第四話 SIDE:貴顕の三日月
「あいつを追放出来てせいせいしたな。 これでやっとまともに戦闘に集中出来る」
ケインのその言葉にナディアが頷き、続く。
「全くのその通りよ。 ライカとか言う新しいポーターは戦闘も出来るのでしょ? これでSランクも夢じゃないわ!」
「あぁ! 俺達は王国の最強に近いからな。 勇者パーティの称号を貰えるのも近いんじゃないか?」
【貴顕の三日月】のメンバーはレイドの目まぐるしい活躍を一ミリも知らないのだ。 その為、新メンバー加入に浮かれきっている。
「そうだ、この子が新しいポーターで短剣使いのライカだ。 索敵魔法も使えるとのことだ」
「索敵魔法が使えるのなら私やナディアの魔力を温存出来ますわね」
索敵魔法は簡単な割に慣れていないと集中力、魔力共に削られてしまうのだ。
それが無くなるだけでパーティとしてはかなり大きい。
「初めまして。 ライカです。 亜空間魔法に収納出来る量は平均より一.五倍ほどです」
「「「「一.五倍!?」」」」
「ますますレイドを追放して正解だったな」
「あいつ平均くらいは収納出来るとか言っていたし、かなり能力差が出るわね」
そんな会話をしながらミオラをパーティホームへと案内する。
「ここが俺達のパーティホームだ。 明日からにはなるが階段を上がって一番奥の部屋を自由に使っていい」
「わかりました。 今日は宿に戻って荷造りをしてきます」
「あぁ、一度で場所は覚えられたか?」
「はい、そういう雑務は得意なのでお任せください」
一同は頼りになるな、と感心する。
そして夜も更けてきたので皆、各々部屋に戻り休むこととなった。
夜が明け、朝を迎える。
皆ばらばらだが起きてきて談笑する。
そして、レイドを追放したことを思い出し、皆で庭を確認することにした。
「何ですかこれは…」
アリアが声を振り絞る。
それもそのはずだ。 貴族の屋敷ほどではないがかなり大きい家なのだ。 その分庭も大きい。
その庭いっぱいに素材の山が出来ていた。
「何よこれ、売ったら大金じゃないの」
ナディアは我に返ったのかそんなことを口にする。
「そんなことよりも、レイドがどこにこんな物を持っていたのかが問題だよ、見てよ。 ドラゴンの素材やヒュドラの素材まである。 僕たちに討伐した経験はない」
普段は無口なアレクがそう口にする。
確かにそうなのだ。 亜空間魔法による収納はここまでの量には普通はならないのだ。
出所が不安になるのも当然である。
「盗んだものだろうが、買った物だろうがあいつが置いていったんだから好きにしてしまって構わないだろう。 しばらくは金にも困らなくなるしな」
「あぁ、そうだね」
「そうね」
「ですわね」
一斉に納得する。
皆一様に目先の事しか考えておらず、レイドがソロで任務をこなしていたと誰も思っていなかったのだ。
そして彼らは後にレイドがどの様なことをしていたのか知ることとなる。
だが、それはまだ後のお話である。
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