決めていたこと
「まったく」
それと同時に、急激に思考が冷静さを取り戻していく。紅の日常に戻ったからこそ。
そうして改めて、紅は思った。どう考えても蒼と麒淵がここに現れた状況は異常だ、と。
(二人は溜まりから出てきた。溜まりの中から現れた)
この世界の常識的にあり得ない。
クコ皇国の首都にある全ての溜まりが龍脈で繋がっているとはいえ、溜まりごとに境界――言うなれば、守霊の縄張りのようなものがある。
「お前はどうしていつも無茶ばかりするんだよ。いつも、人のことばっかりだ」
紅は思い切り蒼を抱きしめる。紅にとっては大きな存在である蒼だが、実際は五つも下の妹だ。驚くほど、すっぽりと紅の腕におさまった蒼。
最初こそ、
「紅が言うなっ!」
と暴れた蒼だったが、紅が遠慮がちに何度も背を撫でるうち、徐々に大人しくなっていった。
「しんぱい、した。いっぱい、しんぱいしたっ」
蒼は、ついに涙声で一言を絞り出した。
いつも紅をからかって強がるくせに、実はすごく甘えたな妹。その蒼が、滅多にない兄の強引な触れ方に骨が折れるくらい抱きしめ返さずにいる。愛情には愛情を返す、蒼がだ。
「こんな、青あざだらけ、でっ」
ただ控えめに腰元を掴んだできた仕草に、紅の胸は悲鳴をあげるほどに痛んだ。
「うん、ごめん」
紅の謝罪に、蒼はぶんぶんを大きく頭を振る。
「――っ。ちがくて。いきててくれて、よかったって、言いたかったのにっ。わたしっ」
「オレがだめな時は、いつも蒼が迎えに来てくれるよな。ほんと世界一頼りになる妹だよ」
そっと頭を撫でると、蒼は音を立てて顔をあげた。
紅は眼前で涙を堪えて震える蒼に、ぷはっと噴き出してしまう。泣き出す寸前なのに、自分とお揃いの牡丹色の瞳が自慢げに『そう思ってるなら、ここでは許しておいてあげる』と言っているように見えたから。
(まったく、弱いんだか、強いんだか。いや、弱い時でもオレを強くしてくれるのが蒼だな)
紅はそんな蒼の頬を撫でる。指にぴりっとした電気が走った。明らかにアゥマの気配を感じたが、拒絶のような感覚に驚いてしまう。人を受け入れないアゥマだと直感的に思った。
蒼はそんな中を進んできた。
(いつだって、オレはこの弱くて強い妹がいたから前に進んでこられた)
自分が愛以外の関係から生まれた存在だと知った時、ずっと傍にいる妹だと思っていた蒼が遠くに修行に行ってしまった時。それに……両親が亡くなった後。
紅にとって、蒼は守る存在であり、自分を一歩進ませてくれる存在だ。
(今になって、ようやくわかったよ。オレは実父のように、歪んだ想いで大事な人を傷つけたりするもんか。萌黄さんを理解しても――自分が歪んでいるなんて思わない。このあったかい気持ちがある限り、絶対にオレは道を踏み外さずにいられる)
紅は蒼の両頬を包み、額を合わせる。思いの外、大きな音を立てた額はひりっと痛んだ。
しっかりと目を開いた先にいるのは、相変わらず涙目で必死に口を結んでいる蒼だった。
「紅よ。再会に喜んでいるところすまぬが、ひとまず戻ってこい」
「麒淵。来てくれてありがとう。ただ、全部終わった後、蒼に無茶をさせた言い訳は聞かせてもらうからな? あと、その体の大きさのことも」
紅は蒼の頭を撫でながら麒淵に向き直った。紅は笑みを浮かべたはずなのに、麒淵は怯えて顔を引きつらせてしまった。
「うっうむ。ただ、なんとまぁ」
麒淵が気まずそうに首筋をかく。
紅からしたら。てっきり、蒼に無茶をさせたことを反省していると思ったのだが。
「あぁ、なんと。紅まで白のような笑みを浮かべるようになってしまったとは」
「……オレは嬉しさ半分、複雑さ半分だけど、麒淵にはご愁傷様というしかないかも」
紅は照れくさそうに笑った。紅の尊敬する人に似ていると言われて悪い気はしない。
紅が肩を竦め、蒼が目尻を拭ったところで洞窟中に奇声が鳴り響いた。
「どうやら、のんびり話せるのはここまでみたいだなっ!」
三人して風を切る勢いで振り返る。
「あぁぁっぁぁ!」
萌黄は、岩肌に両膝をついたまま頭を抱えて仰け反っている。口の端からは泡を吹き、瞳孔を開いているように見える。肩掛けだけが、穏やかな調子でふわりと地面に落ちた。
「あぁぁぁ、わたくしは――わたくしは萌黄! そう、萌黄として生まれ変わった! あの人の妻で、あの人の娘で! なのに、どうして、紅さんを恋しく思っているの? 違う、紅さんじゃない、貴方は――」
一部状況を理解している紅さえも、萌黄の惨烈な有様に唾を飲み込んでいた。
一方、何も知らないはずの蒼はしっかりと紅の前に立ち塞がった。
(とっても、意味不明な状況だけど。萌黄さんの中に紅がいて、それが萌黄さんをおかしくしている一因なら、紅が標的になる可能性は大きい。なら、守らないと)
大きく腕を広げた蒼をおさえ、紅は前に出ようとする。けれど、蒼は蒼で、決して立ち位置を譲ろうとしない。
地味な攻防を繰り広げる兄妹に優しい苦笑を向け、麒淵は萌黄に歩み寄っていく。そして彼女の前で膝を折った。麒淵は自分を見ようとしない萌黄にそっと掌を翳す。
「大丈夫じゃ。我はおぬしの魂を、あるべき所に帰したいのだ」
「麒淵?」
含まれる色は違っても、紅と蒼は同時に問いかけていた。
麒淵は反応を返さない萌黄に構わず、彼女に掌を翳した。あたたかい光を伴い、魔道陣が現れた。紅も蒼も見たことがない文字が形作る魔道陣。
「もう萌黄の振りをするのは、やめような? おぬしとて、もう限界だとわかっているのだろう。完全なる乗り移りならともかく、綻びを見せた姿はもはやだれも喜ばせられぬ」
麒淵の問いかけに、萌黄の咆哮がぴたりと止まった。
「だれも、喜ばないの? あの人は、もう、わたくしを求めてはくれないの?」
萌黄の真っ白な肌に涙が零れた。ほとりと零れた雫は、ほろほろと肌を滑り落ちていく。
紅の背に庇われた蒼は、痛みを訴えてくる胸を掴んだ。
(いまの萌黄さんの様子は、必要とされていないと悩んでいた自分に似てる)
けれど、単純に丹茶が浄練できない茶師としての苦しみとは、少し違う。
(そうだ。昔、紅に妹じゃないって拒否された時や、紺君が華憐堂で丹茶を買っていた時の痛みと一緒だ)
蒼はかつての痛みに萌黄を重ねてしまっているのだ。
狂気に乱れる萌黄を理解できるるとも、止められるとも思ってはいない。けれど、彼女から零れ落ち始めた思いには触れたいし、近づきたいと思ってはしまう自分がいる。
「萌黄さ――」
蒼は紅を押しのけて萌黄に駆け寄りかける。それを制したのは麒淵だった。
音を立てて見上げた蒼と麒淵はしっかりと目をあわせ、小さく頭を振った。
「この暗さで話をするのは、互いがはっきり見えず少々差し支えがあるのう」
麒淵が片手を掲げて光の玉を複数生み出すと、見渡せる場所あたりまでは見通しがよくなった。
「暖色系の明かりだから、やっぱりどこか薄暗さは残るね」
「あぁ。けれど、あまりに煌々としていても、華憐堂のだれかに見つかる可能性があるし、これが限界だろうな」
とはいえ。蒼と紅は、頭上の灯に若干の違和感を抱いた。ただの灯にしては少々魔道が濃い気がする。
「もう、終わりにしような? 悲しみの連鎖を断ち切ろう」
頭上を訝しげに見上げる兄妹をよそに、麒淵は脱力しきった萌黄と再び目線をあわせた。大きな手が萌黄の額に向けられる。
萌黄は顔を上げないまま、びくりと体を震わせた。しかし、麒淵の手が必要以上は近づいてこないことに安堵したのか、すぐに肩から力を抜いていく。
「萌黄を想っている術者も、すでに萌黄が蘇ったように見える行為に純粋な喜びは感じているとは思いづらい。もしかしたら、次はいつ失うのかと恐怖を抱いておるやもしれぬな」
「わっわたくしが――わたくしたちが、あの人を苦しめているの?」
萌黄は絶望の眼で震える両手を見つめる。いつもの可憐で儚い雰囲気ではない。見開かれた目も大きく開いてひきつっている口も醜ささえある。それでも、先ほどまでの狂気は消失している。
だだっぴろい岩の空間に沈黙が訪れる。溜まりの水がぴちゃんと跳ねるだけ。
✿✿✿
「傍にあるという安堵を抱いておるのは、確かじゃろう」
ややあって、麒淵は頷いた。全てを否定するのではなく、確かにある想いは認めて。
人間ではない麒淵でも、それは確かだと想像ができる。だからこそ、過ちは繰り返されているのだ。
「だがな、我と同じ存在である溜まりの子よ」
麒淵はまるで幼子を諭すように、優しく柔らかい口調で語りかけた。
一方、あんぐりと口を開いて固まったのは蒼だ。驚きのあまり声も出せず、大きな牡丹色の目をひんむいた。
「えっ? えー? ええぇぇ⁉」
なんかと動かした手で紅の服を掴む。目を合わせた紅も驚いているものの、蒼ほど驚愕という色は薄い。
いや、実のところ紅も内心激しく動揺しているのだが、彼は蒼よりも動揺を隠すのが上手い。
「まさか、自分の予想に対して、こんな形の答えがくるなんて」
紅は魔道府に呼ばれた際、古書で反魂の術の存在を知った。そこで、紅は古書の中の人物がかけられた反魂の術に引っかかりを覚えた。
――えーと、ですね。まず、本当に生き返ったのであれば、食物を口にしないのは可笑しいかなと、単純に思ったんです。それに、生き返った時点で記憶をなくしているのであれば、まだ納得できそうですが、若い男性が徐々に、しかも戻ったり忘れたりしながら記憶をなくすなんて聞いたことありません。それどころか、そもそも男性自身が『生き返ったのでもなく、死人として、この世にあるのだ』と言っているわけですし、生き返ったという概念自体が真実からずれているのかも知れないって思って――
そして、魔道府長官に話した際、長官から言われたのだ。着眼点は悪くない、と。
ということは、つまり。
「そうか。『生き返ったのでもなく、死人として、この世にある』っていうのは、そういう意味だったのか!」
「えっ、なになに⁉ 紅ってば、一人で納得しないでよ!」
突然納得しだした紅の腕を激しく叩く蒼。
それが合図になったように、紅は強い調子で蒼の両肩を掴んできた。振り返りざまに汗が飛んだ。
「つまり人間だった萌黄さん自身が生き返った訳じゃなかったんだ!」
「って、人間じゃない萌黄さんがいるの? ううん、そっか、そういう意味か。守霊って」
反魂の術そのものは把握せずとも、即座に現状だけを切り取って理解した蒼。状況が飲み込めない蒼だったけれど、わかっていることが二つあった。
兄は自分が知らない事実を把握していることと、萌黄が人ならざる存在であることが本当であるという現実だ。
「そう。反魂の術で、死人の体、ソノ器の中に守霊っていう魂が入り込んだだけだったんだ。守霊は人とは違うから、食事で栄養を摂取せずとも平気だったのか。けれど、それなら一体何を栄養にしているのか……」
最後の方は、すでに独り言に近かった。
「人間にはいつか終わりがくる」
麒淵の声は淡々としているのに、どうしてか蒼の胸の深い部分に染みわたった。
それは紅も同じだったようで、思考の海に沈みかけていた顔があがった。
「人間の始まった生は終わるものだ。溜まりがあれば存在し続けられる我ら守霊とは異なる。おぬしの大切な術者は、その永遠とも呼べるおぬしたちが傍におるから、迎えるべき終着点を見失っておるのではないか?」
蒼が萌黄に溜まりの水をかけ、大やけどを負わせた日のこと。支離滅裂な萌黄を前にしても、華憐堂の店主は冷静だった。
ということは、おそらく萌黄の変貌は今回に限ったことではないのだろう。つまり、店主が手慣れていることを意味する。
「魔道府長官の調べによると、アゥマの枯渇で滅んだ小国は数百年の間でいくつもあった。そのうちいくつかは自然現象であったが、華憐堂の足跡の中でそれ以外の方法で滅びた国の方が圧倒的に多いことがわかった。そう、人工溜まりが消失したのと同じ滅び方をしておったそうじゃ」
「えっ! 麒淵は人工溜まりのこと知っているの⁉ っていうか、人工溜まりと萌黄さんたちが関係してるってこと⁉ あっ、でもさ、なら此処の不自然さも説明がつくかも。いくら黒曜堂さんの跡地で浄化がすごいとはいえ、浄化されてただけで溜まりが湧いてくるとは考えにくいもんね」
ぽんと手を打った蒼に、今度は紅が驚く番だった。
「はぁぁ⁉」
紅らしからぬ声が喉の奥から飛び出た。
「人工溜まりってなんだよ!」
「文字のまんまだよ。古代には、人の手によって作られた溜まりがあったらしいよ? すぐに滅んじゃったみたいだけど。っていうか、私は紅に説明して欲しいよ。反魂の術ってなにさ」
「お前、なんで急にそんなに落ち着いているんだよぉ……」
紅は頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。幼い頃からここぞという時になると変な落ち着きを見せる妹だったが、まさかここまでとはと。
麒淵は、後方でぎゃいぎゃいとやり取りしている兄妹に、こほんと軽く咳払いをした。
(まったく、たちが悪い。蒼と紅の能力が必要だったとはいえ、兄妹の知っていることをあわせて初めて答えが出るような情報の与え方をしよってからに)
麒淵は震える萌黄を撫でながら、心内で舌打ちをした。
魔道府や皇族のやり方はいつの時代も狡猾だ。今回は白龍が一枚どころか何枚も噛んでいるから、麒淵も黙って従っているが、正直不快さ極まる状況だ。
「二人とも落ち着け。事の始まりの時点から、魔道府はアゥマの枯渇により滅んだ国を徹底的に調べ続けていたのだよ。その結果を踏まえて、フーシオである白龍と黒龍は始まりと結論づけられた地に赴いている」
麒淵の言葉に、蒼と紅はぴたりと黙った。
魔道府とフーシオの名を出されては文句も引っ込んでしまうというものだ。
物わかりの良すぎる子ども二人を前に、麒淵はもやっとした想いを飲み込む。
「教えておくれ。おぬしも苦しかったろう」
麒淵は気を取り直して、萌黄に問いかけた。指先だけ頬に触れさせると、それまで俯いていた顔が跳ね上がった。
あげられた顔を両手で包み、萌黄はがちがちと歯を鳴らす。
「何度も、何度も……わたくしの中に仲間が入ってきて、想いを共有して、表に出るのを交代して……」
「あぁ。だから、最初に入ったおぬしが持つ『萌黄』の記憶も薄まっていき、制御が聞かなくなると混乱し正気を失った。術者との本来の関係も忘れ、紅暁を慕っている錯覚に陥っていた。違うかのう」
「はい。いえ、いいえ。わたくしが……記憶や正気を失っているですって? 最初に入ったって?」
一瞬だけ肯定した萌黄だったが、すぐに首を傾げた。本気で戸惑っている。数秒前の自分の言葉を忘れているようだ。
けれど、無表情でもなければ狂気の笑顔も浮かんではいない。眉をひそめて、ただただ純粋に疑問を抱いているように見える。
「紅暁、こちらへ」
「あっ、あぁ」
麒淵に本名を呼ばれた紅は、動揺しながらも蒼の手首を掴んで歩きだす。
先ほどまでは二人とも気にとめる余裕がなかったのだが、冷静になると非常に歩きにくい地面をしている。岩肌が整えられていないのか、やたらとおうとつが多くて歩きにくい。
その最中、横に並んだ蒼は紅に顔を寄せてささやく。
「敵陣で真名の一部を呼ぶってことは、私たちと守霊との繋がりを強めておきたいのかもね」
「そうだな。あるいは、萌黄さんにオレを『くれない』だって認識させないためかもな。今の状況で萌黄さんの記憶が混濁したらやっかいだ」
「そっか。また萌黄さんが紅を術者だって混乱しちゃうかもだしね。っていうか、萌黄さんが守霊って、本当かな? もちろん、麒淵の言うことだから信じてるのは、信じてるんだけど」
内緒話を交わしながら近づいてくる兄妹に、麒淵は
「はよこい」
と手招きする。
麒淵は二人が小走りになったのを見届けると、再び萌黄に向き直った。
「術者も苦しんでおるじゃろう。けれど、救われた記憶があるから、やめられぬ。もしかしたら、おぬしを見放す罪悪感もあるやもしれぬな。大切な人を失う痛みを知っているゆえ」
大切な、という単語に反応したのか。萌黄は唇を震わせた。
「だからこそ、新たなる犠牲者を作りだそうとしておる。けれど、それはすなわち第二の術者を生み出すことになる。束の間の幸福は、やがて周囲さえ飲み込む悲しみの鎖となるのを、我らは止めたいのだ」
麒淵の声は厳しくも、優しい。そっけないようで、寄り添う。
蒼も紅も同じ気持ちだった。見知らぬ存在ならまだしも、二人は萌黄という人物を知ってしまっている。蒼と紅、それに麒淵では程度も優先する順位も異なるが、目的という意味では同じだ。
「我らはおぬしという存在をなかったモノにしたいのでも、おぬしらの想いを否定したいわけでもない。表に出せずとも、ここにいる我らだけは覚えているよ」
「ほんとう、に?」
「あぁ。事実を大腕を振って認めるのは難しいが、せめて大切な人への想いは否定したくないのだ」
「ずっと……」
萌黄が枯れた声を搾り出した。いや、幾重にも音が重なっていたので、彼女たちだろう。
「ずっと、良いよって、言って、欲しかった」
萌黄の緑に近い勿忘草色の瞳が、まっすぐに麒淵をとらえる。
「萌黄もわたしたちも、あの子も、最初はちゃんと決めていたの。たった一言、彼に……」
「うむ。そうか。おぬしたちは、きちんと決めていたのだな」
麒淵は萌黄の言葉を繰り返す。ただ、彼女の声が自身を責めるように吐き捨てたのとは異なり、麒淵は愛しさを込めてゆっくりと紡いだ。
萌黄は呆けて虚空に視線を映した。何度も唇を「決めていた」と動かし続けた。




