コスモス畑でつかまえて
桜の樹の下には死体が埋まっている。らしい。じゃあ秋桜の下には?
秋桜の下には私の死体が埋まっている。
あれはまだ肌寒い季節の夜中。空には刃のような月が昇っていた。昔はああいう形の月を三日月というのだと思っていた。
「愛してる」
私もよ。愛しいあなた。どうして?いいえ、分かっているわ。あの月に手が届くなら、私にもあなたを殺すことができたかしら?とても、とても綺麗な月だわ。あなたも、そう思うでしょ?
「チョコレートコスモスって言うんだ」
閉じることのない瞳に映るのは細い月。あなたの顔は映らない。声は聞こえるのに。
そっと優しく触れる手が瞼を閉ざす。
「おやすみ」
優しい口づけ。
ねえ、知っている?女は愛でも鬼になれるのよ。この秋桜が咲いたら、きっとあなたに会いに行くわ。愛してる、愛してる。
アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル
ア・イ・シ・テ・ル
仕方なかったんだ。彼女は親の決めた縁談を断れるような女性ではなかったから。
これで彼女は永遠に私だけのもの。誰にも渡さない。愛してる。
アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル
ア・イ・シ・テ・ル
ねえ、捕まったのは彼女?私?鬼は彼女?私?