1「転生」
俺は賢者だ。
かつて、魔王を封印し、称えられたんだが…今となって、街を歩いても、何も言われなくなった。
もうやり残したことはねぇ。
転生しよう。
この魔力すべて使う!
『ルクス・リインカーネ!!』
巨大な魔法陣が空一面に広がる。
「1500年後。この世界がどうなっているか楽しみだ。また会おうこの世界よ」
---1500年後---
【封魔歴1501年】
(封魔歴とは賢者が魔王を封印したときから始まった。)
『――――――――』
何だよ…
『―――――!!』
なんか言ってる。
うわ眩しい。
『―――!!』
うーん…俺はー思い出した。
前世で賢者だったんだっけ俺。
…俺?
俺今世、男だよね…?
…女だ。
俺の母親は美人だ。
しかも巨乳。
父親もまたイケメン。
今世最高。
喋れるか?
「あーうー」
まだ喋れないか。
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一年が過ぎた。
ここは『ルミナス王国』と言う場所だ。
いいとこだな。
そして俺…いや私か。
私の名前は『アリシア・フェルナリア』と言うらしい。
母は『クラリス・フェルナリア』
父は『レオニス・フェルナリア』だって。
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父の仕事は、騎士団長。
この国を守る兵だ。
この辺には強力な魔物がいっぱいいるのだそう。
それを倒すため週に一回、帰ってこない日がある。
心配だが、大丈夫だろう。
そのためフェルナリア家は貴族ということになる。
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四歳になった。
今日は母の昔からの友達との茶会らしく、私も同行。
その友達にも、私と同じ年齢の子供がいるらしい。
精神年齢は上だけど。
【友達の家に到着】
「来たわよ―!!」
相変わらず声がでかい母だ。
そしてドアが開いた。
「クラリス!待ってたわよ!」
「ミラーナ久しぶりね!」
「そちらがアリシアちゃん?」
「そうよ!アリシア、挨拶しなよ」
「はじめまして?アリシアと申します」
「よろしくね〜」
そう自己紹介をしていたらミラーナの後ろから二人の男女…いや兄妹か。
兄のほうが三歳年上かな。
そして妹の方は母に聞かされていた通り、私と同じ年齢。
その時兄のほうが自己紹介を始めた。
「はじめまして、アリシアさん。僕の名前はシリウス・クローデルと申します。お見知り置きを」
続けて、妹の方も。
「わ、私はミレーユ・クローデルと申します!」
「よろしくね!シリウスさん。ミレーユさん」
「僕の事は、シリウスでいい」
「わ、私の事も、ミレーユでいいよ!同い年なんだし!」
「わかりました」
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茶会が始まり、三十分。
私は、親たちの話を耳を澄まし聞いていた。
転生するまでの1500年の間に随分と世の中が変わったらしい。
まずは、ランクで、DからSランクまであり、五歳のときに教会で紋章を刻む、魔道具に手を入れて測定するらしい。
Sランクは稀。
Aランクは一万人に一人。
Bランクは1000人に一人。
Cランクは最も一般的。
Dは魔法が使えない。
こんな差別みたいなの前世にはなかったんだけどね。
そしてシリウスはSランクであり、次期国家騎士になる予定だと。
ミラーナはその事について不満があるようでこう言っていた。
『できればミレーユとアリシアちゃんはSランクになってほしくないわね』と。
そして母はこう返した『そうね、Sランクだと死ぬまで、国家騎士に在籍しないといけないものね』と。
どうやらSランクには自由がないのだろう。
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茶会が始まり一時間。
予測もできないことが起きた。
「魔物が出たぞ!!!」
「「「!?」」」
皆が振り返る。
窓に突っ込んでくる魔物…いや、龍?
でかい、とにかくでかい。
シリウスがすぐに剣を抜いた。
あの剣は見たことがある。
いや正確には、作ったが正解か。
…いや、そんなことより今は龍をどうするか。
シリウスの剣術を見とこう。
シリウスは真剣な表情をしている。
――そして、龍に向かって一振り。
だが、龍の甲羅が硬かったのか、剣が跳ね返され、手から離れ、地面に刺さる。
親たちは、瓦礫の下。
気を失っている。
ミレーユは泣いている。
――そしてシリウス。
彼の目は絶望の色に染まり、その場に座り込んだ。
あまりの怖さに、失禁まで。
そして私の方を向いた。
助けを求めている様に感じた。
そして龍の手で壁に叩きつけられた、シリウス。
もう私もやばいと感じた。
一か八か、魔法を使うか。
いや、魔力を口に溜める。
魔力密度を高め、魔力を可視化。
よし溜まってきた。
シリウスはこちらを見ている。
さっさと終わらせる。
よし溜まった!!
キュウィーンと言う音が部屋中に響く。
そして放つ。
ドカァン!!
私の口から青色の、棒状の光が、龍めがけ放たれた。
その光は、雲を突き抜け、少し曇っていた、空が青空に変わる。
そして龍を見ると、跡形もない。
何も、骨、血、甲羅すらも、何も残ってはいない。
シリウスは微笑んだのかは知らんが、笑ったまま気を失った。
そして私も。
魔力を急に使いすぎたのだな。
意識が遠くなる…
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目が覚めた。
視界が戻り、見ると、そこは見慣れた天井だった。
自分の家か、と思った。
母から聞かされた話によると、龍が謎の光に貫かれ、消滅したと言う。
コレはシリウスがやったことになっている。
そして、多分だが、真実を知っているのはシリウスだけだと思う。