7「説明」
神龍。
【封魔歴以前に書かれた書物】
神龍はこの世の守護神として、崇められていた。
だが、魔王『オルギア・メネシス』に説得され、魔王軍の幹部となった。
遅れたが、神龍の名前は『イグドラシル』である。
神龍は不老である。
ある程度の成長をした後、不老になり、生き続ける。
だが、神龍は自然とは死ねないが、誰かが、その八本の首すべてを、再生する前に切り落とせば、死ぬ。
だが、滅多に、姿は現さない。
龍の姿では。
神龍は人の姿になることができる。
もちろん人語も話せる。
目撃者は、十六歳から十七歳程度の女性の姿をしていたと言っていた。
そして、力は、人と同等の力にまで落ちる。
そのため、バレずに済むのだ。
『著書 全賢者』
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前世の私が書いた書物を思い出した。
魔王を封じたときに、一緒に封印したはずなのにな。
間接的にだけど。
うーん。
殺したくはない。
お仲間に取り入れたい。
まぁ元友達みたいなもんだし。
少し話してみるか。
光属性系魔法、『エリミナリンク』を使う。
『お久しぶりです。いや、貴女は覚えていないかもしれませんね』
『む…お前は全賢者と同じ気をまとっていますね。まさか、転生魔法を使ったのではないでしょうか?』
『正解です。今回は貴女をこちら側に取りこみたいと思い、お声がけさせていただきました』
『そうかですか…』
『まず、人の姿になってもらえると幸いであります』
『そうですね。私も、この大きさの体は久しぶりであるしね』
『感謝いたします』
私が敬語で話す理由は、神龍の機嫌を損ねないため。
イグドラがキレたら、この国が飛ぶ。
いやそれ以上の可能性もある。
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光が夜空を明るくする。
そしてまた夜の景色が戻ってくる。
イグドラは人間の姿になった。
私と同い年のようだ。
「お久しぶりです。イグドラ」
「ええ。久しぶりですね」
イグドラは温厚で優しい龍。
なぜ、魔王軍に入ったのだろうか。
まずは、国家騎士団の人たちに攻撃するなと言っておこう。
「シリウス、国家騎士団の皆に言っといてください。『絶対に攻撃しないで』と。今は人の姿になっているので大丈夫です」
「わ、わかった」
イグドラのとこに移動。
「イグドラ、皆貴女のことを怖がっています。色々と説明したほうが良いのでは?」
「そうね。例えば、魔王軍になぜ入ったこととかかな?」
「そうですね」
「わかった」
「私はルクス・ミラージュを使って、姿を映してあげますので」
「了解したわ」
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街の真ん中に魔法陣を設置した。
魔力を流すと、指定した人や魔物を映せる。
今魔力をいっぱい流す。
魔力を流すほど、より大きく、より鮮明に映し出される。
今は、高さ30m位の大きさになっている。
今はカラーで映し出されていて、知っている人なら、わかるくらいの鮮明度だ。
では、始めてもらおう。
『イグドラ、準備OKだよ』
『わかったわ』
「皆さん?どうも、神龍のイグドラシルと申します。今回はなぜ魔王軍に入ったかを説明します。まぁ1500年前くらいなんだけどね」
無駄なこと言うなよ…
結局、昔の戦争で、国が二個ほど滅びたのだから。
近くに来た人は『今更かよ』や『言い訳をしに来たのか?』とか。
それはそうだけどね…
「今更かと思う人は多いと思いますが、決して、私の意思で入ったわけではないのです。少し長くなりますが聞いてくださると光栄です」
国民が集まり始め、自室の窓から見るもの、屋根から見ものがいる。
【魔封歴以前】
イグドラシルはとある国に来ていた。
ここは『魔法の国クラルテ』だった。
イグドラシルはいつもの通り人間の姿になって、酒場で酒を飲んでいた。
そして金を払い、酔っ払ったまま外へ出た。
そして細い路地に入り、寝ようとしていたとき、眼の前に、人がいた。
彼は名乗りもせず、人間の姿のイグドラシルの腹を突き刺した。
彼はこう言い、選択肢をあげた。
「魔王軍に入るか、死ぬかを、選ばせてやろう」と。
イグドラシルは気づいた。
彼が魔王だということに。
もう遅かった。
すでに生死は魔王が決められる状態である。
だから選ぶしかなかった。
「魔王軍にはいりま…す」
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ここまでを、イグドラは話してくれた。
国民の前で。
「コレが事実であります。どうか信じてください」
国民の声は『これは、仕方がないのでは?』と言う声が多かった。
これで、戦わずに済みそうだ。
やっぱり、人生はそう上手くいかないもんだな。