9「魔人と言う脅威」
私は魔力障壁の強化版を作った。
そして今ミレーユがその魔力障壁の実力を試してくれる。
「アリシア、いくわよ!」
「ええ!いつでも良いわ!」
『フレアブラスト!』
ドカァン!!
土煙が立つ。
そして土煙が晴れた。
私が作った、魔力障壁は、無傷だった。
何一つダメージがない。
究極の魔力障壁だ。
そう思い、まだ他の魔法を試そうとしていた矢先、膨大な、魔力を、国境外の森から察知した。
背筋が寒くなる。
強い視線だった。
背中がナイフで刺されたような痛みが走る。
あそこには、居てはいけないものがいるのがすぐに分かった。
ミレーユは私の様子に戸惑っている。
「アリシアどうしたの?」
「あの森の、中に何かがいる」
そう言い、ミレーユが森を見ると、ミレーユは足の力が抜け、その場に座り込んだ。
ミレーユの顔は、恐怖が支配していた。
そしてその場で気絶した。
私はすぐに転移魔法でミレーユを寮のベッドに寝かせ、森の前へ転移した。
森の中に入った。
木が多く、昼間なのに、光が全く入らない。
そのため、魔力を可視化させ、光らせた。
先ほどと比べ物にならぬぐらい、明るくなった。
そして、奥に入っていた。
奥に行くほど、見られている感が強くなり、血の匂いが濃くなっていく。
そして森の中心に来た。
真ん中には古びた家が建っていた。
この建物の中から、膨大な魔力が感じられる。
その時、ドアが開いた。
その人は手に、人の腕を持っていた。
「!?」
その人の目は赤く充血していた。
こいつの正体はすぐに分かった。
そう、『魔人』だ。
魔人は、自分の演算能力を限界まで使い、魔力制御に失敗し、その暴走のより生まれる。
魔人の力は、恐ろしい。
魔人たった一人で、国が滅亡する。
そして魔物にはランクがある。
低い順から言うと、魔物・中級魔物・大級魔物・騎士団級魔物・災害級魔物・国家級魔物・魔族級に分類される。
そして魔人は魔族級に分類される。
魔族は魔王の配下であるが今は封印されていて、出てくる心配はない。
その魔族級は国家騎士団を使っても、勝てるかどうかはわからない。
そして魔人は理性がある。
賢く、残酷である。
それが、この森にいるとは。
「おお、可愛い娘ではないか…殺して食べたら美味いだろうなぁ」
やはり残酷。
「お前は何人人を殺った?」
「百から先は数えていないさ」
百人以上。
許しておけるわけない。
「お前には死んでもらう」
「そうか殺ってみろ」
「水属性系魔法、アクアランダー!!」
水の刃が魔人に向かって、放たれた。
「こんなものか」
指が触れただけで、水の刃が、壊れた。
――まだ、万全ではない。
まだ、時間を稼ぐ。
魔人は気づいていない。
森の上に巨大な空中系魔法陣多重式魔法を構築していることに。
魔法陣の回転が徐々に早くなる。
魔法陣が重なり始めた。
この魔法は、先程試そうとしていた技だ。
太陽から出る、放射線だけをもらい、魔力と合わせ、魔力単体の倍の力を出す魔法、名は『スピラル』だ。
あと構築完了まで、五秒。
だんだんと森の中まで光が入ってくる。
魔法陣の真ん中には剣の形をした物が生成されている。
「なんだ?」
「今頃か」
「―――ッ!!!」
私はにやりと笑う。
「お前は終わりだ」
キュウィィィン。
ドカァン!!
バキバキ。
煙が立つ。
木が折れる音もする。
煙が晴れ、あたりを見渡すと、森が跡形もなくなっていた。
「スピラルって、こんな爆発したっけ?」
そう疑問に思いつつ、転移魔法で、寮に帰った。
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【テリトリア貴族国家】
この日、街は絶望の色に染まった。
とある魔人によって。
彼の名は「エリアス・ノクター」だ。
元人間そして貴族国家の南側、ノクタ―領の領主、そして次期国王候補であった。
彼は幼い頃から、父の仕事を毎日見てた。
そしてエリアスが二十のとき、父が死去。
そしてノクタ―領、領主となった。
ノクターは決して、貴族という立場を使い、領民を見下したりをしなかった。
常に優しく、常に領民をまとめるリーダーとして、活躍していた。
だが、テリトリア現領主「レミウス・グレイバート」彼もまた、次期国王候補であった。
だが、レミウスは自分が国王になることだけをひたすら考えた。
そしてたどり着いた答えが、エリアスの勢いをなくすこと。
そのため、エリアスに領民を取られた人、他諸々で恨んでいるひとを集め会議をした。
「皆よく集まってくれた」
「レミウス殿、今回はエリアスの勢いをなくすための、会議ということで、よろしいですか?」
「ああ。皆はエリアスを恨んでいるだろう?」
「ええ。あいつに領民を取られました。領民が言うには、環境が良さそうだからと」
「それは残念だ」
「私も、同じでございます」
そしてこの会議で、決まったことは、一つ。
エリウスの暗殺だ。
そして、レミウスはエリウスに手紙を書いた。
手紙の内容はこうだ。
『エリアス殿。貴方の政策を伝授してはいただけないだろうか?もちろん報酬は出す』と。
すぐにエリウスは向かった。
様々な貴族に挨拶をし、食事を取った。
このときエリウスは結婚をしていて、子供が一人居た。
そして、ノクタ―領では。
最近殺人が多発していると、ノクタ―領各所で噂されていた。
「最近、この近くで、家族が惨殺されたんだって」
「それはまぁ…ひどいわねぇ」
その時、悪人顔の爺さんが着てこういった。
「この辺の殺人事件の人物の正体がわかった」
「まさか、私達に教える気かい?」
「ああ。悪いか?」
「いいや、ぜひ教えてくれ」
「正体は…エリアス・ノクタ―だ」
「う…そ…だ…ろ…」
「事実だ」
この言葉は瞬く間に領内に広まった。
そして反発が起きた。
領主が居ない今、すべての責任が、妻に降り注ぐ。
家は燃やされ、子供は眼の前で犯された。
この事件は、領主が不在になってから、わずか3日のことだった。
エリアスは嫌な予感をして帰った。
暗殺者を手配したのが、4日後だったので、暗殺はされなかった。
『心配かけたな。お土産、喜んでくれるかな』
馬車が止まった。
「領主さん…家が」
「!?」
急いで、家に戻った。
だが遅かった。
娘は犯され、妻は亡き者にされた。
そして、自分も。
腹部を刺され、倒れた。
私は思った
『この怒りはどこにぶつければ良いのだろう
発散できずに死ぬのか?
そんなのは嫌だ、絶対に』
その時、すべての怒りが魔力に変わった。
急な魔力増大により、演算領域を超え、魔力暴走が起きた。
そして、目が充血し始めた。
そして、復讐を始める。
「お前らぁ…お前らあぁぁぁぁぁ!!!」
自分とは思えないほどの力。
これを使い、逃げていく人たちの首を切って行く。
「お前らは、これだけじゃ許されねぇ」
そうして、崩壊の時が動き出す。