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心の中の扉

作者: 戸川涼一朗
掲載日:2026/03/22

皆さんは、心に閉じ込めている気持ちはありますか?


喜び、悲しみ、怒り、不安――。


人は時に、それらに鍵をかけ、心の奥にしまい込んでしまいます。


これは、本当の自分を閉ざしてしまった一人の人間が、

“心の扉”と向き合う物語です。


私は、本当の自分を出すのが苦手だ。


嬉しい時も、怒っている時も、悲しい時でさえ、

その感情をうまく外に出すことができない。


まるで、心の中に“何か”がいて、

それを必死に押さえつけているような感覚。


友達が言う。


「この映画、めっちゃ面白いんよね」


私は少し間を置いて、ぎこちなく笑う。


「へぇ、そうなんだ」


本当は違う。


本当は、面白かったところを一緒に語りたいし、

同じ場面で笑って、同じところで泣きたい。


でも、言葉が出てこない。


別の日。


「この犬、可愛くない?」


差し出されたスマホの画面には、

無邪気に笑う小さな犬。


「……うん」


短い返事。


本当は「めちゃくちゃ可愛い」って思ってる。

抱きしめたいくらいに。


でも、それ以上の言葉が出てこない。


――なんでだろう。


帰り道、ふと考える。


昔は、こんなじゃなかった気がする。


笑う時は思いきり笑って、

悲しい時は泣いていた。


でも、いつからだろう。


「そんなことで笑うの?」

「泣くとか大げさじゃない?」

「怒るなんて子供みたい」


そんな言葉を、何度も受け取るうちに、

私は少しずつ、感情に“鍵”をかけるようになった。


傷つかないように。

否定されないように。

嫌われないように。


気づけば、心の中には

いくつもの扉ができていた。


「喜びの扉」

「悲しみの扉」

「怒りの扉」


そして、その全部に鍵をかけた。


――これでいい。


そう思っていた。


でも。


気づいてしまった。


鍵をかけたのは「感情」だけじゃない。

“本当の自分”そのものを、閉じ込めてしまったことに。


ある日、ふとした瞬間に思った。


もし、この扉が開いたら。


私は、どんな顔で笑うんだろう。

どんな声で泣くんだろう。

どんなふうに怒るんだろう。


怖い。


でも――知りたい。


心の奥で、何かが微かに揺れる。


錆びついた扉の向こうから、

小さく音がした気がした。


カチッ――と。


それが本当に鍵の音だったのかは、分からない。


でも、確かに感じた。


閉ざしていたはずの、心の中の扉が、

ほんの少しだけ、開いたことを。


その隙間から差し込んだ光は、

まだ弱くて、頼りないけれど。


――それでもいい。


私は、まだ終わっていない。


だから今日も、願っている。


いつか、この扉を自分の手で開けられる日を。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


閉ざされたままの心の扉も、

ほんの小さなきっかけで、静かに動き出すことがあります。


あなたの中にあるその扉も、

いつか優しく開く日が来ることを願っています。

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