第十一話 異世界の神様。
「女神様のせいじゃないよね?」
『何の事ですか?』
スマホの向こうから、女神様の怪訝そうな声が聞こえてきた。
「今回のドラゴン」
オニキスがたびたび魔物に襲われるといっても、ドラゴンの襲撃など千年以上起きていないらしい。
ドラゴンの事だけじゃない。
クラーケンも百年ぶりだったし、オパール王国の時は未然に防いだけど、魔物の大発生に出くわすところだった。
それなのに、私達が行く所行く所魔物が襲ってきている。
もし、うちの猫達を危ない目に会わせたのだったら。
例え、神様だって許さない!!
『私が、りゅうたろうちゃん達にそんな事するわけないじゃないですか!!』
……私は?
いや、うん。そうでした。
「ごめん、疑って」
素直に謝ると、女神様はため息をついた。
『もしかして、力が強いと向こうからトラブルが寄って来てしまうのかもしれませんね』
「そういうもんかな……」
ん?
それって結局、猫達にチート能力を授けた女神様のせいなんじゃ……?
「そういえば、女神様って何の神様なの?」
『私は幸運をつかさどっています』
……グリーンとか年末とかのアレ、ではないよな。
『たいしたご利益はないんですよ』
女神様はそう言ったけど、それにしては、こっちの世界の人達に大人気だけど。
『探し物がみつかるとか、旅の間、天候に恵まれるとか、そんな感じです』
ほかの神達に比べると力が弱くて、と女神様は小さな声で言った。
いやいや、意外と重要ですよ?
『皆さんに、明日いいことがありますように。というのが、私の思いです』
「そっか……」
それが女神様なのか。
運命神と違って、女神様が信仰を集める理由がなんとなく分かった気がする。
まぁ、私は女神様に会ってから、災厄続きな気もするけどな……。
次の目的地に向かう途中で立ち寄ったのは、学園都市トパーズ。
ここは、各国や都市が共同で出資して造られたそうだ。
ありとあらゆる事を学べる。
大陸最大の図書館や、主に学生向けの冒険者ギルドもある。
そして。
大陸中から人が集まるため、独自の文化が発達した。
もちろん、食文化も。
い、いや、別にそれが目的だったわけでは……。
…………。
すいません、嘘をつきました。
先程露店で買った蜜飴を口に放り込む。
スカイビーの集めた蜜を固めたもので、食べた感じは飴よりグミに近い。
比較的レベルの低い冒険者でも採取出来るので手に入りやすい甘味だが、トパーズでは商人を志す学生達のアイデアで様々なフレーバーの物が売っている。
ちなみに、今食べているのはノアルというリンゴに似た果物のフレーバーで、爽やかな酸味がある。
ほかにも数種類買って無限収納に入れてあるので、旅のお供にする予定だ。
そして、この街に寄ったのにはもう一つ理由がある。
大陸中から人が集まるということは、信仰する神様も色々いるという事だ。
本国のよりは小さいが、各国を守護する神様達の神殿があるのだ。
い、いや、別に観光気分な訳では……。
…………。
すいません、嘘をつきました。(2回目)
「やっぱり、女神様は人気があるんだねぇ」
肩乗りサイズのりゅうたろうを連れて、私はあちこちの神殿をのぞいてみた。
女神様の神殿は大勢の人が集まり、なにやら華やかだ。
運命神の神殿はここでもさびれている。
海の神様に、鍛冶の神様。
知の神様は、やはり学園都市のトパーズでは一番人気のようだ。
「……で、ここは何の神様なんだろう」
ほかより一回り小さな神殿だったが、参拝している人はわりと多い。
そして、神殿の敷地のあちらこちらに、大きいのから小さいの、陶器で出来ていると思われる置物からふかふかのぬいぐるみまで。
異常な数の猫がお供え(?)してあった。
こんな感じ、テレビとかで見た事があるような……。
あれは神社だったかな。
「すいません、ここって猫にまつわる神殿なんですか?」
近くにいた学生らしき少年達に尋ねてみた。
「ここは、猫神様の神殿ですよ」
やっぱり猫か。
「この猫達は?」
「猫神様は九つの命を持っており、その魂はそれぞれ別の世界におられると言われています」
ほう。
すらすらと答える少年達に、思わず関心してしまった。
ターコイズに学びに来た成果だろうか。
「それにあやかって長生きしたい人達が、猫の形をした物をお供えしているんですよ」
なるほど、それで猫か。
「教えてくれて、ありがとう」
「いいえ。お……姉さんも猫を連れているみたいですし、お参りしていったらどうですか」
……今、おばさんとどっちにしようか迷ったよな?
まぁ、この世界の平均寿命は六十才くらいだし、学生さん達はまだ若いし……。
…………………………。
福助、〈風魔法〉。
ヤッちまいな。
って、いやいや、冗談ですよ?
……うん、ホントに。




