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003 - クーデターと人類滅亡

「アンドレイ皇帝陛下、お待ちください」

「今はプライベートの場だ。兄でいい、アントニオ」

「はい、兄上」


 イギリスに位置する国がブリタニア。夏目海斗が元居た世界で言う処のイングランドとスコットランドはこの世界ではブリタニアの領土つまりブリタニア王国なのだ。夏目海斗の世界のイギリスと同じくこの世界のイギリスも連合王国なのだが、二つの国家で構成されている。ブリタニア王国とイタリア(こちらの世界ではローマ王国と言う)。


「勇者様が召喚された同時刻、ローマから通信を受信しました……」

「……内容は?」

「敵勢力はもの凄い勢いで兵力を増加及び強化されているとのこと。そして、ローマ王国は壊滅」

「……そうか。これで残すところは私たちのブリタニアのみ、か」


 ブリタニア城、首都ロンドンにそびえ立つ巨大な城。そして、人類最後の砦。

 ローマ王国が落された今は、残る国はブリタニアのみ。先ほど召喚された勇者こと夏目海斗が聞いたら、「なるほど1vs99じゃねーの」と呟きながらパニックするだろう。


「兄上! 一刻を争う緊急事態。直ちに召喚した勇者の実力を測り、使えるのなら実戦投入するべきです」

「我が弟アントニオ。彼は私たちの勝手な都合で召喚した異界の民だぞ?」

「分かっております、しかし我々に後がないのも事実です!」

「……彼も人だ。それに召喚の儀は唱える側も呼ばれる側も体力と精神力を削る。さすがにその状態で覚醒の儀は行わせるわけにはいかない」


 ブリタニア城の王族と騎士と専属の世話係のみが入ることが許された王室。そこで長いテーブルに向き合うように座り言葉を交わす二人の青年。一人はローマ・ブリタニア連合王国第四十九代国王アンドレイ・PG・ブリタニア。もう一人はブリタニア王国王子アントニオ・SE・ブリタニア。


「だがローマ王国を敗れた今、残された国はブリタニアのみ。魔物軍がいつここに攻めて来るのかも分からないが故に出来る時にやるべき対策を練るのが得策ではないだろうか?」

「休息の時も立派なやるべき事だ。大丈夫だ。魔物軍もすぐにここに来るわけではないだろ。それに、ローマ王国には二人の勇者(きし)が居た。彼らが倒されたという事は信じたくないが、彼らも一騎当千の力を持った戦士だ。魔物軍に大きなダメージを与えたはず」

「僅かな時間を稼いだだけに過ぎません」

「一週間くらい稼ぐことが出来れば、それまでに勇者を覚醒させれば私たちは勝利という可能性を掴める」


 くっ……消極的な無能すぎる王が……っとアントニオを奥歯を食いしばりながら心の中で舌打ちをする。アントニオは子供のときから兄であるアンドレイを見てきた。自分より他の誰よりも優秀な彼を後ろからずっと見てきた。最初は「兄のようになりたい」と思っていた。何をさせても一番なアンドレイは王族でありながら誰に対しても平等に優しく接していた。完璧で人徳な王……それがアンドレイだ。だが、アントニオは兄の欠点を知ってしまってから憧れが一気に絶望そして憎しみに変わった。消極的で優柔不断、判断力の鈍さ……王として大事な物をアンドレイにはない。こんなヤツが王など許されないことだ、だから今日限りで、


「”レイ”兄さん……」

「ああ……トニオ」


 昔……子供の頃に使っていた呼び名。

 民のため国のため世界のため家族のため……アントニオは言う、


「現時刻をもってブリタニア王国国王の座は私が貰い受ける」

「と、トニオ? な、何を言ってるんだ……?」


 瞬間、王室に次から次へと騎士たちが入りすぐさまアンドレイ元国王を囲い剣を向ける。


「クーデターか!? お前、今の状況を分かっているのか!」

「ええ、兄上、存じております。だからこそ『人徳の貴方』ではなく『軍事の私』が王になる。この城にいる騎士たちは全て渡しの味方ですぞ」

「……くっ、武力に意味はない」

「魔物相手に人徳や話し合いなど無意味。圧倒的な軍事を持って制する必要があります」


 アントニオはくるりとアンドレイに背を向けて騎士たちに命令を下さす、


「ただちに覚醒の儀を行う。勇者を連れてこい」

「ハッ」


 数人の騎士たちが王室を出る。

 向かうは勇者がいる部屋。


「兄上、私がローマ・ブリタニア王国第五十代国王アントニオ・SE・ブリタニアが貴方に代わり世界を守る」

「ふふ……あっはっはっはっはっはっは」

「な、何がおかしい!?」

「……いや実はなトニオ。お前がクーデターを起こすのもお前が勇者をさっさと覚醒させようとしているのは分かっていた」

「な、に……?」

「私の計画通りだ」


 数十人の騎士たちに剣を向けられているというのにアンドレイは凛とした表情でアントニオを見据える。


「すまんな、先手を打たせてもらった」

「どういう事だ……兄上?」

「簡単な事だ……私はお前の兄上でもなければ元ローマ・ブリタニア王国第四十九代国王アンドレイ・PG・ブリタニアでもない」

「……な? あ、も、もしやお前は……」


 刹那、アンドレイが文字通り溶けた。


「早く兄上を殺れ!」

「もう遅い」


 溶けたアンドレイから現れた、否、アンドレイに化けていた魔物(かげ)は姿を表した。



------夏目海斗SIDE


 皆さん、こんばんわ。皆のカイト君です、テヘッ♪

 ……ごめんなさい、冗談です!

 オレは今、案内された部屋の中でゴロゴロしている。ベット以外何もない普通の部屋。いや、普通以下かもしれないな。

 というかオレは本当に何でこんなところにいるんだろう……ああ、召喚されたのは分かっているけど、やっぱり何でオレなんだ? とかオレでいいのか? とかオレに何ができるんだろ、と思う。話によればイギリスとイタリア以外は魔王の支配下らしい……明らかにフルボッコしてやんよ! 状態の中、オレに世界を救うことは本当に可能なのだろうか。

まあ、でもテンプレートと化した異世界召喚モノって基本的に勇者に俺TUEEEな力が宿っているわけで、オレにそんな圧倒的な力があるか否かは置いといて……そんな力があってもVS世界とか無理ゲーじゃゴラッ!

っつかアレ? そういえば、ここって異世界だよな? 何でブリタニアとか、ローマがあるわけ? そこツッコミいれるの遅いとか言うの禁止な。オレだって混乱してたからユックリできるまで気付かなかったし。まあ、いいか……今は休もう、何か疲れてるしな……。

 おやすみなさい……。


「フン! 貴様が妾の主か? 軟弱だのぉ」

「はい?」


 いきなり女性の声が聞こえたので、体を起こす。ってここどこだ……。

 気づいたらあたり一面、綺麗な緑に溢れている草原にオレは”立っていた”。オレンジ色の空が少し不気味……。ってあれ?

 沈む太陽を背に一人の少女がそこにいた。真っ黒な拘束衣を着た12、13歳くらいの女の子。全てを飲み込むような海と同じ碧色の長髪。

 Mなのか……ハイ、場違いなのは分かりますが、変態(えむ)という単語が脳裏を通り過ぎたんです。


「えっと、君はだれ? っつかここはどこ?」

「質問が多い。が、貴様は妾の主らしいからのぉ、答えてやる。有り難く思え」

「はい? 主? 何のこと……?」

「ウゼェ……質問が多いと言ったばかりだと言うのに、どうして妾が答えるまで待てんのだ? 咬み殺されたいようだのぉ」


 M少女はグルルと唸り声を上げる……が、ごめんなさい、普通に可愛いです、ハイ!

 おっと勘違いされても困るので最初に言っておく、オレはかーなーりーロリコンではありません!


「まあよい……説明してやろうかのぉ」


 M少女は言う、


「妾は貴様の一部であり、貴様の力を司る者。いわばもう一人の貴様という訳だ」

「……」


 つまり要約すると、こうですね。この世界で来たことでオレの中に精霊みたいなモノが宿った、それがこのM少女。いやいや、まてまてよ……だとするとここはオレの深層心理世界とか精神世界的なアレってことだよね? で、この少女がオレの一部でオレの前に現れたということは「僕はロリコンで~す♪」と言っていると同じでだろ? ありえねー……今の今まで健全な男子なオレが……ロリコンだったなんて……しかも拘束衣とか思いっきりMだろ……。マジで泣きたいです。


「で、ここは軟弱な貴様の深層意識。まあ、心の奥だと言うことだのぉ……うむむ?」

「やっぱりそうかよ! 分かっていたんだよ、オレは! ってどうしたの?」

「魔物の気配がする……しかも大軍だ。ブリタニアも落とされるな」

「ええ?」


 召喚されて間もないというのに……何でこんなことに……。

 っつか今の今まで実感がわかなかったけど、改めて敵が来たと言われると……怖い。

 どうしよう。

 こんな時、バグちゃん(仮)、チートくん(仮)、リアル写輪○ちゃん(仮)……あなた方ならどうされますか?

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