第二話 第一の猫、参上!
「それで、お願いがあるんですけど……」
女神様がもじもじしながらこちらを見ている。
……うん、嫌な予感しかしない。
「一刻も早く、猫さん達を見つけてほしいんです」
あれ? 思ったよりフツーだ。
女神様の言葉に拍子抜けする。
「もちろん、探すに決まってるでしょ。私の大事な猫達だもの」
言われなくても探します。
「ところで、私の能力は?」
ドラゴンのいる世界にアラサーがそのまま放り出されても困るしな。
せっかく転生したのに秒で死ぬ、多分。
「一応、テイマーという事になっています。無限収納には猫さん達のご飯とかたくさん入れています」
……つまり猫メイン?
まぁ、いいけどな。
そこに、小柄なキジトラ猫がやってきた。
「りゅうたろう!」
名前を呼ぶと、りゅうたろうは勢いよく私の肩に飛び乗ってきた。
「痛い、痛いって!」
子猫の時から肩乗り猫だったりゅうたろうは、大人になっても私の肩に乗ってくる。
多分、大きくなった事に気がついていない。
重いし、爪はたてるし、で私は肩から背中にかけて傷だらけだ。
「りゅうたろうさんは、つかささんと一緒に寝ていたので出て行かなかったみたいです」
何しろ、親猫に育児放棄されていたのを私が育てたからな。
ベッタリなんだよな。
「りゅうたろうさんの能力は、体の大きさを自由に変えられます」
……は?
「片手に乗るサイズから、お城くらいまで大きくなれます」
何言ってんの、女神様。
「ドラゴンなんか、ぷちっ! です」
ドラゴンの前に、私がぷちっされるわ!
「ステータスの中にマップ機能とかもありますから」
私が文句を言う前に、女神様はさくっと話題を変えた。
なるほど。無限収納にマップとか、私にもそれなりのチートがあるわけだ。
手のひらサイズになったりゅうたろうを見ながら、ふむふむと私は頷いた。
気がつけば、着ている服もファンタジー風のものに変わっている。
ステータスを確認すると、防御力上昇とかいろいろ付与効果があるようだ。
……若返ったりはしないのか。ちょっと期待していたのに。
いや、別にいいんだけど。
ため息をつく私をよそに、女神様は手のひらサイズのりゅうたろうにメロメロだ。
「小さくて可愛いですねぇ」
猫は大きくても可愛いです。
お城サイズだって、多分、きっと、おそらく……。
「りゅうたろうちゃん、これ食べる?」
女神様、とうとう、ちゃん呼びになりましたか。
女神様の差し出した某おやつに、りゅうたろうは困惑しているようだった。
ちらっと私の顔を見上げてきた。
間違っても、飼い主の許可を待っているわけではない。
猫とは、食べたければ人間が止めても食べようとする生き物なのだ。
単に「何、これ?」の表情だ。
「りゅうたろうはカリカリしか食べないので」
「そうなんですか?」
「じゃあ、これならどうかな?」
そうい言いながら、女神様はお高いカリカリの小袋を開け始めた。
どこから出した、女神様。
「食べたら行くよ、りゅうたろう」
ほかの子達も早く見つけてあげなければ。
「こっちも食べる?」
女神様は次から次へとカリカリの袋を開けている。
行かせるつもり、あります?
「そろそろ行きたいんだけど……」
りゅうたろうをかまい倒している女神様に声をかけると、はっとしたように振り返った。
「そうでした!」
忘れるんじゃない。
「つかささんには一刻も早く猫さん達を見つけてもらわないと、この世界が滅びかねないんです!」
……は?
滅ぶって、どういう事?
もしかして私と猫達が世界を救わないといけないとか、そういうやつ……?
いや、アラサーにはキツイって。
「猫さん達にあげた能力が高すぎて……」
ん?
「もし、猫さん同士で戦ったりしたら、国どころか大陸が滅びます」
「……」
「ご本人達は遊んでいるつもりでも、世界がもちません」
ご本人? ご本猫? とまたしても女神様は首をかしげている。
いや、もう、それはいいから。
猫達にぼろぼろにされた我が家を思い浮かべて、私は頭を抱えた。
……あれが世界規模で?
ていうか、私と猫達って主人公じゃなくて、まさかの魔王ポジション?
「お願いです。早く猫さん達を見つけて、世界が滅ぶのを止めて下さい!」
そういう事は、もっと早く言え!!




