おしまい
草原と青空のあいだに一本の線路が敷いてあった。
殺し屋は紐を手にすると、信号柱の腕木をいかり肩の形にあげた。
〈代償号〉がやってきたら、司令官に〈女司教〉の首を渡して、報酬をもらって終わりだ。
殺し屋は機関銃馬車を振り返った。
弾丸で穴だらけになり、手榴弾で馭者席の隣はきれいにえぐれている。機関銃と三頭の馬が無事だったのは奇跡だ。
馭者席には少女が座っていた。
「その馬車と機関銃はきみにあげるよ。ぼくには必要ないから」
そう言いながら、〈女司教〉の首が入った帽子用の箱を足で軽く蹴飛ばした。
「それに三二口径もあげるよ。誰か親切な人から手入れの方法を勉強してね。いざってときに弾が出ないと困るからね」
こくん、と少女はうなずいた。
「じゃあね。黒の司令官に見つかったら、ピザカッターで真っ二つにされるから、ここにはいないほうがいい」
ちっち、とシムツのように舌を鳴らすと、草を食べていた馬たちが頭を上げ、仕方ないといった様子で走り出し、機関銃馬車は線路を越えて、そのはるか向こうまで続く道を走っていった。
少女はふりかえって、手を振ってきたので、馬車が小さな粒みたいになるまで、殺し屋は結局、名前も知らなかった少女のことを目で追っていかなければいけなかった。
「そもそも、女の子だったのかも怪しい」
と、いうのも、殺し屋の予備の服を着ると、少女はショートヘアの少女か、長髪の少年に見えたからだ。