「ええ?」
召喚されて間もないというのに……何でこんなことに……。
っつか今の今まで実感がわかなかったけど、改めて敵が来たと言われると……怖い。
どうしよう……こんな時、バグちゃん(仮)、チートくん(仮)、リアル写輪○ちゃん(仮)……あなた方ならどうされますか?
バーカ、何を考えているんだ。ここにいない人間に答えを求めても返ってくるはずがないだろ。今すべきことは自分の頭で考えて自分で決める。
だから、
「なあ、言ったよな? きみは『僕』の一部であり僕の力だって」
「……」
「お願いだ。力を貸して欲しいんだ」
「フン! 良かろう。だが条件がある」
条件って? と僕は首を傾げる。てっきりハイどうぞありがとー的に力をゲットするのかと思ったから。
M少女は歩きながら僕に人差し指を向けて言う、
「今持てる力を全て用いて妾を屈服させてみよ」
…………ハイ? なんですと?
「弱い主に従う義理も義務もない。否、主に従うなど御免被る。妾を欲するならば力尽くで従わせることだのぉ」
「ちょっと待って……! て、展開がよめ」
「問答無用!」
刹那、M少女が眼前に現れた。いつの間にか右手に持つ自身の身長より大きい剣を振り上げる。
「本気で参る。気を抜くと死ぬぞ」
ヤバイ……とにかく動かないとヤバイと思い、とにかく横に飛ぶ。
スパッ! オレが立っていた場所に剣が刺さった。いや違う空気や地面ごと剣で斬った。振り回しただけで小さな衝撃の風がここまで届くし、剣の切れ味は地をも切断する……とかありえねえーだろ。いやいや、今さらファンタジーな世界について文句を言うなんておかしすぎるだろ
あれ? っつかあの剣おかしいぞ……よくみると腕から出てる黒い霧が刃を構成しているみたいな感じ。いわゆる魔力で作ったソードってやつですね、わかりますよ!
「考え事かのぉ?」
うそだろ……後ろからM少女の声が聞こえたと同時に前へと飛ぶ。案の定、スパッと空と地を切断する音が聞こえた。一秒でも遅れたらマジでやばかった。っつかこんな戦い本当に意味があるのかよ、誰かが支配して支配されるとか……。
「以外にもねずみのようにキョロキョロと動きまわるのぉ」
自分の右手に生えた剣を眺めながらM少女は何か思い付いたように言う、
「あ、そういえば今の貴様はただの人間だった……すっかり忘れていた」
「……え、うそだろ……?」
剣の形をしていた黒い霧は姿を変える。
右手から生えるように現れたのは、銃だ。
姿形からしてハンドガンだ。
「うむ……こちらの方が手っ取り早いのぉ」
銃口をオレに向ける。
あ、やべえ……逃げなきゃ……考えて直ぐに実行しようとするが、
「さようなら」
バンッ!
空間に響いた銃声。それが耳に届いたときに、痛みが全身を走る。
――胸を、心臓に直撃した……こんなのってねえよ……。
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何でオレは戦いたいと思ったんだ?
魔物が攻めてくるから?
怖かったから?
自分だけでも逃げ切れる力が欲しかったのか?
いや、どれも違う。
逃げ出せばオレを助けに来てくれた人たちを裏切ることになる。確かにオレの都合を考えず向こうの都合に合わせて勝手に呼ばれた。最初は何で万能的な周りのやつらを呼ばなかったのかなと思った。実際オレは他と変わらない普通で平均的な人間だし取り柄もなければ特技もない。だけれどオレが呼ばれた。というか、ぶっちゃけると考えるのがメンドクサイ。あいつらがオレより出来る? オレがあいつらより劣るだって? んなもん知るか。異世界に来てパニクってたのかも知れないが比較したって答えは見つかるわけない。ならさ、今自分に出来ることをしようよ。
オレがすることは何だ?
立ち上がれ! そして前を見据えろ! んで最後はみんなをまもってみせろ!
戦うのは嫌いだ。誰かが気付くのはもっと嫌だ……だから守る!
あの日……気付いた小さな不幸じゃねーか。
だから守れっ!
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「ほほぉー……心臓を妾の銃で撃ち抜いたというのに、まだ立つか?」
M少女は胸を抑える俺を見下しながら呟いた。
ああ……立つよ何度でもな。こんなしょうもうない所で倒れているヒマないんだ。
「なあ、名前は何て言うんだ?」
「名はない。それに聞いてどうする?」
オレの問いに僅かだが寂しそうに答える。
何故だろうな……たぶん、オレと一緒か。
「『シエル』ってどうだ? オレは海斗、海って書くし。だからきみは空、『シエル』だ」
「……か、勝手に決めるな」
「お願いだ。オレに力を貸して欲しい」
「……それは力尽くでせよっと妾は言った」
ああ、確かに言ったよな……力で私を支配しろ云々って……だがな、オレは気付いたんだ。
誰にも負けない自身がある、オレの本当の強さってやつを。
「誰にも傷ついて欲しくないし傷つけたくない。暴力だって大嫌いだし反対だ。本当は戦う気すらだってない」
でもな、と付け足す。
「オレに力があるのなら、その力で誰かを守って笑顔にしたい」
戦いたくない……。
だから他の人達に押し付けたかった。
けど、守ることなら……。
「理想ばかりを並べたところで」
「ああ、因みにきみはもう負けているからな」
「なに?」
「ここは現実ではなくてオレの精神世界だって言う事だ」
つまりは精神世界では心の強さがそのままオレの強さになるということ。
否、今気づけば精神世界という全てがオレが思うがままに操作できるのだ。
こんな感じに、
刹那、
「よー」
「な、なんじゃと……」
シエルちゃんの後ろに一瞬で回り込むことなど朝飯前だ。あれ? かめはめ波できるんじゃねーの? あ、でもな……シエルちゃんがいるし。恥ずかしい。
「オレの勝ちだよね? っつかシエルちゃんに勝ち目ないし」
「くっ……わかった。貴様に力を、妾を与えようのぉ」
「よし、オレも精神世界の半分をシエルちゃんに上げる」
「馬鹿か貴様。貴様をいわばここは貴様の魂であり心であり貴様であるのだぞ。そ、それを半分も失うということは……」
「寂しんだろ?」
「え……?」
「わかるから」
シエルちゃんの人格というか行動原理っつか……色々と、前のオレに似てる。自分自身を許せず嫌いだったオレに……。
たぶん、あの時のオレなんだよ……きっと。なら教えてあげないとな。本当の意味での繋がっている理由ってやつをさ。
「ということで、よろしくな」
「……貴様という人間は……。妾は必ずや貴様を死なせないぞ」
「ああ……って心変わり早いな、助かるけど」
「う、うるさい! べ、別に貴様が心配なわけではないからのぉ? 精神世界を半分ずつ共有しているということは貴様の死は妾の死へと繋がる。妾はまだ死にたくないからのぉ」
「いや、共有してなくても、もう一人のオレだし。オレが死んだら結局は死ぬよな?」
「……貴様、もういっぺんしんでみるかのぉ?」
「遠慮します!」
「宜しい。では現実世界に戻り、今の絶望的な状態から逆転するぞ?」
「おおー! 頼もしいね、シエルちゃん」
拝啓、バグちゃん(仮)、チートくん(仮)、リアル写輪○ちゃん(仮)……この世界にきて新しい友達が出来ました。何ともう一人の自分です。今からシエルちゃんと一緒にブリタニアを救いに行きます。
あれ? そういえばオレの力って結局何?




