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番外編:休憩室での雑談 ~仮想通貨について~

(収録の合間の休憩室。モダンなソファが置かれ、壁には大型モニターが設置されている。四人の巨人たちがそれぞれ飲み物を手に、リラックスした雰囲気で座っている)


フォード:「このコーヒーマシン、なかなか効率的だな。ボタン一つで完璧な温度と濃さだ」


カーネギー:「確かに便利だが、私の時代の手淹れコーヒーの方が味わい深かった」


オウエン:「機械の便利さより、淹れてくれる人の心遣いの方が重要だ」


渋沢:「日本茶もありますよ。技術と伝統、両方楽しめるのが現代の良さですね」


(モニターにニュースが流れ始める。「ビットコイン、最高値更新」「企業の仮想通貨投資が加速」という見出しが目に入る)


フォード:「何だ、これは?ビット...コイン?」


カーネギー:「仮想通貨らしい。実体のない通貨だそうだ」


(カーネギーは興味深そうにモニターに近づく)


オウエン:「実体のない通貨?そんなもので何が買えるんだ?」


渋沢:「デジタル上の通貨です。ブロックチェーンという技術で...」


フォード:「待て、説明してくれ。通貨に実体がないとはどういうことだ?」


渋沢:「簡単に言えば、コンピューター上の数字です。でも、その数字が価値を持つ」


カーネギー:「紙幣も元々は金との交換券だった。それが独立した価値を持つようになった。これはその延長か?」


フォード:「いや、紙幣は少なくとも物理的に存在する。これは完全に概念だけじゃないか」


オウエン:「誰が価値を保証するんだ?政府か?銀行か?」


渋沢:「いえ、それが革新的なところです。中央管理者がいません。みんなで管理する仕組みです」


(四人は顔を見合わせる)


カーネギー:「みんなで管理?それは無政府主義じゃないか」


オウエン:「いや、これこそ民主的だ!中央銀行の支配から解放される」


フォード:「効率的じゃない。中央管理の方が最適化できる」


渋沢:「でも、2008年の金融危機を見れば、中央管理にも限界があります」


カーネギー:「ふむ、確かに...」


(カーネギーは考え込む)


カーネギー:「私の時代も、銀行の取り付け騒ぎで何度も恐慌が起きた。中央管理が完璧でないのは認める」


フォード:「だが、この『ビットコイン』とやらの価値は何に基づいている?私の自動車は移動という実用性がある。鉄鋼も建設に必要だ。これは?」


オウエン:「そうだ!実体経済と切り離された投機じゃないか」


渋沢:「確かに投機的な面もありますが、送金の効率化という実用性もあります」


(モニターに新たなニュースが流れる。「エルサルバドル、ビットコインを法定通貨に」)


フォード:「法定通貨だと?国家が仮想の通貨を認めるのか?」


カーネギー:「興味深い...これは通貨の概念自体が変わりつつあるということか」


オウエン:「待て、見ろ。『マイニング』で大量の電力消費、環境問題に』とある」


(オウエンは憤慨する)


オウエン:「結局、環境を犠牲にした金儲けか!何も変わっていない」


フォード:「マイニング?採掘?仮想なのに採掘とは?」


渋沢:「計算処理のことを比喩的にそう呼ぶんです。膨大な計算をコンピューターで行い、その報酬として仮想通貨を得る」


フォード:「なるほど、一種の労働対価か。それなら理解できる」


カーネギー:「しかし、計算するだけで価値が生まれるとは...」


(カーネギーは首を振る)


カーネギー:「私の製鉄所は実際の鉄を作った。それが橋になり、ビルになった。この計算は何を生み出す?」


渋沢:「信頼です。取引の信頼性を、計算によって保証しています」


オウエン:「信頼を機械に任せるのか?人間同士の信頼関係はどこへ行った?」


フォード:「効率的じゃないか。人間の感情や偏見を排除できる」


オウエン:「また君の機械信仰か!」


(モニターに別のニュースが表示される。「NFTアート、75億円で落札」)


カーネギー:「75億円!?デジタルの絵に?」


フォード:「コピーが無限にできるものに、なぜそんな価値が?」


渋沢:「『唯一性』を証明する技術だそうです。オリジナルであることを保証する」


オウエン:「芸術は心を豊かにするものだ。投機の対象にすべきじゃない」


カーネギー:「いや、芸術への投資は昔からある。私も絵画を収集した」


フォード:「だが、実物の絵画は物理的に一つしかない。デジタルは...」


(フォードは理解しようと努める)


フォード:「いや待て、これは所有権の証明書のようなものか?」


渋沢:「その通りです。実体ではなく、権利を売買している」


カーネギー:「株式に似ているな。株券も結局は紙切れだが、企業の所有権を表す」


オウエン:「株式は企業という実体がある。これは完全な幻想だ」


(四人はしばらく考え込む)


渋沢:「でも、考えてみれば、『価値』自体が人間の共同幻想かもしれません」


カーネギー:「哲学的だな。確かに、ゴールドも、なぜ価値があるのか。希少だから?美しいから?」


フォード:「実用性だ。金は腐食しない、電気を通す、加工しやすい」


オウエン:「でも、その実用性以上の価値がついている。結局は人間の欲望だ」


(モニターに新たな情報が流れる。「仮想通貨で給与支払い、若者の3割が希望」)


オウエン:「給与を仮想通貨で?労働者の生活はどうなる?」


フォード:「価格変動が激しすぎる。今日の給料が明日半分になるかもしれない」


カーネギー:「逆に倍になるかもしれない。リスクとチャンスは表裏一体だ」


渋沢:「安定性がないと、生活の基盤にはなりません」


オウエン:「そうだ!労働者をギャンブルに巻き込むな」


フォード:「ただ、国境を越えた支払いは効率的だな。私の工場が世界中にあったら、便利だったろう」


カーネギー:「送金手数料もかからない。銀行の独占が崩れる」


オウエン:「銀行の支配から解放されるのは良いが、新たな支配者が生まれるだけでは?」


渋沢:「分散型なので、理論的には特定の支配者はいません」


フォード:「理論と現実は違う。結局、大量に保有する者が支配する」


(カーネギーが鋭く指摘する)


カーネギー:「見ろ、『クジラ』と呼ばれる大口保有者が市場を操作している、とある」


オウエン:「ほら見ろ!結局は富の集中だ。何も変わっていない」


渋沢:「技術は中立です。使い方次第で、良くも悪くもなります」


フォード:「技術は常に効率化のためにある。この仮想通貨も、いずれ効率的な形に収束する」


(モニターに「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発加速」という見出しが出る)


カーネギー:「ほう、中央銀行も動き出したか」


フォード:「当然だ。効率的なものは必ず主流になる」


オウエン:「政府の管理強化じゃないか。全ての取引が監視される」


渋沢:「プライバシーと透明性のバランスが重要ですね」


カーネギー:「私の時代は現金だった。取引の匿名性があった」


フォード:「匿名性は非効率を生む。脱税、マネーロンダリング...」


オウエン:「でも、全てを監視されるのは息苦しい」


渋沢:「『中庸』が大切です。完全な自由も、完全な管理も、極端は良くない」


(四人は再びソファに座り直す)


フォード:「結局、この仮想通貨は、効率化の一形態だ」


カーネギー:「いや、新たな投資機会だ」


オウエン:「人類を幸福にするとは思えない」


渋沢:「可能性はあります。使い方次第です」


(しばらくの沈黙の後)


カーネギー:「一つ言えることがある。我々の時代にこんなものがあったら...」


フォード:「私は採用していたな。工場間の決済が瞬時にできる」


カーネギー:「私は投資していた。新しい市場は常にチャンスだ」


渋沢:「私は慎重に研究してから判断します」


オウエン:「私は労働者への影響を第一に考える」


(四人は苦笑いを浮かべる)


フォード:「結局、我々は変わらないな」


カーネギー:「いや、これが個性というものだ」


渋沢:「多様な視点があるから、議論に意味があります」


オウエン:「そうだな。全員が同じ意見なら、進歩はない」


(モニターに新たなニュースが流れる。「メタバース上の土地、高額取引続く」)


フォード:「今度は仮想の土地か?」


カーネギー:「不動産投資の新形態か...」


オウエン:「実際に住めない土地に何の価値が...」


渋沢:「人が集まる場所には価値が生まれます。仮想でも同じかもしれません」


フォード:「効率的じゃない。現実の土地の方が生産的だ」


カーネギー:「いや、仮想なら無限に開発できる。新たなフロンティアだ」


オウエン:「現実逃避だ。現実の問題から目を背けている」


渋沢:「両方大切です。現実も仮想も、人間の活動領域です」


(フォードが突然立ち上がる)


フォード:「分かったぞ!」


オウエン:「何が分かった?」


フォード:「これは全て、効率化の究極形態だ。物理的制約からの解放」


カーネギー:「面白い視点だ。確かに、輸送も保管も不要」


オウエン:「でも、人間の温もりはどこにある?」


渋沢:「デジタルでも、人と人の繋がりは作れます」


(議論は続く)


カーネギー:「投資として見れば、ボラティリティは高いが、リターンも大きい」


フォード:「投機は生産的じゃない」


カーネギー:「投機がなければ、新技術への資金も集まらない」


オウエン:「その資金で、どれだけの人が救えるか...」


渋沢:「資金を正しく循環させることが重要です」


(時計を見て)


渋沢:「そろそろ収録再開の時間ですね」


フォード:「仮想通貨か...理解はしたが、納得はしていない」


カーネギー:「チャンスであることは確かだ。リスクも大きいが」


オウエン:「技術の進歩が、人間の幸福につながることを願う」


渋沢:「新しい技術も、古い知恵も、両方必要ということですね」


(四人は立ち上がり、スタジオへ向かう)


フォード:「一つ確かなことがある」


カーネギー:「何だ?」


フォード:「我々の時代より、遥かに複雑になっている」


オウエン:「複雑だが、本質は変わらない。人間の欲望と理想の戦いだ」


渋沢:「その戦いの中で、より良い道を見つけていくしかありません」


カーネギー:「まあ、我々には関係ない。それぞれの時代に帰るだけだ」


(廊下を歩きながら)


オウエン:「でも、こうして未来を垣間見れたのは面白かった」


フォード:「効率化の可能性は無限だな」


カーネギー:「投資機会も無限だ」


渋沢:「課題も無限ですが、希望も無限です」


オウエン:「人間の幸福を忘れなければな」


(四人の声が廊下に響きながら、休憩室のモニターには仮想通貨のチャートが上下を続けている。まるで、人類の期待と不安を表すように)

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